--1 先の学年末、死者が出る事件が起こり闇の帝王は復活した。 夏休み中、新聞その他がダンブルドア・ポッター勢に対するネガティブキャンペーンを展開したおかげで、夏休み明けの学校の大半の生徒は闇の帝王の復活を信用していないみたいだったし、我がスリザリンにおいてはその復活を喜ぶ輩が出てきた。 これが地味に精神的にきて、あたしは談話室に戻っても寝室に直行する日々を続けている。 父親の死の遠因となった人物を尊敬し、崇める寮の風潮にはうんざりを通り越して失望するしかない。 その中に自分の幼馴染ドラコや友人パンジーたちがいることも。 寮杯を得たり、目的を達するためには手段を選ばないなりふり構わぬスリザリン寮が嫌いじゃなかった。 むしろ居心地はよかった。 だけど今は違う。 * 今日はハロウィーンだというのに、例年の晩餐はないという。 アンブリッジとかいう魔法省からきた魔女が、学校体制に口出ししてきたせいだ。 ハロウィーンの時期にママは亡くなった。 あたしがホグワーツに上がる前年のことだ。 以来、ハロウィーンの晩餐ではしゃぐことで鬱々とした気分を吹き飛ばしてきたのに。 あのカエル女、ぶん殴ってやりたい。 星の名前を持つ父親を思って、星空を眺めるのが好きだ。 地下にあるスリザリン寮から一人抜け出して、天文台の塔のてっぺんまでやってきた。 このままここで陽が落ちるのを待って、夜空を眺めようかと思っていたのに。 「やあチェンバレン」 出たっ。 いきなり現われたポッターに顔がひきつる。 辺りを見回してもスリザリン生の姿はない。 そりゃそうだ、だって、門限近い、夕暮れの天文台には人っ子一人いない。 あたしと、ポッター以外は。 あたしがおろおろするのが面白いのか、ポッターはくすくす笑っている。 ほんとになんなのこいつ…! 精神を癒そうとここまでやってきたのに、それでこんな窮地に陥るとか笑えない。 「…なにか用?」 精一杯虚勢を張って言うあたしにポッターが盛大に笑った。 怖い以外感想ない。 「そんなにびくびくしないでよ。僕がいじめてるみたいじゃないか」 「自覚あるならさっさとどっか行ってよ…!」 「マルフォイは?」 「いつでも一緒にいるわけじゃないわ。ボーイフレンドでもあるまいし」 つんとすましてそっぽ向くあたしに、ポッターはまだ笑っている。 「なに笑ってるのよ」 「チェンバレン、気付いてないの?マルフォイの熱視線」 「はあ?ドラコがあたしを見る目に幼馴染以外のなにがあるっていうのよ」 「まあ、そういうことにしとく?」 したり顔のポッターに嫌気がさして、あたしは立ち上がった。 ぎりぎり門限前の時間だ。 走れば管理人に見つからずにスリザリン寮に戻れる。 夜通し星を眺めたい気分だったけど、どうにもそれは無理そうだ。 ポッターがいる限り。 ポッターと視線をあわせずに脇を通り過ぎようとした瞬間、ポッターに手首を掴まれて飛び上がる。 「…なによ」 「むくれないで、可愛い顔が台無し」 意味わかんないこと言い始めたポッターに、顔から血の気が引く。 (だからなんなのよ!) ← | top | → |