BELLE STORY+
02
「わたしがいない間、魔法界で起こっていたことについては調べる気が起こらなかったけど――ルーピンと再会して少し話して、裁判記録を漁ったのよね。そしたらあんたの名前を見つけたわ」


セブルスはぎくりと身を固める。


「デスイーターだったのね。闇の魔術に傾倒しているところを買われて、デスイーターになったのかしら。あんた、父親はマグルだったもの」
「なにが言いたい」


不快そうに眉をひそめるセブルスにも、リーザは笑顔のままだった。


「どうしようもない馬鹿のまま、道を踏み外したのね。リリーとの道が重ならなかった」


リーザの言葉はセブルスの心をえぐる。
学生時代、リーザとセブルスの最後の会話はリリー・エヴァンスについてのことだった。


「にやにやするのをやめろ」


セブルスは怒りで震える声だったが、リーザはまったく怯まない。


「ダンブルドア側に寝返ったのよね。リリーが殺されてようやくあいつがやってることがおかしいって気付いた?」
「一番後悔してるのは私だ!あなたは逃げたんだ――どうこう言われる筋合いはない!」
「そうよ、逃げたわ。だから今度は逃げない。わたしが死ぬときは絶対にあいつを道連れにするの」
「幸せに生きたくて娘を産んだんじゃなかったのか?」
「あいつの存在は娘の人生を脅かす。父も母も殺されたんだもの――わたしが復讐を企てない理由はないわ」
「尻尾を巻いて逃げ出したあなたが?」


セブルスの嘲笑にも、リーザは眉一つ動かさなかった。


「この二十年近い年月の間に、わたしも大人になったの。母になった。ダンブルドアに守られ続けるわけにはいかないのよ。あんたも大人になったみたいだと、わたしは思うわ」
「なにを――」


リーザはセブルスに笑いかけた。


「娘がホグワーツにいる間も、わたしたちはよく手紙をやり取りするんだけど。彼女が一年生のとき、こんな手紙が届いたわ。『友だちが、学校の先生のことを疑っている。その先生はハリー・ポッターのことを嫌っているから、彼のことを殺そうとしている悪人だと友だちは思っているようだ』ってね。娘はこう考えた。『学校の先生がそんなことするわけないのに』」


セブルスはユーリのことをお人好しだと思った。


「ルーピンの話では、ハリー・ポッターは父親そっくりらしいものね?あんたが嫌うのも無理ないわ。でもね、娘はお人好し過ぎるけど、このことについては娘の案を採用する」


リーザは尊大な態度で腕を組む。


「あんたはリリーが死んでようやく、デスイーターになるなんていう自分の浅はかな行動を後悔した。それで、リリーの息子を守ると決めた。それならダンブルドアがあんたをホグワーツに置いていることに納得できるもの。予言の話はダンブルドアに聞いたわ」
「あなたに私の心は読めないはずだ――」
「心は読めないけど、あんたのパトローナスは鹿だろうって思うわ。リリーはバンビが好きだった」


誰も知らないはずの事実を見事に言い当てられ、セブルスは凶悪な顔でリーザを睨む。
その顔を見てリーザはますます笑う。


「ばらされたくないでしょ?あんたとリリーが幼馴染だって、ほとんどの人が知らないものね。リリーの息子にリリーを重ねて、ジェームズ・ポッターそっくりの男の子を嫌いながらも守ってるなんて――」
「私とリリーのことはあなたには関係がなかったはずだ!嬉々として人の心をえぐるあなたのその禍々しい性格、どうにかならないのか?蛙の子は蛙か――」


その言葉でリーザの表情が一変した。
嘲笑を浮かべていたリーザの瞳が、暗がりの中で炎に照らされている。
その色が普段と違う鈍い赤に輝いていることにセブルスは気付いた。


「今度それ言ったら殺すわよ」


それからリーザはぱちりとまばたきして、にっこり笑う。
紫の瞳だ。
セブルスは、この状況でここまでの清らかな笑顔になれるリーザが恐ろしくてたまらなかった。


「さあて、スネイプ。わたしがあんたの日本への訪問を許した理由、わかる?」
「…お互いにダンブルドアの命令を断れなかっただけだと推察するが」
「少し違うわ。わたし自身があんたのことをデスイーターではないと確信していること――そしてあんたにはわたしと一緒に、ユーリを守ってもらおうと思っているの。それでユーリのいるこの家にあんたが来るのを許したのよ」
「は?なにを――」
「ジェームズ・ポッターの息子を守れるなら、わたしの娘にもそうしてくれていいでしょう?あんたはわたしに弱みを握られている」


(なんと性格の悪い――)


セブルスは内心毒づいて、それでも黙っていた。
闇の帝王を思わせる、あの赤の瞳に睨まれるのは恐ろしい。
彼女が爆発を起こすと未曾有の大惨事を引き起こすことを、あの年の学年末の事件で目の当たりにしてもいる。


「まずは娘の風邪の予防薬ね!最近開発したのだけど、飲ませるタイミングが難しくって。わたしがホグワーツに出向くわけにはいかないもの」
「…先ほどあなたはホグワーツに乗り込んでくる気があるような口ぶりだったが」


脱狼薬の調合をしにホグワーツに出向いてもいい、というような趣旨の発言をリーザはしていた。


「まさか!嘘も方便。娘にわたしの行動を不振がらせるわけにはいかないわ。あの子が健やかに過ごしていくためなら、わたしはなんだってやる」


このリーザの提案を、セブルスは断れないのだ。
更なる重荷を背負わされた気分になって、セブルスは指で眉間を押さえた。


*
夢主の性格悪い第二弾。
アズカバン編-もう一人のいる夏休み*6で子世代夢主が寝てから、スネイプ先生とママはこんな話をしていました。
親世代夢主はスネイプがどうしてダンブルドア側に寝返ったのか、彼女なりに結論を出してそれを信じて行動しています。
一応賢い女性であるという設定なので、今でもヴォルデモートの腹心かもしれないスネイプに子世代夢主が自分の娘であると明かすなんて馬鹿な真似はしません。

topしおりを挟む
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -