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ダンブルドアの葬儀が終わると、僕はスリザリン生の列に割り込んでエミリーを探した。
エミリーは気落ちした表情ではあったが気丈に立っていた。
彼女はあの夜、『大事な幼馴染』だというドラコ・マルフォイを失った。
マルフォイはスネイプやデスイーターと共にこのホグワーツから逃走した。


「エミリー、来て」
「ポッター…?」


スリザリンの面々はかなり驚いた表情で僕らを見ていたが、僕がエミリーをスリザリンの輪から連れ出すのを制止するものはいなかった。
エミリーの手首を掴み、十分歩いてホグワーツ城の影に身を寄せる。
気丈に立っていたと思ったエミリーは、今にも崩れ、倒れそうなほど足元が覚束ない。
僕は来年度このホグワーツに戻らないことを決心していた。
ヴォルデモートのホークラックスを探し出し、破壊する。
ダンブルドアが最後の命の端を削るようにして手にしたロケットは『R.A.B』なる人物がヴォルデモートに秘密ですりかえた偽物だった。
それで、僕は彼女に関するある推測がついていた。
エミリーとR.A.Bにはなにか繋がりがある気がする。


「きみの本当のお父さんの話がしたいんだ」


僕の言葉はエミリーにとって突拍子がないことだったらしい。
エミリーはかすかに眉根を寄せ、僕を見上げている。


「エミリーのお父さんはR.A.B。違うかい?」


エミリーは驚いたように目をぱちぱちさせて、僕を見ている。


「ポッター、ホークラックスに行き着いたの?」


彼女の言葉に僕も少しは驚いた。
R.A.Bが彼女の父親だということ以外にも、エミリーはずっと多くのことを知っているようだった。
エミリーは周囲にさっと目を配り人影がないのを確認すると決心したかのように口を開いた。


「パパの名前はレギュラス・アークタルス・ブラック。ホークラックスを破壊するため命をかけたわたしの自慢の父よ」
「やっぱりそうなんだね?きみはいろいろなことを知ってる、そうだね?」


急き込んで問う僕にエミリーはあいまいに首を振った。


「多くは聞いてない。ママはそんなに話したがらなかった、伯父の手前、おおっぴらに出来なかったんだと思う…。ママは病気でふせってた。わたしがママと面会するのは伯父夫婦が一緒のときだけだったから…」
「ミスター・チェンバレン…」


(僕が気づくくらいだ――)


「ねえエミリー、きみの伯父さんはきみのお父さんがレギュラス・ブラックだってことを知ってる?」
「知ってるわ…」
「ミスター・チェンバレンはそのうち気づくんじゃないか?レギュラス・ブラックがホークラックスの破壊に奮闘したって。そのとき、きみの立場はどうなる?」


エミリーの顔がさーっと青くなるのを見て、僕は思わずエミリーの手を握る。


「ミスター・チェンバレンはヴォルデモートの腹心だと言ってたね?そんな家に、きみ帰れる?無事でいられる?」
「わからない…。でも、ヴォルデモートはホークラックスの所在が気になりだしているころかもしれない。パパの死は闇側では不審だから――」


蒼白な顔で呻くように言うエミリーと目を合わせ、僕はゆっくり言葉をつむぐ。


「エミリー、きみは僕とおいで。このホグワーツに戻ることも、チェンバレン夫妻の家に戻ることも得策じゃない」
「あんたと…?」
「僕はホークラックスを探し出す旅に出るつもりだ。エミリーも一緒に行こう。きみのお父さんが救いたかった世界を、一緒に救いに行こう」
「パパが救いたかった世界…」


エミリーは少し間を空けたが、きっぱり頷いた。


「あたし、あんたに着いていく。この世界を、あたしもどうにかしたい。連れて行って――」


決然とした面持ちのその美しい顔を見て、僕はマルフォイを思い出した。
マルフォイならきっと止めただろう。
エミリーにそんなことをさせる道理はないと言っただろう。
しかし。


(悪いね、マルフォイ)


僕は内心ほくそ笑んだ。
ダンブルドア亡き今、どんな情報源にもすがりたい。
ホークラックスのことすら知っていたエミリーが、彼女の実母から他にも情報を得ている可能性は高い。


(でも僕を恨むのは筋違いだよ。こんなに愛しい女の子がいる世界から背を向けたのはお前だから)


エミリーの肩を優しく抱いて、僕らは二人歩き出した。
六月のまばゆい光があふれる、この世界を。



End.




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