短編 | ナノ


5のいとハロウィン


「河内さん、トリックオアトリート!」
「あ、尾浜くん。お菓子あるよー。飴とグミどっちがいい?」

鞄からパイン飴と忍者グミを取り出す。

「グミ!それ好きなんだー」

にこにことグミを指す尾浜くんをかわいいなあと思う。ハロウィンな今日、尾浜くんは男女問わずみんなにこの言葉をかけてはお菓子を手に入れていた。だから私が尾浜くんにちょーっとお菓子をあげても女の子に睨まれることはないのである。しかし、これはないよね尾浜くん!目の前では尾浜くんが可愛いお口を開けて待っている。

「あーん」

な ぜ だ !これは何の拷問だ?普通にお菓子をあげるだけで終わるはずだよね。「あーん、きゃっ」とか何。ちょっと!別のクラスの女の子たちがこっちを見てるんですけど!きらきらした目で見ないで尾浜くん、お願いだから。

「やめろよ、勘右衛門」

進退窮まっている中、救いの手が差し伸べられたかと思った。
それが、久々知くんでなければね!

「ごめんな、河内さん。勘右衛門が我が儘言って。それ、もらっても良いかな?」
「あ、うん。どうぞ」

忍者グミを久々知くんは受け取ると、ひょいと一粒尾浜くんの口に放り込んでしまった。イケメン同士の「あーん」に教室内外のギャラリーが黄色い声を上げている。っていうか、さっきより多くなってない?気のせい?気のせいだよね。しかし、本当にイケメン同士だと絵になる。そんな二人を演出した忍者グミってものすごいプレミアが付きそうだな。

「河内さん」
「はい?」
「これ、ありがとう」
「うん、いいよー。別に。あ、久々知くんもいる?飴のがいい?」
「あ……飴くれるかな?」
「はーい。どうぞ」

飴を一つ取り出して差し出された久々知くんの手に乗せた。

「ハッピーハロウィン!久々知くん」


(河内さんの手が……!ちょんって!!)
(兵助きもい)



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