--3 「うわっ」 「えっ」 男の子の驚く声と、あたしのダークグリーンのドレスに広がる生ぬるい液体の感触。 「ごめん!僕前を見てなくて」 混み合うフロア。 あたしにバタービールを引っ掛けたらしい男の子が慌てて言うのを、自分のドレスを見つめながら聞いた。 あたしがぼーっと立っていたせいもある。 パートナーのブレーズが女の子を見つけて行ってしまった後、手持ち無沙汰にみんなの様子を観察していたからだ。 あたしはドラコからのパートナーの誘いを断った。 気心が知れた幼馴染とパーティーに参加するのは最善に思えたけど、ドラコに恋するパンジーを思うとドラコの誘いを受けることが出来なかった。 代わりに申し込んできたブレーズのパートナーになったけど、女好きのあいつはパートナーのあたしをほっぽり出してフロアへ消えていった。 こんなことならセオドールのパートナーにしてもらえばよかった。 ドラコは自分よりブレーズを選んだと拗ねてしまったし。 ドラコとブレーズがもともと馬が合わないのもある。 折角のクリスマスなのについてないけど、他人まで巻き込むことはない。 これをいい口実にスリザリン寮に引っ込もう。 薄く笑顔を作って、気にしないで、そう紡ごうと顔を上げて固まる。 「あ、チェンバレン…」 「どこに目つけてんのよ」 あたしにバタービールを引っ掛けた犯人は英雄・ポッターだった。 こいつに笑顔を向けるなんてもったいない。 がらっと表情を変えて眉を寄せたあたしにポッターが竦んだ。 「ハリー、なにやって――。げっ、チェンバレン」 ポッターの隣に現れたウィーズリーがあたしの顔を見て嫌そうに声を上げた。 純血の魔法族の子どもとして幼い頃から面識があるあたしたちは、学校に入る前から上手くいってない。 「浮かれてるから女の子に飲み物ぶっかけるのよ。自重しなさい」 「かけられるようなとこを歩いてるそっちにだって非があるんじゃないのか?」 むすっと言ったあたしにウィーズリーが言い返してきた。 あたし、立ち止まってたもん! 「ロン、ちょっと待ってて」 「ちょっ、!?」 ポッターは駆け出した。 ウィーズリーに反論しようと口を開きかけたあたしは、あろうことかポッターに手首を掴まれ半ば引きずられるようにポッターの後を追う。 なに!? もしかして、日頃のスリザリン生への恨みでぼこぼこにされる!? (しかも女の子たちの視線が痛い…) ← | top | → |