世界崩壊のきっかけ




一卵性だったら、顔や容姿だけじゃなくて趣味まで似てしまうのか?そもそも、こんなにキャラが独立してるってのに、どうして好きな女の子はこうも被ってしまうのかなぁ。なんてそんな風に思いながら、目の前にいるなまえちゃんに視線を向けた。

「なまえちゃん」
「………」
「なまえちゃん、いい子だから今どういう状況か分かるよね?」

いい子だもんね。
いい子、を強調してそれから優しく髪の毛を撫でてあげればなまえちゃんの表情は、強張ったものから少し緩んだものに変わる。
でも、僕は残念ながらいい子じゃないんだよなぁ。ほっ、とした表情のなまえちゃんににっこり、と口角をあげて一言。

「まぁ、でも。なまえちゃんことを、いい子だと思っているのは僕だけだけどね」

そう言ってあげれば、やっぱりなまえちゃんの表情は再び暗いものに変わった。
つらつらと僕の兄弟の名前を続けていえば、更に表情は曇ったものになる。あーあ、面白いなぁ。なまえちゃんってば、どうしようもない子だから、僕がこうやって一緒に居てあげないと駄目だもんな。

本当にこれだけは許したくないことだから、何度も言うけれど一卵性だからって容姿だけじゃなくて女の子の趣味まで似ているってのが最高に気に食わない。自称常識人、なんて言ってるけどあくまで松野家の六つ子の中の常識人であるだけで、世の中の、世間一般に感覚がそぐっているかと聞かれればそれはそうでない気がする。
常識人なんて、あんなキャラの濃い兄弟の中に混ぜられてしまえば、無個性というか何も残らないだろう。好きな女の子の記憶に残りたい僕は、どうしても、どうしても、彼女の気を引く必要が、それから、他の兄弟の好意を彼女からそらす必要があった。

色々手こずったし、今も完全に兄弟達から彼女を奪えたとは思っていない。特に僕の兄なんかはなんだかんだで目ざといから、僕の考えていることに気づいてそれを阻止してくるかもしれない。
あーあ、面倒くさいなぁ。まぁでも、こんな女の子好きになった僕も僕なんだけどね。

「なまえちゃんは、おそ松兄さん、カラ松、一松、十四松、トド松から見れば最悪で、どうしようもなく悪い女の子だもんね」
「チョロ松くん、それ…違うの、そうじゃなくて……」
「僕はちゃーーーーーんっとわかってるよ。なまえちゃんはそんな子じゃないって。でも、きっと僕だけだよ、なまえちゃんのことをこうやって肯定してくれるの」

少し俯きがちで、長くて綺麗に手入れされた髪の毛が彼女の顔を隠した。右耳らへんの髪の毛を一房ほど掬って、それからもう片方の手で彼女の顎を掴みあげる。今にも泣いてしまいそうななまえちゃんの表情は扇情的で、ぞくぞくと背中に快感が走った。
もっともっと傷口をえぐって、どろどろのぐちゃぐちゃな表情にさせたい、もうチョロ松くんしかいないって言わせて、僕だけを求めるようになればいいのに。
にっこり、深く笑顔を刻んでなまえちゃんの唇に自分のを押し付けた、ちゅ、ちゅ。とわざと音がなるようにして触れるだけのキスをしてから、べろりと唇を舐めて、それから舌を彼女の口に侵入させる。舌を絡めて、歯列をなぞって、上顎をねっとりと舐めあげれば、気持ちがいいのかなまえちゃんは、ぴくりと肩を震わせた。
ほんとこんな女。
なまえちゃんは、僕が絡める舌に合わせるようにして自身のを擦りつけてくるけれども、下手くそなことこの上ない。しかも、そういうのを今まで経験したことがないのか、僕が流し込んだ唾液が口の端からこぼれていた。
それをすくってから、一度唇を離す。息が荒いなまえちゃんに対して、僕はまだまだ物足りない気がしたけど、なんせ僕だけだから。なまえちゃんのことを分かっているのは。

「なまえちゃん、随分物欲しそうな表情してるけど。……もっと欲しいの?」

答えは聞かない。何か言おうとしたけど僕は睨みをきかせて、ブラウスのボタンに手をかけた。

「こんなダメダメな女、僕だけだからね。好きっていうのは」
「……うん」
「ほっんと、僕の優しさに感謝してね」

ね。だから、ちゃんと言って。チョロ松くんしかいないって。
肌蹴た洋服から見える彼女の柔く白い肌には綺麗な鬱血痕が見える。僕はそれをぐりぐりと人差し指で押しつぶした。

「チョロ松くん、見捨てないでって。なまえちゃんはいい子だから、ちゃんと言えるよね」
「……っ、チョロ松くんしか、いないの。だから、…見捨てないで……」
「ん。おいで」

皆には悪いけど、僕は彼女を譲る気なんてさらさらない。
毎日毎日、なまえちゃんには僕しかいないんだよ、って言ってなまえちゃんはダメダメな人間だよと暗示をかけ続ければ、たとえそれが初めは嘘であったとしても、きっと100回くらい繰り返せば、本当のことになるだろう。
人の気持ちなんて、常に不安定だし、ころっと変わっちゃうからきっと。僕のせいでこうやって兄弟から、距離を置かれている彼女ならば尚更。

すっぽりと僕の腕の中に収まる彼女は小さく震えていた。あぁ、可哀想な女の子だ。
大丈夫だよって、何度も何度も言って優しく背中を撫でてあげる。
もっと、堕ちてくればいいなぁ。
僕は性行為を始めようと肌蹴たなまえちゃんの柔い乳房に手をかける。



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