おいていかれたあの子の話
そういえばボクはよく両親い打たれていた気がする。
好き嫌いをしたとき、駄々を捏ねたとき、悪戯をしたとき、インゴより成績が悪かったとき、運動会のかけっこでこけたとき、インゴがいじめられたとき、インゴが悪いことをしたとき、インゴとボクの見分けがつかなかったとき、特別何にもしていないとき、その他色々。
急に怒った顔のお父さんとお母さんが来てボクを打つ。
顔はあんまり打たなくて、頭とか足とか腕とかお腹とかを打つ。
時々蹴られたり殴られたりもする。
すっごく痛くて泣きそうになるけど、泣いちゃうと余計に打たれるから口を一生懸命に押さえて、指を噛んで我慢をする。
だけど、ずっと黙ったまんまだとそれはそれで打たれちゃうから、ごめんなさいっていっぱい謝る(だって謝らないと余計にひどい目にあうのだもの)。
痛いのはいやで、どうしてお父さんとお母さんがボクを打つのかわからなくて一生懸命考えていい子になろうとしたけれど、やっぱり何にも変わらなくて、ボクは我慢するくらいしかできなかった。
でも本当にどうしてボクは打たれたのだろう。
やっぱりボクが出来損ないの弟だからかしら。
インゴの方がいい子だからかしら。
ねえボクとインゴは違うんだよ。ねえボクを見てよ。
ぎいぎい揺れてるお父さんとお母さんはどうせもう何にも聞いちゃいないし、聞いてももう教えてくれる人もいないけど。
「ねえ、インゴなんてもう随分前からいないんだよ」
ボクはあとどれくらいいなくなった片割れの影に首を絞められればいいのでしょうか。
(だってインゴはみんな持っていってしまった)