愛、愛するとは | ナノ

▼ 何もまちがっゃいない
合コンって、あまりもの同士で組み合わされて気まずい雰囲気になるのも嫌だけど、だからって、カラオケとかで「このまま二人でフケちゃおーぜ!」なんて言われても、身体目的なのかなって思うからそれも嫌だ。
人数が足りないからどうしても参加してほしい、と友人に頼まれてあまり乗り気でなかった今回の合コンは私の思っていたものとは全く違っていた。素敵な男性と出会ったのだ。職も大手企業で、趣味は読書と映画鑑賞とスポーツ。夏はサーフィンで冬はスケボーだそうだ、子供が好きらしく、それから喋りも上手い。そしてなんといっても、ビジュアルが頗るよかったのだ。初めて会って自己紹介をするあの時の爽やかな笑みで友人は皆ノックアウトされていて、私も「かっこいいな」なんてアイドルをみる感覚で眺めていた。
私は人数合わせだし、彼氏は暫くいいかななんて思っていたから、だからそうやってそのイケメンが私に話しかけてくれて、連絡先まで聞いてきてくれた時は、嬉しいとかそういう感情以前に驚いて仕方がなかった。
私みたいなどこにでもいるような女にこんなイケメンが興味を持つなんて!
悪い冗談だと思って初めはやんわりと断っていたものの、あまりにもしつこく聞いてくるのでしぶしぶ交換をした。いまだにそれはにわかに信じがたいことだと思っている。

選んでくれたお店のお料理もお酒も美味しくて、ほろ酔いのままタクシーに乗って帰宅をする。ふわふわした感覚で何度か足が縺れかけたけれども、大丈夫。私はまだ酔ってない。
あのイケメンと関係をもてたことが嬉しいのか、料理がおいしかったか、もしくは、全てか。どれでもよかったのだが今の私は機嫌がいい。自然と漏れる鼻歌で更に気分を良くしながら、家へと帰った。
只今の時間、おそらく日付は変わっていると思う。


遅い、いつまでたっても帰ってこない。何やってんだ、どれだけ俺を心配させれば気が済むのか。いや、もしかしたら俺をこうやって心配させて更に虜にしようだなんて考えているのかもしれない。ならば、とんでもないな。俺はこんなにも、なまえに夢中なのに。
時計を見れば、日付はとっくに変わっていた。金曜日で今日が休みだからって、女性が一人こんな時間までどこにほっつき歩いているんだ、遅くなるなら連絡してくれって何度も言っているはずなのに。
彼女のことが心配で、何度連絡しても連絡がどれない。もしかしたら、嫌なことが頭をよぎっていら立ちが隠せなかった。
そろそろ、外に探しにいったほうがいいか。そう思った時に、楽しそうな声と共になまえが帰ってきた。
慌てて玄関へ向かうと、そこでぐたりと座っていてへらへらと一人楽しそうに笑っている。

「なまえ、どこに行ってたんだ」
「合コン〜〜、お酒美味しいんだよ〜、お料理もおいしかった!」
「……そうか」
「でね、それでね、知り合った男性と連絡先を……えっ、あ、なんで」

俺の心配とは裏腹に随分楽しんできたようだ、おまけに合コン!大層なご身分だな。

「なまえ、前に約束したよな。覚えてないわけないだろう?」
「……なんで、あれ……カラ松くん、」
「なまえはいつもそうやって、約束を守ってくれない」

楽しそうな彼女の表情は一変して、みるみるうちに青ざめていくのがわかった。
はぁ、このやり取りははたして何度目か。初めは極力我慢をするようにはしていたけれども、今回は帰りが遅くなって、連絡がないの他に、男と一緒に居ただなんてこれは、どう考えたって許せる問題じゃない。
座り込んでいる彼女の手首を引っ張って無理矢理、引きずってベランダへと向かった。混乱している彼女は、痛い、と小さく呟くけれどもそんなことかまっていられない。
からから、とベランダの扉を開けて彼女をそこへほりなげる。ぺたん、と尻餅をつく彼女に鞄も一緒に投げてから扉を閉めて、鍵をかけた。

「言いつけを守れなかった罰だ、そんなに外が好きならそこにいればいい」

そう言えば、彼女はしばらくぽかんとした表情をしてから、ぐすぐすと泣きはじめた。
ガラスを叩きながら「ごめんなさい、ごめんなさい」と何度も謝る彼女に、ほんのちょっぴり独占欲が充たされた気がするけど、それで許すつもりになったかと言えば、それは無いのでカーテンを閉めた。
ドンドン、と彼女がガラスを叩く音を無視して俺は暫く時間をつぶす。



彼女が大人しくなってから暫くして、鍵をあけてあげた。
なまえは隅の方で小さく泣いている。しゃがんで両手を広げてあげれば、ごめんなさい、と謝りながら両手に収まった。
抱きしめた彼女は凍えるように冷たい。

「なまえは何に謝ってるんだ?」
「……帰りが遅くなったこと、と…連絡しなかったこと……」
「それだけか?」
「勝手に男の人と連絡先を交換したこと」

そうだな。そう言って彼女を家の中に入れてあげる。

「じゃあなまえ、どうしないといけないかもわかるよな?」

そう言って身体を離せば、彼女はうん、と頷いてからポケットからスマホを出した。パスワードを解除して連絡先を消去させる。消去しました、の画面が表示されると、それを俺に差し出す。俺も、本当に彼女がそれをけしたのか確認してからそれを床に置いた。

「俺はなまえを愛している、だから心配なんだ。外は危険な所で、なまえの優しさや可愛さなんかに漬け込む奴らが沢山いる」
「……っ」
「俺が働くから、仕事もやめよう。なまえは俺だけのことを愛して、俺だけのことを考えて、俺だけの帰りを待っていればいいんだ」
「……」
「なまえ」

名前を呼べば、うんと小さく頷く。
それで、何もおかしなこと、悲しいことなんてないはずなのに彼女は依然としてなき続けている。舌で涙を舐めとっても、指で拭っても彼女は泣くことをやめない。

「なにも悲しくなんてないだろう」

な?、と同意を求めれば彼女はごしごしと目を擦ってから何度も頷く。
最後に零れた涙を舐めとってから、なまえに優しくキスを落とした。
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愛情独占型(浮気は絶対許さない型)

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