いさっくんと保健室 「いーさっくーん……って、うわあ!何それスプラッタ!?」 「あ、まどか。ごめんね、ちょっと散らかってて……」 保健室が散らかっているのは保健委員が通常運転しているということなのでもう既に慣れた。しかし、いつもならたんこぶ程度の人的被害なのに、今日はなんていうことだ。「あははー、またやっちゃったよ」と苦笑する伊作くんの頭からはだらだらと赤いものが流れている。どうしてそんなにへらへら笑っていられるの!? 「いいいいいいいさっくん!!血!血ぃ出てるよ!だっらだらだよ!?」 「え?」 きょとん、と首を傾げる姿はなんかもう可愛くてハグしてやりたくなる、じゃない。伊作くんは私の中の葛藤なんぞ一切気にも留めず前髪を払いながら額にべったりと付いた血に触れた。 「ああ!違うよこれは、赤チンだよ。上から被っちゃったんだ」 「赤チン……」 なんだ、赤チンか。血じゃなかったんだ。ほっとしたら腰が抜けた。興奮していた分脱力感がひどい。紛らわしいな赤チンめ…… 「え、まどか大丈夫?」 「それいさっくんには言われたくないわあ」 心配して寄ってきた伊作くんの膝をむりやり頭の下に引いて暫くぐったりしていたのだが、しゃきっと立ち上がる。こちらを覗きこんでいた伊作くんの顎に私の後頭部がぶちあたったが、私は石頭なので全く痛くなかった。ごめん。悶絶する伊作くんを横目に部屋を片付け始める。 「ほら、早く片付けよう。でもその前にいさっくんなんか臭いから頭の赤チン流してきてね」 「臭いって……酷い。っていうか、何しに来たのまどかは」 顎を摩りながら立ち上がる伊作くんを見て、あーと言葉を濁す。伊作くんはぼろぼろである。 「うん、まァ、いいや」 (どうせお菓子持ってなさそうだから悪戯しにきたとは言えない……。) ← |