【蒼の夜のその音色の…】


下弦の月が浮かぶ夜…
広い中庭が見渡せる部屋の窓際に、男は座っていた。
月の光を受け、青白く輝く長い髪は、後ろで綺麗に束ねられている。
時折、夜風が軽く吹き抜け、男の前髪を揺らした。

「眠れないのですか??」

そんな男に声をかけてきたのは、細身の剣を腰に携えた、一人の騎士…
一見男性に見えるが、肩幅や細いウエストライン、二の腕等、どう見ても男性のものでは無かった。

「あぁあ。またそんな格好して…。せっかくの美人なのに、勿体無いよ?ルビー」
「戦場に出れば、格好など関係ありません!!」
“ルビー”とよばれた騎士は、男に怒鳴り返す。
男はそれを、比較的に“何時もの事だ”と流し…
「あ、でも明日の戦に勝ったらルビーにもパーティーに出て貰うから、それなりの格好してもらうよ??そうだなぁ〜…。うん、ルビーならあの格好が良いかな?」
男は笑いながら、うんうん頷き、一人納得をする。
ルビーはそんな男に観念したのか、深い溜め息を吐いた。
「貴方は…。戦の前だと言うのに、何故余裕を振り撒いていられるのですか…」
「ん〜…。指揮官が変に緊張していたら、軍ってガッタガタになりそうだから」
笑って言った男に、ルビーは幾度目かの溜め息を吐いた。

暫くの沈黙…
聞こえるのは、小さく無く虫の音と、時折吹く柔らかい風…
そして、暗くとも月明かりで青い風景に、ピッタリと合う様な、幻想的な竪琴の音…

星は唄う 子守歌を
皆眠る 蒼い夜に
月の灯り 一つ降り注ぐ……

男は、竪琴を奏でながら、歌っていた。
その旋律は、どこかレクイエムにも聞こえると、ルビーは思った。

「…まるで…奥様に捧げるような歌い方ですね…」

生と死を掛け、人間は戦い合う…
明日はもう無いかもしれない命…
だから彼は、こんなにも寂しい歌い方をするのだろうか…

「ん〜…。それもあるけどね。私にはもう一人、小さな友人が居たんだよ」

唯一竪琴を教えた、小さな友人…

「まぁ…ルビーが来てから、パッタリ来なくなったケドね。君の警備が怖かったのかな??」
「なっ…!!!」
言葉を詰まらせたルビーに、男は肩を揺らしながら笑い、再び竪琴を奏でる。
ルビーも反論したかったが、明日は無いかもしれないこの会話を…聴けなくなるかも知れない竪琴の音を、今は静かに聞いていた。

─時折、夜に耳を澄ますと
微かに竪琴の音が聴こえる…
自分の幻聴か、そうじゃないのか…
でも
なんとなく、その竪琴の音が、あの来なくなってしまった少年のものに思えて仕方ない…
凄く、綺麗な旋律…─

「直接、それを言ってあげたかったな…」

男の呟きは、ルビーに聞こえる事も無く…
ただ、かき鳴らす竪琴に混ざって消えた…

END...


─────────
†イベント前に、「きっとこれを聴けば眠くなるハズ!!」と、志 方 あ き こさんの新しいアルバムを聴き…

そしたら思い付いた突発的な話。

まぁ雰囲気で(^^;)
あえて竪琴弾きの名前を出してませんが…
まぁ…なんとなく「彼」かなと

今後、その彼を出す機会が無さそうなんで、まぁ…いいか(^^;)
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -