どちらかが愛を叫ばないと出られない部屋
「好き、ホップ、好き…」
ちゅ、ちゅ、と頬、鼻に唇を落とされるのを、ホップは歯を食いしばって耐えていた。
少し前にお付き合いを始めたこの少年はホップにまでは及ばないけれど、いつも溌剌としている。声も大きくて、ワイルドエリアでキテルグマと遭遇したときはハイパーボイスかと思うくらいの大声で絶叫して、レベルの高いはずのキテルグマ怯んだ(引いたともいう)隙に逃げ出すというポケモンじみた行動で凌いだりもした。
だというのに、今はどうだろうか。内緒話のように囁かれる好きの言葉、間を埋めるように落とされるキス。
告白の時ですら「付き合ってください!!」「いいぞ!!」とお互いにセルフ公開告白になるほどの声量だったはずなのに。
ちゅ、と唇が喉に下がる。
「っあ」
変な声が出てしまった。溢れてしまったのはもうどうしょうもないけれど、思わず手で口を塞いだ。
その上から更にちゅ、と音を立ててキスをされる。
「も、もう、なんなんだ…?」
いつもの調子はどうした、そう尋ねたホップに、恋人である少年はカラコンの奥から見つめ返してきた。
「せっかくの機会だから、たくさん愛を伝えようと思って」
頬が赤い。彼も彼なりに照れているらしい。
「は、ずかしいぞ」
「うん、俺も、叫んじゃいそう」
へにゃ、と少年が情けなく笑う。ホップも思わずつられて笑ってしまった。通常運転で愛を叫んでしまえばすぐに出られるけれど、折角の機会だ。お互いにゆっくり気持ちを伝えあうとしよう。
ちら、とホップが恋人の肩越しに扉を見遣る。うん、大丈夫。鍵はまだ閉まっているので、今ここは二人だけの世界だ。
ホップ夢は『どちらかが愛を叫ばないと出られない部屋』に入ってしまいました。
20分以内に実行してください。
#shindanmaker
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