番外編
03
ユーリはジョージに頭をわしゃわしゃ撫でられて、にこっとした。
可愛い。
欲目だとしても、可愛い。
見つめられていることに気がついて、ユーリはフレッドをきょとんと見上げた。


(もらおうかな)


じっと見つめて、フレッドはそう思った。
からかい混じりのチークキスは過去に二回。
日本人の、スキンシップが苦手な彼女に『本当のキス』をしたことがある男がいるとは思えない。


(一番最初は俺でいいだろ?)


本気で嫌がられたときにも、いいわけができるキスだ。
『しばしの別れの餞別』に。
黙ってユーリに歩み寄って、逃げられないように上腕をがっちり掴んだ。
顔を近づけると、ユーリが目を瞑る。
それを見て、思い出すことがある。


(俺、思ったんだよな。あのパーティーの晩――目も瞑らないこいつとはそういう雰囲気にはなりようがないって)


その答えはまだわからないけど。
彼女のくちびるに、本当に軽くキスをした。
顔が離れると、ユーリはゆっくり目を開けて、疑問符だらけの顔でフレッドを見た。


(ほんと可愛いよ、お前って)


フレッドは満面の笑みでぱっとユーリを解放し、二、三歩弾むように後ずさる。


「またなユーリ!餞別にもらっとく!」


(キスされたって気付いてねえんだもんな!)


なにやら楽しくなってしまって、フレッドは笑いながら駆け出した。
それを追ってくるのは彼女の叫び声だ。


「う、うわあああ!」


ジョージを引っ張って走りながら、笑いは一層激しくなる。


*


「なんでユーリ叫んでたんだ?お前なにした?」
「キス」
「やるー」


ジョージが口笛を吹いてこぶしを突き出したので、フレッドはごつんと自分のこぶしをジョージのそれに押しつけた。


「色気もへったくれもねえ声だったな」


笑いがおさまらないとはこのことだ。
にこにこしているフレッドに、ジョージも笑う。


「そこがユーリのいいところだ。まあ、弟から兄上にご忠告申し上げますけどね――ユーリを攻略する気なら、お前はもっとわかりやすくしたほうがいいぞ」
「うっせ。行くぞ!」


フレッドはジョージに手で合図して走り出した。
胸糞悪い女教師への復讐を兼ねて、自分たちの輝かしい未来のために。
ユーリ・アシハラに誓った、思いっきりど派手な華々しい旅立ちの準備の時間だ。



***
騎士団編フレッド視点です。
ようやく(?)自分の恋を自覚したフレッドでしたー
まだ『他に理由のあるキス』で逃げ道作ってますけどね!
ドラコルートくるかもしれないし…笑

リーに夢主の肩を抱かせておいたんですが、りらちょっとそれ忘れきってまして…(騎士団編長かったからね…)
年明けのリクエストでリーのことを思い出させてくださったみやさまありがとうございました・ω・*
リーは夢主が『双子にとって一番はリーだよ』って言ったことに『この子、いい子だ…!』と感動してしまったんですね…
フレッドも一番の友だち・リーの思惑はあっさり見破っています。笑
リーの見せ場はクィディッチ解説時なんでしょうけど夢主は医務室待機中なのでリーのいいところは思いの外書けなかったのが本当に残念…

夢主が目を瞑ったのは頭突きされるとか思ったせいなんですけど、フレッドの勇気を後押しはしたみたいですね笑

1ページ目>>決断、課題*04
2ページ目>>過去と未来*01
3ページ目>>過去と未来*09




topしおりを挟む
×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -