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「エミリー、今呪文学が終わったところ?」


無視!


「やあエミリー、今からご飯?」


黙殺!


「エミリー、この秤かりてもいい?」


聞こえないふり!したけど、ポッターは構わずあたしの秤をどっかに持ってった…。


「ポ、ポッターってどうしたの?」
「…知んない」


魔法薬学の授業中だというのに、朗らかに声をかけてきたポッターを見てパンジーは不可解そうに眉根を寄せた。
ああ、可愛い顔が台無しよ、パンジー。


ポッターは今までの不快さに、なにをするかわからないという恐怖が加わった最強の存在になった。
…二度とあいつと二人きりにはなるまい。
そう固く決意した。



*



「エミリー!どういうことだ?」
「なにがよ」


魔法薬学が終わって、ドラコが突撃してきた。
血相変えた幼馴染に眉をひそめて応対する。


「ポッターだよ!」


ぎゅっと心臓が掴まれた気がする。
あたしはあいつに天文台の塔のてっぺんで、キ、キスされたキスされたキス(エンドレス)。
頭を抱えてうずくまりたくなる。
というか、実際そうしたあたしを見て、ドラコが焦ってあたしを空き教室に引っ張りこんだ。


「なんだよ、なにがあったんだ!?」


言えるわけないでしょ!
とは口にも出せず…。
よく考えたら、近くにいたドラコがいつもポッターをからかってて、それでポッターはあたしの存在が目について。
それって、よーくよーく考えたら!


「ド、ドラコがあいつのことからかうからあああ」
「ど、どうしたエミリー!?」
「あたしが標的になっちゃったじゃないのよおおお!」


向かいあうドラコの肩をばしばし叩いても、ドラコには大したダメージを与えられなかった。
同じ速度で育ったはずだった幼馴染はここのところあたしをおいてけぼりにして急成長していた。
精神じゃない、身長の話だ。


「泣くな、泣くなよ!」


いつの間にか半泣きだったらしいあたしに、ドラコが焦って背を撫でながら慰めてきた。
小さい頃から慰められるのはドラコの方の専売特許だったのに!
はっと気付いて、取り乱したのが情けなさすぎて、あたしはぐい、とドラコの胸から離れた。


「…内緒だからね」
「なにが?」
「だから――」


あたしが泣きべそかいたことだよ!
そう言おうと思ったけど言葉は続かなかった。


「なーにが内緒なんだい?」
「ケナガイタチくん、ガールフレンド?」


ぱっと振り返ると教室のドアのところに鏡合わせのような双子が立っていた。
ものすごくにやにやしている。


「おやまあ」
「チェンバレンじゃないか」
「…双子のウィーズリー」


ものすごく嫌な顔をしたあたしにもひるまず、双子のどちらかがあたしを指さした。


「おやおや、目が赤いんじゃないか?」
「ケナガイタチくんにフられちゃった?」


もう片方がいらっとくる身振り手振りであたしとドラコを交互に指さす。
こいつら!
まじ嫌い!
ローブのポケットに手を突っ込んで杖を取り出して、躊躇せずに二人に向かって杖を振る。


「レダクト!」


光線はわずかにそれて教室の壁に直撃した。
ち、おしい。


「おい!」
「人さまに向ける呪文じゃねえぞ!」


壁に大穴があいたのを見た二人が声を張る。


「あたしに今度そんな口聞いてごらんなさい!その能天気な赤頭ふっ飛ばすわよ!」


杖を握りしめ唸るように言ったあたしに、双子はついに退散した。
ドラコはそんな様子を呆けて見ていた。



(Happy Halloween??)




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