番外編
魔女たちの密談
「どうだった?」


談話室に戻ってきたハリー、ロン、ハーマイオニーに気付いたラベンダーが声を上げる。
グリフィンドールの同級生が集まってくる中、ハリーたち三人は似たり寄ったりの苦々しい表情で首を横に振った。


「会えなかった。面会許可は出さないって、マダムが…」
「面会許可を出さない?」
「そんなに悪いの…?」


ネビルが尋ねると、ハーマイオニーが悲しげに頷く。


「もともと、マダムの元気爆発薬が効かない子でしょう?ユーリのお母さまが彼女のために開発した風邪薬も効果がなかったって…」
「…だからしばらく誰にも会わせずに面倒見るってさ」
「ザビニのせいよ!」


パーバティが美しい顔に思いっきり怒りを浮かべて声を張り上げた。
彼女は今し方、妹であるパドマから魔法薬学の授業中に起こったあれこれを聞かされ、それをグリフィンドールの同級生に展開したばかりだ。
ハリーたち三人以外の魔法薬学を履修していない面々もザビニのユーリに対する暴言の数々を知ったことになる。


「あいつ、弱ってる可哀想な女の子にブスだのちびだの――自分がちょっと整った顔してるくらいで調子に乗り過ぎ!」
「ハリーたち気づかなかったのか?同じ授業ずっと受けててさ」


シェーマスが信じられないとばかりに三人を非難めいた目で見つめると、ロンが眉根を寄せて反論した。


「僕らが悪いみたいに言うなよ!ユーリはずっとけろっとしてたじゃないか!」
「確かにユーリはそういう泣き言こぼすタイプじゃないって!アンブリッジにやいやい言われても気にならないって顔してただろ」


ディーンはそう言って掴み合いそうなシェーマスとロンの間に割り込んだ。
ハリーとネビルはその様子をはらはらと見守っていたが、女子三人は違う。
顔を突き合わせ、ひそひそやっている。


「ハーマイオニー、あなたもう無言術完璧でしょ?」
「まあね」


ラベンダーの問いに答えるハーマイオニーは無表情で自分の杖をいじり回していた。


「なにか使えるんじゃない?」
「わたし、『レダクト』は得意よ」


パーバティが杖を握ったほうの腕を準備体操のように回しながら言った言葉にネビルが悲鳴を上げた。


「なにを粉々にするの!?」


女子三人はネビルの悲鳴をほとんど無視して続ける。


「確かにパーバティのレダクトは見事だけど――あんまり派手になりすぎるのは駄目よ。ユーリが嫌がるわ」
「じゃあ――」
「ちょっといい…?」


ハリーが割り込むと、女子三人は冷めた目で彼を見つめる。


「それ、なにかの犯罪的な相談…?ザビニに対する報復…?」
「参加したいなら混ぜてあげるけど?」


話を遮られたラベンダーが半ば挑むように寄越した返答に、ハリーは震え上がった。


「そ、そういうの、ユーリ嫌がると思うけど――子ども扱いされるのが嫌だって言ってたことあるよ」
「『子ども扱い』?」


パーバティはハリーを鼻で笑って続ける。


「いい?わたしたちはユーリを『女の子扱い』してるの」
「いや、子ども扱いにせよ女の子扱いにせよ、ユーリは嫌がるだろうって――」
「あー、うるさい!」


ラベンダーが大声を出したことで、ハリーは完全に怯んで小さくなる。


「ばれなきゃいいのよ」
「そうよ!」


ハーマイオニーが冷静そのものの口調で言うと、ラベンダーがそれに同調した。


「だいたいハーマイオニーがいるのにばれるような計画立てるわけないでしょ?この子がマリエッタ・エッジコムにかけたあのゲスい呪いのこと、ユーリ知らないんだから!」


ラベンダーがなぜか誇らしげにハーマイオニーを指さして言った。
マリエッタ・エッジコムの顔面に『密告者』と浮かび上がる吹き出物の呪いを贈ったのがハーマイオニーだった。


「『密告者』はマリエッタと運命を共にすることになるから覚悟してね。わたし、ユーリに嫌われたくないの」


男子全員が、微笑みながら言ってのけたハーマイオニーを青ざめながら見つめて黙った。
女の子三人はようやく静かになったと言わんばかりの顔でひそひそ話に戻っていく。


「あの呪い、またやったら?マリエッタのときは正直引いたけど――ザビニは男だしね」
「あんまり賢くないと思うわ。学年も寮も違うマリエッタはDAに来なければユーリと顔を合わせる機会がなかったけど、ユーリが退院してきたらザビニとは魔法薬で必ず会うもの」
「…服に隠れるところにする?」


女子たちが声を極限まで落とし、なにかの相談をし終えてはしゃぎだした。


「ハーマイオニーは味方にしとく分にはこの上なく頼もしいわね!」
「ミス・優等生のときどきぶっとんでるところ嫌いじゃないわよ」
「まあね、任せておいて」


三人がくすくす笑いあっている光景は一見美しくもあったが――。


「…魔女って怖すぎ」


シェーマスが本当に小さく呟いた言葉に、男子全員が心の中で頷いた。




*****
ザビニがどうなったかはご想像にお任せします。笑
『ザビニはなんだったんですか?』というコメントをちらほらいただきましたが、彼は『夢主のことを可愛がってる女子組共通の敵』として投入したに過ぎないモブです。笑
作中でハーマイオニーがパーバティ、ラベンダーと仲良くしている描写、多分なかった…
女の子の同級生のお友だち多分いなかった…
ラベンダーとなんか、恋敵として最高にぎすぎすした関係になっちゃいましたし…(ロンのせい/しかも映画版に至ってはラベンダー死ぬし…)
仲良くしているグリフィンドール三人娘を見たかった!
そして見れなかったので書きました。
敵の敵は味方(?)みたいな関係でこの三人は一応結託しました・ω・;


ハーマイオニーがマリエッタにかけた呪い、引かなかった女の子いる…?
彼女のせいで退学させられそうになったにしても、おそらく一生残る顔への呪い…д
りらはどんびきしました。
なので騎士団編ではスルーしております。笑


ところでザビニの容姿の話。
BELLE STORYに横柄なイケメンがほしいなーと思ったりらは彼にその役を割り当てたのですが、ハリーによればザビニは『頬骨が張り細長い目がつりあがった』容姿をしているようです…
イケメン…?
ですが六巻のホグワーツエクスプレス内でパンジーが『ザビニに顔を気に入られるのはとっても難しいってみんな知ってる』とか言ってるのでザビニは本当にイケメンで、ハリーはなんかそれを認めたくないってことにしておきます。笑
そうでもなきゃザビニが『いくら美人でもジニーみたいなのはごめんだ』的なこと言ってるコンパートメントに乗り込んでいって『ジニーにも選ぶ権利あるから!』って言いますよ、りらは…!



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