短編 | ナノ


もし劇の直前に緊張していたら//現パロ五い



「うわあ、お客さんいっぱい……!」

こそっと舞台袖から客席を覗き見る。意外と入っている。ロミオとジュリエットなんてテンプレすぎてお客さんあんまり入らないかと思っていたのに。緊張感が増してくる。
ナレーションだけなのになあ。舞台の端にちょっと出て話すだけなのに。いや、でも初めの私が躓いちゃいけないし、やっぱり緊張する。こういう時ってどうしたら良いんだっけ。

「河内さん緊張してるの?」
「うわっ、尾浜くん!してるよー緊張するよー!そういうマキューシオはどうなのさ」

うちのクラス委員長の尾浜くんはロミオの親友マキューシオ役だ。主役の彼とは実際に親友のようだから役柄は現実と大差なさそうだ。

「うーん、主役じゃないからな〜」
「呼んだか?」

噂をすればで、ロミオの格好をした久々知くんが現れた。まさに王子さまといった感じで、お客さんには久々知くん目当ての女子も多いはずだ。

「呼んでないよ、兵助」
「ふーん。まあいいや。それより河内さん、ナレーション頑張れ。緊張してるなら、客はみんな豆腐だと思えば良い」
「いや、久々知くんじゃないからそれじゃちょっと……」
「えー?」

普通かぼちゃだとか野菜だと思え、ってことじゃなかっただろうか。豆腐とはどう考えても久々知くんにしか通用しない手だ。
でも、お客さんが豆腐って。想像して少し吹き出してしまう。

「お。笑ったね。緊張解れたんじゃない」
「あ。ほんとだ……。ありがとう、2人とも」
「どういたしまして」
「あと手のひらに豆腐って書いて飲み込むんだ」
「それも違うから兵助」

もうすぐ劇が始まる。
とりあえず人って字を飲み込んでおいた。



久々知は豆腐ネタしか浮かばないです。
ありがとうございました!



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