箱庭制作計画

 あの子がゲームセンターに来るのを、ぼくはいつもショウケースの中で見ていた。

 ゲームセンターの景品交換所。そのカウンターの前でコインケースを片手に、交換レートの一覧表を見ながらあと何枚って呟いていたあの子。
 とうとうコインを商品に交換した。
 あの子は一体何を貰うのかしら。そう思っていたらぼくの入っているモンスターボールがあの子の前に差し出された。

 当時は酷く驚いたものだった。
 何せぼくを景品として貰うにはとんでもない数のコインがいるし、何よりあの子はいつもとても強そうなハッサムを連れていたから。
 そうしてぼくはショウケースの中の景品から、あの子のポケモンになった。


 あの子はぼくに×××だと名乗った。
 だから以後ぼくもあの子を×××と呼ぶことにする。


 ×××は決してバトルが苦手な訳ではなかった。
 けれどぼくは全然バトルに勝つことが出来なかった。
 ×××はぼくにごめんねって謝ったけど、悪いのは×××じゃない。寧ろぼくだった。
 防御の指示にも攻撃の指示にも体が追いつかない。
 ×××はバトルが出来なくてもいいよって言ってくれたけど、ぼくはどうしてもそれが許せなかった。妥協なんてして欲しくなかった。本来人工無能として作られた物の本能かも知れない。

 ぼくの勝利を×××にあげるために、ぼくはデータをアップグレードして進化した。

 本来一段階ずつ行うはずの進化を一気に二段階。少しマシンに負担がかかったけれど、バージョンアップして上がった回転速度と処理速度を考えれば帳消しだ。
 でも問題が一つ。おかしなバグが残ってしまった。

 時々ぼくの意識が飛んでしまうのだ。
 はじめは一分二分だったけれど、段々長くなって来ている。それに間隔もどんどん短くなって、ぼくの意識のある時間と飛んでいる時間が段々一緒位になって来ている。
 パフォーマンス自体に影響がないから放って置いているけれど、さっぱりバグが解消しない。

 そしてバグが起き出してからどうしてか意識が戻ると×××が怪我をしているの。
 どうしてだろう。分からない。


 ある日、またいつもの様に意識が戻ると、とうとう×××が死んでしまっていた。
 本当に死んでいるのかなって眼球運動とか腸管の運動とか、誤魔化しの利かないところも見てみたけど、間違いなく×××は死んでいた。

 どうしよう。×××もいなくなってしまった。
 ふとその時×××のパソコンがぼくの視界に入った。
 ちょっと型は古いけれど、外付けのハードも込みでそこそこの容量があるパソコン。

 それにぼく自身をプラグして、データを全部移し変える。
 パフォーマンスの遅いOSは書き換えて、アプリケーションはスムーズに走る様に最適化。
 もうすっかりパワーが落ちてしまっているCPUにはぼくのパーツを使って。

 ぼくの覚えている×××を寸分の狂いもなく完璧に。延々と続く0と1の狭間で、1bitたりとも変質することのない君を。
 ああ、またモジュールの設定がおかしくなっている。
 なんで腕が頭に生えていてボディのカラーが真緑になっているんだr


 ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぶつり。




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