架羅→←夢主←肉 キャラ崩壊注意!

ムスクっぽい匂いがした、どこかで嗅いだことのあるその匂いはなまえにはちょっぴり似合わない気もする。
頭二つ分くらい身長が小さいなまえは俺の襟を手前に引っ張って、俺を屈ませる。濃いくなるその匂いに少しだけ頭がくらくらした。ぽってりした、柔らかそうで啄みたくなる桜色の唇が俺の名前の形に動いてから、口角があげられる。その形のいい小さな唇から漏れる吐息が少しづつ荒くなっていくのがわかって、純粋に嬉しかった。スカートの中に忍ばせていた手を、頬に寄せる。

「カラくん、興奮してる?」

問いには何も返さなかった。それがどういう意味なのかわかったなまえは「興奮しているカラくん、とっても男らしくてカッコいい」そう言ってから、襟を握っていた手を放してから、するりと首に腕が回し、もう片方の手、綺麗に手入れされた細長い指が俺の唇をなぞる。 俺は名前を呼んでから、するりとなまえの脚の間に自分の脚を滑り込ませて逃げられないようにした。唇をなぞる指をぺろりと舐めてから、甘噛みをする。なまえはびっくりしたような表情をしてから、ふにゃりと嬉しそうに笑って「キスして」と強請る。唇に寄せられていた指が、ふちをなぞってから、耳たぶに触れる。ふにふにと柔らかさを確認するようなその行動を少しだけ不思議に思ったけれども、唇を近づけるたびに強くなる、なまえがつけている香水であろうムスクのにおいとは別の甘い匂いがした。
どうしても、なまえを自分のものにしたくなる。めちゃくちゃにしてやりたくなる。本能的に組み込まれている感情があふれてどうしようもなくなった。
噛みつくようにキスをした。それから、無遠慮に薄く開いたそこから舌を滑り込ませる。何か言いたそうなそぶりを見せたけど、今はなまえの言葉を聞いているほどの余裕がない。口の中をどろどろのぐちゃぐちゃにして、唾液を呑めと言わんばかりに送り込んだ。たぶん自分はキスが上手じゃない方だと思うし、それと、今日はいつも以上に興奮していた。だから、上手にキスが出来なくてがちんと歯がぶつかってしまう。それからなまえの甘い口の中にちょっぴり鉄の味がするようになった。

「ん、ふぅ!カラく、ん!」
「……っ、」

キス、というにはあまりにも情緒がないようにも思う。なまえを気持ちよくさせたいって気持ちがないわけじゃないけど、それ以上にぐちゃぐちゃにしてやりたいと思う気持ちのほうが大きい。なまえの口の中が切れていることも構わずにキスを続けていれば、頬に寄せていた手が握られてから、なまえの胸に持っていかれる。本能むき出しのそのキスの合間でなまえは「触って、気持ちよくして」と余裕のない声で言った。

「……っクソ!」

言われた通りにした、形のいいその胸をちょっとだけ強く揉めば、嬉しそうに瞳が細められる。かわいい、かわいい、めちゃくちゃにして、自分のものだって他人にも自分にも、そしてなまえ 自身にも分からせてやりたい。そんな気持ちだけで、くちゅくちゅと下品な音を立てながら貪るようにキスを繰り返した。


なまえと俺との関係は恋人とも友達とも、呼べないものだった。セフレ、なのだろうか。よくわからない、口や手で抜いてくれることはあるけれども、なまえは挿れさせてくれることも況してや脱いでくれることもない。だから、セックスはしていない。それがどうしてなのかは理由を聞いても答えてくれなかった。
でも、そういうことが嫌いなわけじゃないらしい。そうやって接触する機会が増える度に「カラくんはキスが上手になっていくね」と言ってくれるのだ。もしかしたら、俺が学生でアイドルも兼ねているから遠慮しているのかもしれない。それが悔しくてどうしようもないから、何度も何度もその悔しさをぶつけるようにしてひどくメチャクチャになるようなキスをしたけれども、でもなまえは決まって「カラくんのキスは優しいね」と言うのだった。もしかすると、かなりひどくされるのが好きなのかもしれない。

