短編 | ナノ


七松先輩とハロウィン


「七松先輩、trick or treat!」
「おお!なんだそれ!」
「えー!先輩知らないんですか!ハロウィンですよ!お菓子くれなきゃ悪戯するぞ、ですよ。で、先輩お菓子持ってますか?」
「持ってないな!」

いっそ潔いくらいずばっと七松先輩は仰られました。ですよね。先輩がお菓子持ってるとは微塵も考えてませんでした。なのになんで私がこんなこと言ったかというとそれは勿論罰ゲームというやつであります。お菓子持ってなかったからこれってなんか釣り合ってないと思うのだけれど、ね?違わないと思いますよ三郎さん。どぎまぎしつつ七松先輩に笑いかけた。目標は立花先輩。

「じゃあ、悪戯ですね」

……しかし、悪戯って何をすればいいものか。

「何をするんだ?」

先輩の笑みが怖い。心なしか近づいている気がする。効果音をつけるなら、じりじりじりといった感じ。

「えーと、兵太夫くんにきいてきまーす……って、アリですか?」
「なしだな!」

にかっと輝かんばかりの笑み。眩しい。眩しすぎてこわい。マジ止めてください嫌な予感しかしない。こんな時の七松先輩からは逃げるに限るのだけれど、勿論逃げられるわけなんてない。つまり、絶体絶命というわけで、終わった、私。

「とりっくおあとりーと!まどか」

はい。詰んだ。覚えてろよ三郎。



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