after days
◎リクエスト作品
perfect world番外で、ブラック夫妻+愉快な仲間たちと夢主娘の日常@12/3*23時の方



オッタリー・セント・キャッチポールの村から少し離れたところにあるストーツ・ヘッド・ヒルの頂上に、大きな建物がある。
それがブラック家の屋敷だ。
シリウス・ブラックとその妻、娘一人と息子一人の家族四人が暮らしている。



*



パパの名前はシリウス・ブラック。
本人曰く凄腕の闇祓い、らしい。
ただ、パパは猪突猛進な性格だからその真偽は定かではない。
パパの旧友で同じく闇祓いのリーマスの足を引っ張っている可能性は高いと思う。


ママの名前はリーザ・ブラック。
パパより二歳年上の姉さん女房で、その名を世間に轟かす、偉大な魔法薬博士だ。
パパとは学生時代嫌い合う仲だったらしいけど、どういうわけかそのパパと結婚して二児をもうけている。


この二人は我が父母ながら、お似合いの美男美女だ。



*



「ねえパパ」


早々と思春期に突入し、その年頃の女の子よろしく父親に必要以上に寄りつかなくなった愛娘の呼びかけに、シリウスはかすかに嬉しそうにした。


「なんだ?」
「パパとママってどうして結婚したの?学年も寮も違ったのよね?」


興味津々で尋ねてきた娘に、シリウスはさっと視線をそらした。


「…お前のママに聞け」
「パパの奥さんでしょ?ママったらにやにやして、パパに聞くのが一番面白いって言うの」
「あいつ…」


正直なところ、娘に学生時代の自分の馬鹿話を聞かせたくはない。
シリウスは眉根を寄せて頬杖をついた。


「パパとママは仲が悪かったよって、パパとママのお友達はみーんな言うのよ。それが、どうして結婚したの?」
「なんでんなこと聞くんだよ。お年頃か?」
「いいから教えてよ!」


にこにこ顔で抱きついてきた娘にどう話してやろうかと、シリウスは思案した。
二人の馴れ初めは、出会いはともかく、最終的にシリウスの方がほとんど土下座で泣きついたようなものだった。


「あー、俺は。学生時代、まあ、少し考え足らずで…」


父親の告白に娘はわくわくした顔になる。


「お前のママにぶん殴られて色々気付いてこうなったってわけだ。うん」
「ええー、はしょり過ぎて意味わかんない!」
「もういいから…。あんま俺のこと苛めるな」
「ママのこと好きになったの?」
「うあ…」
「どうなの?」
「…ああ、そうだ。それに今でも好きだぞ」
「わああ!」


自分とよく似た顔立ちの娘が手を打ってにっこり笑うのを、シリウスは苦々しく思って見た。
照れもある。


「ママ、聞いてた!?わたしの勝ち!」
「!?」


娘が笑顔で振り返った先を見て、シリウスは絶句した。
リーザがかすかに頬を染め、眠る幼い息子を抱いて立っていた。


「…うん、聞いてた」
「リーザ!」
「パパ、ママはね、パパが自分のこと好きなんてもう言わないんじゃないかって心配してたのよ。わたしが聞き出してあげるって約束したの。パパがママのこと好きって言ったら今日わたしはお出かけしてもいいって賭けだったのよ。パパ、ありがとう!」


娘はシリウスにぎゅっと抱きついて、居間の隅に立て掛けてあった箒へ駆け寄る。


「出かけてもいいけど、あんまり遅くならないでね。今日はリリーたちが来るから」
「もちろん!リーマスの結婚式の余興の話し合いでしょ?わたしジェームズに会うの楽しみ!」


学校でクィディッチチームに所属する娘にとって、引退はしたが今でも語り継がれる世界的スーパースターのジェームズは憧れの存在だ。
箒を持って今にも駆け出していきそうな娘に
シリウスは声をかけた。