今日は日本史の授業や握手会をオールキャンセルして、テレビ局に来ていた。一応これでもアイドルをしていて、それなりに知名度もファンもいるつもり。
準備が終わってあとは時間を待つだけになってしばらくは他の奴と話したりしているけど、それでも妙になんだかそんな気分じゃなくなって楽屋の外にでることにした。
特に行き先とかそんなものは決めていない。ちょっと御手洗いにでも行ったら帰るつもりだった。
だから、まさか自分がそんなものを見るとは思ってもいなかった。偶々、開いたまんまの楽屋が気になって横目でちらりと見ただけ。ほんとうにそんなつもりはなかったのに。
見覚えのあるその相手が縺れるようにして、いつもの俺と同じことをしているのを見て目が離せなかった。
くちゅくちゅ、じゅるじゅると聞こえる音を聞きながらぼんやりとその二人がしているのを見ていると、とんとんと二回肩をたたかれる。

「いやん、えっち」
「あ、おい!一応先輩だろ!」
「チョロちゃんそんなカリカリしないの」
「カリカリじゃねーし、あとJADEだっつってんだろ」

怖いね〜、と呑気にそういいながら俺に肩を組んでくるのが赤い髪の毛の男で、カリカリしてると言われて大きく舌打ちをしているほうは緑色の髪の毛をしていた。
二人とも俺と同じように見ているだけでなかに入ろうとはしなかった。服装の感じからしてあのなまえの上に跨がっている黒髪で青いメッシュが入った男と知り合いなのだろう。
赤い髪の男は「ほんといっつもこんなんで困っちゃうんだよな〜」と軽い口調で言った。

「というか、僕らに何か用ですか?」
「あ?用というよりかは……」
「あっちゃ〜もしかしてなまえちゃん?」

ちらりと男の顔を見ると、男はにんまりと笑って「あたり?」と言った。

「またなまえちゃんか、ごめんね」
「なまえちゃん、なんでこんな大物に手を出すかなぁ?僕らまだデビュー仕立てなのに」
「ん〜、なんか架羅と似てんじゃない」
「だからって……!」

ちらり、となまえのほうを見ると嬉しそうに自分からキスをしながら相手に服を脱がせてもらっていた。ニットを脱いで、黒いキャミソールも脱がされると白い肌には沢山の噛み跡やキスマークがあった。みどりの髪の男は小さな声で「あれはやばい」と言う。

「俺らバンドを組みはじめたのは高校生のときなんだけど、その時点ではあの二人既にあんな感じだったよなぁ」
「付き合ってるってことか?」
「わかんない。『付き合ってるの?』って聞いてもわかんないってかえされるから」

いっつも二人だけでいちゃいちゃしてんの、もう慣れちゃったけど。と赤の男はそう言ってたからぽんぽんぽんと俺の背中を優しく擦った。それから「君は何も悪くないからね、悪い女に捕まっただけだからね」と言った。
ふと、思い出すはなまえの言葉ばかりで今よくよく考えてみればそれはすべて俺ではない誰かと比較したような言葉ばかりだった。あのときはそんな風にも思わなかったけどきっと初めてそういうことをしたときからなまえは俺じゃなくて俺を通して別の誰かをずっと見てきたのだろう。
そもそも、なまえに好きとかそんな感情はなかったのだ。高校生のときから、二人がああやって誰にもわからない二人だけの関係を持っていたというのであれば始まる前から既に俺のこの気持ちは行き場所はなかった。失恋、という言葉すら当てはまらないものに思える。

「架羅くん、すき」
「なまえ」
「もう挿れて、架羅くん」

「邪魔して3Pに持っていけば?」
「おい!あのなぁ、お前はいっつも!」
「今回は明らかになまえちゃんが悪いじゃん、人の気持ちたぶらかしてさ」
「だからって」
「きっと邪魔したってなまえちゃんは何も言わないよ。それに、なまえちゃんの言うことに架羅は反対しないしね」
「……」
「まぁ、架羅の言うことになまえちゃんは全部従うけども」

俺は、肩に置かれた手をゆっくりと振り払った。そして、それからぺこりと頭を下げて自分の楽屋に戻る。
さっきのその言葉が、なまえのすべてなのだろう。俺になまえを独り占めすることなんて一生出来ないに違いない。