番外編 02「もっと本気で謝ってよ!」 「カス!」 「ユーリが風邪で寝込むことになったらあなたのせいですからね!」 「んだよお前ら!?」 結論から言って、ユーリは負のオーラを纏わせたままハリーに連れ出されていった。 女子から次々に非難を浴びせられて、シェーマスは唖然としている。 「…体調不良ってだけなのかな」 しばらく考え込んでいたネビルの小さな呟きを聞きつけ、女子三人はシェーマスを罵倒するのをやめた。 「ユーリって寒いの苦手だし、風邪を引きやすい性質だってわかってるけど――今まで、ああいう風になったことない気がする…」 「確かに、シェーマスのことはとっくに許してるような感じに見えたな」 「むしろ、シェーマスのことなんて気にしてる余裕ないって感じ?」 ロンの一言に、シェーマスはぶすっとする。 こめかみをさすり、考え込みながらのラベンダーが口を開く。 「体調不良以外の理由がありそうってこと…?」 「あー…」 そのとき、パーバティがなにかを思い出した顔で人差し指で頬をかいた。 「あのね、ユーリとハリーがいる場では言い出しづらかったんだけど」 「ハリーも?」 「うん…。休暇中に妹から聞いたんだけど――クリスマス・パーティーで騒動があったんでしょう?」 パーバティはパーティー参加組を見た。 ハーマイオニーと、ジニー・ウィーズリーのパートナーとして出席していたディーンをだ。 「なんでも、ユーリとマルフォイはまたいとこ同士で――お互いをファーストネームで呼び合う親密さだったとか…?」 その一言で、ロン、ラベンダー、ネビル、シェーマスが悲鳴にも似た声をあげた。 「ユーリがあのドラコ・マルフォイと親戚!?」 ラベンダーの絶叫に、ハーマイオニーが渋々頷く。 「…ユーリとマルフォイのお母さんたちが従姉妹同士なのよ」 「僕はそれ知ってたけど、なんでファーストネームで呼び合う!?いつの間にそんなに仲良くなったっていうんだ!」 ロンの言葉にハーマイオニーが更に続けた。 「ユーリの性格知ってるでしょう?マルフォイをかばってやったのよ。彼、『パーティーに招待されてもいないのに参加したくてその辺うろついてた』ってフィルチに捕まってやってきて、晒し者にされてたから」 「まあ、レイブンクロー生たちの興味はそのあとの出来事に集中してるみたいだけどね…」 「そのあと…?」 シェーマスの恐る恐るの問いに、パーバティは物憂げだ。 「ユーリとハリーとマルフォイが会場からいなくなったらしいの。しばらくして、ハリーだけ戻ってきたらしいけど――ユーリとマルフォイは戻ってこなかったって」 「ああ、なんだ。それは大したことじゃないよ」 ロンがほっとして言う。 彼はハリーから、その間になにをしていたのか聞いていた。 ハリーとユーリはマルフォイとスネイプの会話を盗み聞きしていたのだ。 「大したことじゃない?」 パーバティは美しい顔に怒りを浮かべて、ロンを軽く睨んだ。 「噂ではユーリを巡る戦いでハリーがマルフォイに負けたらしいってことになってるわよ!」 うわあ。 全員がそんな顔で黙り込んだ。 それが盛大な勘違いだというのはわかっている。 しかし、ゴシップ好きのホグワーツにおいて――その噂はどこまで回るのだろう。 「噂は噂だよな…?」 シェーマスは周囲にだけ聞こえる小さな声で囁いた。 「言いたくないけど、マルフォイって顔はそこそこいいぜ…」 ネビルもすっかり気を落としてシェーマスに続く。 「うちの学年のハーマイオニーの次ってマルフォイなんでしょ?」 「うわ、嫌みー。顔も頭もいいってわけ?」 「金持ちだし…」 「まあ、家名はしおれかかってるけどさ」 「ストップ、ストーップ!」 同級生のひそひそに若干怒りながら口を挟んだのはハーマイオニーだ。 「いくらマルフォイがちょっとした優良物件に見えたとしても、それにひっかかるユーリじゃないわよ!」 「そうも言い切れないんじゃねえの?あいつらが親しげだったっていう事実があるんだし、ユーリって多分マルフォイのこと『可哀想なケナガイタチ』くらいに思ってるよ。優しいから…」 ハーマイオニーがぎらぎらした目でシェーマスを睨みはじめたので、彼の声は段々小さくなっていく。 「はあ!?そんなことあっていいわけないだろ!」 シェーマスの指摘に声を荒らげたのがロンだ。 「マルフォイとどうにかなるくらいならユーリはハリーとくっつくべきだろうが!」 ロンのその言葉に、全員が目を丸くした。 ラベンダーとパーバティに関して言えば、一拍置いたあと瞳を輝かせはじめている。 「ユーリとハリーってやっぱりどうにかなる可能性あるのね?」 この女子二人は長らく、ユーリ・アシハラの健気で密かな初恋を応援したいと考えていた。 ユーリに言わせれば不名誉な勘違いではあるが、パーバティとラベンダーはそうは思っていない。 「まあ、ハリーは単純にユーリの顔が好きだし…」 ロンがラベンダーに答えてもごもごと言った言葉に、一同は一斉にある女子生徒を思い浮かべた。 昨年度ハリーのガールフレンドだったチョウ・チャンだ。 チャンは東アジア系の血をうっすら感じさせる容姿をしていて、彼女たちはどことなく――。 「ああ、ああいう系…」 ディーンが静かに言った言葉にロンが頷く。 「だいたい、ユーリの性格のよさは折り紙つきだろ?僕はハリーにはユーリみたいなのが似合うと――」 「やめてよ!」 ロンの言葉を遮り、ハーマイオニーがついに大爆発を起こした。 「ハリーでもマルフォイでもないから!ユーリはいつか王子さまみたいに完璧な男性を連れてくるわよ!あんなに可愛くて性格のいい女の子なんだから!」 「おい、ハリーのことまで否定すんなよ!」 そこから、ロンとハーマイオニーがぎゃーぎゃーと談話室を巻き込む舌戦を繰り広げはじめる。 若干冷静な面子は『ユーリ・アシハラがおかしい理由』という本題から話がだいぶそれていることに気づいていたが――この二人の言い合いに割り込む気力もなく、呆れて佇むことしか出来ない。 *** わちゃわちゃするグリフィンドール同級生組が書きたくて…;ω; 1と2の間に悲嘆の底*02が入ります。 ハーマイオニーの忠告どおり、クリスマスパーティーでの夢主とドラコの一件は噂になってしまってます…笑 りら的同級生キャラ考察 ディーン>>懐の広さ、面倒見のよさ同級生No1。夢主はディーンが監督生で間違いないと思っていた。 シェーマス>>やらかし系可愛い男子。笑 夢主のことを天使とかだと勘違いしてる勢>>ハーマイオニー(ガチ)、ハリー(ガチ)、ネビル ← | top | しおりを挟む | → |