「どこ行くんだよ?」
「セドリック・ディゴリーとウィーズリーの双子兄弟とクィディッチごっこしてくる!もしかしたら休暇中のウィーズリーのお兄さんたちも遊んでくれるかもしれないわ!」
「なんだと?」


ディゴリー家の一人息子の優等生はともかく、あの赤毛の悪戯兄弟はよくない。
娘を女の子扱いしないので、娘は彼らと遊びに出掛けると必ず泥だらけになって帰ってくる。
学生時代の自分とキャラがかぶっているので心配は倍々だ。


「男とばっかり行くことないじゃねえか」
「だって、この辺の子どもは女の子のほうが少ないのよ?ウィーズリー家の末っ子ちゃんもラブグッド家の一人娘もわたしより三つも年下で。話が合わないわよ」


娘は大人びた仕草で肩を竦めた。
年頃の娘を持つ父親の不安など理解出来ないのだろう。


「夕暮れまでには戻ってくるから、二人とも仲良くしててね!」


娘が出ていくと、屋敷に静寂が訪れる。
この状態で取り残されて、どうしろってんだ!


「それで。わたしは友人たちをもてなす手伝いの貴重な人手を失ったわけだけど」


リーザは少しだけ眉をひそめて静かに言った。
今日は近く行われるリーマスとニンファドーラの結婚式の、友人の余興の打ち合わせのため、ジェームズ、ピーター、リリー、そしておまけのスネイプが我が家の夕食に招待されている。
リーザは結婚の許しをもらいにトンクス家を訪れたリーマスに偶然遭遇し、その顔面に一発お見舞いしたらしいが、愛しの名付け子に非難されたことでその主張を完璧に引っ込めたらしい。
まあ、年の差が十以上離れていることを考えるとリーザの気持ちもわからなくはないが、あのカップルについて言えば、ニンファドーラが乗しかかる勢いで結婚までこぎつけたというのだから、従姉姪のバイタリティには頭が下がる。


「…手伝うさ、当然。子守してればいい?」


シリウスは妻の腕でぐっすり眠る幼い息子を覗き込んだ。
こちらは娘とは違い、リーザによく似た容貌をしている。


「よく寝ているから子守は必要ないわ。シリウスは、ジャガイモでも洗ってもらいましょうか」


息子をソファに下ろして、リーザは腕まくりした。
リーザはシリウスに家事の才能がないことにとっくに気がついている。
それで娘に手伝いを申し入れたというのに。


「おい、」


シリウスがリーザを覗き込んだ。


「照れんなよ、うつるだろ…」
「だって…」


リーザは情けなく眉を下げ、赤い顔でシリウスを睨んだ。



*



賑やかな食卓に娘はご満悦だ。
ジェームズの隣の席を陣取り、べったりまとわりついている。


「シリウスの大事な愛娘ちゃんにはもうボーイフレンドがいるのかな?」


ジェームズは男親が聞きたくない話題をさらっと口にした。
シリウスがジェームズを睨む。


「まだよ、ジェームズ!そんなのよりクィディッチの練習の方が楽しいの!」


娘はにっこり笑ってジェームズにまたくっついた。
同じく学生時代クィディッチチームに所属し、ジェームズを打ち負かした自負があるリーザもジェームズを睨んでいる。


「そういうところはリーザと一緒ね」


リリー・スネイプがくすくす笑って言うと、その隣のセブルス・スネイプも柔らかい表情で頷く。
セブルスはリリーと結婚してから丸くなった。


「うちのハリーなんかどう?」
「ハリーはまだ二歳でしょ?まあ、ジェームズが義理のお父さんになるっていうのは悪くないけど、ジェームズはわたしのゴッドファザーだもん!でもね、ほんとはわたしがリーマスと結婚したかったのよ。ドーラ相手じゃ勝ち目ないからもう言わないけどね」


少女の告白に大人一同はびっくりした。


「さ、さすがにリーマスが娘婿は、嫌だぞ…」
「は、初恋は実らないって言うよね」


ピーターがさっと場の空気を読んでフォローした。


End.




- | top
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -