キャバのバイトが終わったあとは、キヨくんと駄弁るのが習慣だ。あと毎回煙草買ってくれる。
今日も、くだらない話をしていたはずなのに、気付いたらキスされていた。
彼氏が出来たと言ったはずなのに。
そんな事になっても何故か私は冷静で、慌てるでもなく怒るでもなくキヨくんの目を見つめている。
「なに、どーしたの?」
「クソな彼氏なんか別れろよ。俺は煙草吸っててもやめろなんて言わねーから」
キヨくんには煙草やめろって言われたこととかも全部話している。
あと和成の女関係とかも。実年齢も。
だから心配してくれてるんだろーななんてのんきに考えていると、またキスされた。
「彼氏のこと好きだし、別れないよ」
「その彼氏より俺の方が名前ちゃんのこと好き」
あれ、もしかしてモテ期きた?なんて思ったけど和成は私のことちゃんと好きかわかんないし、キヨくんだけじゃん。モテ期って言えないわ。キヨくんもホストだしなー。ホストって色恋営業かけんでしょ、キャバのオネーサンに色々聞いてるから知ってる。
「私はキヨくんのことオニーチャンみたいに思ってるよ」
そういう意味で大好き。私がそういうとキヨくんは複雑そうな表情を浮かべた。
***
ケーキ屋のバイトが終わり、親友宅に帰ると、親友が土下座してきた。
「ウチの好きな人、ほらオニーサンの話したやん?その人とその友達が今度来て飲むことになってるから名前も一緒にお願い!この通り!」
「は、待って和成知ったら不機嫌になりそうなんだけど」
「先輩にバレたらウチが全力で庇うから!住まわせてやってんだろ!頼むから!」
「ちょ、それ持ち出されたら断れないじゃん」
「煙草も二箱献上する」
「乗った」
「安いなオイ」
いや、煙草に釣られたわけじゃないよ。大事な親友の力になってあげたいじゃん。
私はなんでこの選択をしてしまったのか。和成もいるし何がなんでも断っておくべきだったんだろう。後悔先に立たずってこういうことを言うんだろうか。