番外編 謎のプリンス-夏の贈り物*06(フレッド視点)「どうだった?」 帰ってきた双子の片割れに気づいてフレッドはそう声を上げた。 ジョージはにこにこ笑っている。 「楽しかった。そっちは?」 「うーん…。こっちはどうも駄目らしいぞ」 「は?」 フレッドが『盾の帽子』を人差し指でくるくる回すと、ジョージは血相を変えて近づいてきた。 「お前、この前の『酔っ払い』みたいなことしたんじゃねえだろうな?やめとけって言っただろうが、あのときリーザが起きてたら、お前惨殺されてたんだぞ」 「してねえよ」 フレッドはむすっと答えた。 「どうやら俺のライバルはリーザらしい」 作戦コマンド『ガンガンいこうぜ』を選択したフレッドのユーリに対するすべての『攻撃』は、ことごとくかわされてしまった。 フレッドはかなり露骨にアピールしたつもりだったが――ユーリはまるで気がつかなかったし、指輪を見ても本気で感心したような態度を見せただけで、照れすらしなかった。 ルーピンの話題には驚くほど食いつきがよく、極めつけが彼女の母の話題だ。 「あいつ、リーザくらい自分に優しくて、頭がよくて、美形が好みだってさ」 「うわ、そんなやつこの世にいるの?」 ジョージは思わず笑う。 「でもなんか納得したかも。あいつディゴリーやデイビースみたいな顔がいい連中と喋ってても照れもせずににこにこしてたし、ミス・デラクールに対しても物怖じしないもんな。あのリーザが生まれたときからそばにいて、美形に耐性あるんだ」 「…あいつ、あそこまでマザコンだったっけな?」 フレッドは自分が感じている奇妙な違和感を口に出した。 ジョージは首を傾げる。 「いや、それは知らんけど…。でも『ママ』が一番好きなのは仕方ねえだろ?あいつにとってはたった一人の家族だろうしさ」 「…俺もジョージが一番好きだ」 「ユーリに張り合って誤解を招く発言をするんじゃねえよ。だいたいお前、意地張りすぎてわかりづらくて去年あいつにぜんっぜん意識されなかったからこれからは露骨に行くって決めたんだろうが」 ジョージがフレッドを小突くと、フレッドはそれを鬱陶しそうに追い払う。 「とりあえず、この問題から一時撤退するわ」 「一時撤退?まあそれもいいんじゃねえの。あいつ可愛いけど――俺から言わせると子どもっぽすぎる。成長するまでしばらく待てば?ちびちゃんに手を出そうなんて男はそういないだろうし」 からかい笑いをするジョージを、フレッドはしげしげ眺めた。 「俺、ほんとにジョージと女の趣味までかぶってなくてよかったわ。片割れと血みどろの争い繰り広げるなんて惨事にならなくてさ」 「俺は可愛い系より美人が好きだ。…あー、飲みすぎた。寝るわ、おやすみ」 「おう」 ジョージが出ていったあと、フレッドは作業机の前で大きく伸びをして時計を見た。 存外遅い時間だ。 自分も自室に引き上げて、眠るべきかもしれない。 今日はなんだか精神に多大なダメージを食らった気がする。 (あそこまで勘が鈍いやつだとは思わんかった) フレッドはユーリが子どもっぽい性格の女の子であることはわかっているつもりだったが。 (あいつの一個下のジニーにまでボーイフレンドがいるんだぜ?ハリーもチャンと付き合ってた) 子どもとしてもそれなりの年頃だ。 (あいつのこと、察しが悪いなんて思ったことねえんだけどな…) 首筋をさすりながら、呆れ笑いをしたときだった。 フレッドはある可能性に考え至った。 (あいつの『ママ』より素敵な人はそういない。俺、あいつに予防線張られてんじゃねえの…?) フレッドはしばし呆然とした。 ***** フレッド、正解!ごめんね、夢主がえらい難儀な性格してて… 夏の贈り物*06終了後の双子の会話になります。 これを踏まえて、フレッドは作戦コマンドを『ガンガンいこうぜ』から『やきもちを焼かせてみよう』に変更したわけですが(07のベリティ)。 この夏のフレッドの戦いリスト↓ ・俺の部屋来る?作戦→不発 ・ホグワーツに戻るきみに会えなくなる→なぜかママの話にされる ・ママより素敵な人は見つかりそうにない→傷つけられる笑 ・『俺は別にお前のママや兄貴になりたいわけじゃない』→わかってるとか言ってるけどどう見てもわかってない ・バラの指輪→本気で感心してるだけで照れてはいない ・フレッドに枯れない魔法は難しいからやっぱりママに頼めばよかったと思ってたとか傷つくことを暗に言われる ・ルーピンに会った→「えーずるい」どうみても自分よりルーピンのほうが好きです本当に(ry ・ベリティを褒めてみる→大した反応は返ってきませんでした(夢主も思うところはあったわけですが顔には出してないので) ← | top | しおりを挟む | → |