番外編 03ハリーがロンの友人でいてくれて本当によかったとフレッドは思った。 ロンはすんでのところで助かったという。 ホグワーツにやってきたのは、毒を盛られて死にかけたという弟の見舞いだ。 ユーリと会えるかとちらと思ったが、世の中はそう都合よくは出来ていない。 弟とユーリが仲違いしているという話題はクリスマス休暇にハリーから聞いている。 彼女は案外頑固者で、怒らせると長引くというのはフレッド自身が五年生のときに体験していた。 「大変恐れ入りますが、少し声を落としてくださいます?安静の患者が他にもいるので」 ハリーとハーマイオニーがハグリットと一緒に出ていって、家族だけでロンのベッドを囲み随分話し込んでいたところだ。 そこに現れた校医は少し迷惑そうな顔をしていた。 「あっ、ごめんなさい…。ユーリが入院してたんだった…」 ジニーが口にしたその言葉に、フレッドは目を見開く。 「マダム、ユーリはどうですか?あたし、もう二ヶ月以上ユーリに会えてません…。退院はいつ頃ですか?」 (入院…?丸二ヶ月…) それは、フレッドが彼女からの返信を待ち続けた期間と一致した。 「まだ微熱が続いていますが、直に退院できる見込みですよ」 校医のその言葉に、ジニーがほっとして笑う。 フレッドは口がからからに乾いていたが、言った。 「…あいつ、入院してたのか?」 「え、ロンから聞いてないの…?あたし、ロンが教えてると――」 ジニーが自分を見てびくっとしたのをフレッドは目の端でとらえた。 「なんで…」 「風邪ですよ、寒さに弱い子です。ですが――」 校医は頭痛がするようだった。 「よく、わからなくなってきました。食事はとらない、喋りたがらない、届いた手紙にも無反応、なにに対しても無気力で…」 (ただの風邪が、二ヶ月も長引くわけねえだろ…) 反射的に動いていた。 フレッドは遠目に見えるカーテンで囲われたベッドへと突き進み――怒り任せにそのカーテンを開けた。 そして察する。 いつか振り切った『最悪の事態』は現実に起こっていたことだったのだと。 無気力に自分を見たユーリのその視線がやりきれず――怒りが強くなる。 (手紙を送ってただろ?俺はホグワーツにはいないんだ!…教えてくれなきゃわかんねえよ!) 無反応のユーリを肩で担ぎ、母親と校医の声を無視してフレッドは医務室から飛び出した。 ← | top | しおりを挟む | → |