番外編
02
「最初の集まりの日時と場所は決まり次第伝言を回すわ。それと――」


場を取り仕切るハーマイオニーは一同に向かってそう言うと、躊躇いがちに羊皮紙と羽ペンを鞄から取り出した。


「ここに全員名前を書いてほしいの、誰が来たのかわかるように。それとわたしたちのやろうとしていることは言い触らさないと約束してもらいたい。わたしの提案に賛同出来なかったならもう集まりに来てもらわなくてもいいけど、この活動のことはアンブリッジに知られたら困るの。署名がその約束になるわ」


フレッドが羊皮紙に手を伸ばし、嬉々として名前を書いた。
ジョージがそれに続き、ザカリアスに羊皮紙を渡したときにザカリアスは羊皮紙の一番上に載っている名前に気がつく。


「ユーリ・アシハラも来るんだ」
「なんか文句あるのか?」


フレッドがザカリアスを素早く睨むと、ザカリアスは嘲笑を作った。


「はあ?そんなこと言ってねえだろ」


先ほどのフレッドの言葉の意趣返しのつもりらしい。
人をいらいらさせる笑い方だ。


「じゃあなんだよ?」
「純粋に喜んでる。寮が違うと話す機会も滅多にない」


さらさら署名をして、ザカリアスは羊皮紙をアーニー・マクミランに回した。
ハッフルパフ生たちが次々に署名をしていく中、ザカリアスの発言に完璧に面食らったグリフィンドール勢が固まってしまっている。


「あいつになにか言うことがあるなら、まず俺らを通せよ」


いち早く意識を取り戻したフレッドがそう言ったとき、どういうわけかザカリアスだけではなく、ハッフルパフの五年生一同が挑むような視線を双子に向けた。


「なんでだよ。ぎゃあぎゃあ喚くな、鬱陶しい。まあ、さすが『グリフィンドールの番犬兄弟』といったところか」
「グリフィンドールの――それなに?」


眉根を寄せて尋ねたハーマイオニーにザカリアスは笑って答える。


「そこの人間ブラッジャー二人組の新たなニックネームだ。ユーリ・アシハラの両脇固めて睨み散らして――邪魔すぎる」
「「はあ!?」」


ばっと双子が立ち上がるのと、ハンナ・アボットがザカリアスの腕を引っ張るのが同時だった。


「ザカリアス、行くわよ。じゃあ、決まったら知らせてね」


ハンナがハーマイオニーに愛想よく手を振って、ハッフルパフの五年生たちがホッグズ・ヘッドから出ていく。
しばらく呆けていたハーマイオニーは羊皮紙の所在を確認しようと視線を彷徨わせ、チョウがその友人マリエッタ・エッジコムとなにかを話し合っているのを見つけた。


「マリエッタ、本当に難しく考えすぎないでよ。ユーリのことが心配だって言うならあの子本当にいい子よ。わたしが保証する」
「ミス・エッジコム、そうですよ」


チョウの発言を擁護しているのがテリーで、マリエッタは渋々署名をするとチョウを引っ張るようにホッグズ・ヘッドから出ていった。
テリーはハーマイオニーに羊皮紙を手渡すと、友人たちを追いかけていく。


ホッグズ・ヘッドには驚いて固まったままのグリフィンドール生数人だけが残された。


*


「あいつらみんな、どういうことだ?」


フレッドの言った『みんな』は、ハッフルパフの五年生集団とチョウ・チャン、そしてテリー・ブートを指している。


「チャンはまだいい。ユーリと知り合いなんだろうさ、ディゴリー関係で」
「多分ね」


ハリーがフレッドに同意して頷く。


「じゃあテリー・ブートは?」


ロンが周囲に尋ねたとき、素早く答えたのがハーマイオニーだった。


「彼は去年、ユーリをダンスパーティーのパートナーにお誘いに来た男の子よ」


ハーマイオニー以外が盛大にどよめく。
特に驚いているのがフレッドだ。


「あいつ、誰にも誘われてないとかなんとか――」


しかし、よくよく思い返すと彼女は『そんなところだ』と言っていただけだ。
はっきりそう断言していたわけではない。


「お断りしたことを言い触らす子じゃないわ。顔見知り以下だったから断っちゃったって、少し気にしていたし…」
「ロジャー・デイビースが誘いに来たときにパーバティが言ってた『四年生のレイブンクロー生』ってあいつか!」


ロンが思い出して言った言葉に、ハーマイオニーは頷いた。


「ユーリがどんな子かちゃんとわかってるから擁護に回ってくれたのよ」


ハーマイオニーは胸を張って、満足そうに笑っている。


「じゃあ、ザカリアス・スミスは?あいつもユーリの知り合い?」


ザカリアスは感じの悪い男の子だった。
ハリーが尋ねると、ハーマイオニーは表情を一変させる。


「わからない、薬草学で話しているところも見たことないし。ハッフルパフの監督生二人に声をかけたのはユーリなの。でもザカリアスはユーリが誘ったわけでもわたしが誘ったわけでもないわ。アーニーとハンナに今日のことを話してるとき、たまたまそばでそれを聞いてて着いてきただけ」
「こんなこと言いたくないけどさ、」


ロンは声を潜めて切り出した。


「ユーリって『あの人』の孫だぜ…?それだけで十分不利なんだ。大して話したことない奴らがこぞって気にかけるほどの美少女ってわけでも――」
「そこまで言うことないだろ」
「黙ってよ」


ロンの発言はフレッドとハーマイオニーの鋭い声に遮られる。
ハーマイオニーはロンを軽蔑の目で見て、咳払いをしたあと続けた。


「とにかく、ユーリは内側を評価される子よ。ザカリアス・スミスだってクィディッチの選手ならユーリに手当てされたことがあるのかもしれない。補佐で医務室にいるわけだし」
「秘密の多い子だよね…」


ハリーがぽつりと言った言葉に、全員が内心で頷いていた。
彼女について、自分たちは知らないことが多すぎる。
彼女自身が知らなかったり、秘密にしておけと指示されていたり。
だいたい人のことを考えて行動するので、口の堅い女の子だ。


「案外敵が多いぞ」


ジョージがフレッドだけに聞こえるにやにや声で言う。


「黙っとけ」


フレッドは顔をしかめて、ジョージの足を踏んだ。



*****
夢主の知らぬところでも物語は動いています。


ザカリアス・スミスは原作で見る限り嫌な感じの男の子ですけど、それも仕方ないかと。
『ハリー・ポッター』シリーズは主要人物以外が本当に蚊帳の外です。
ザカリアスは五巻のクィディッチ戦開幕前にクィディッチ選手だと断定されてるので、三年生、もしくは二年生からチームでプレイしてます。
長らくチームのキャプテンとして慕っていたセドリックの死はザカリアスに大きな影響を与えてるんじゃないかな。
ハリーより優秀だった(一般的に)セドリックの死の真相を知りたいというのはハッフルパフ生なら自然じゃないかとりらは思うわけです。
オリキャラの『リーザ』の存在でハッフルパフはヴォルデモートの復活を信じているので、セリフをちょいちょい改変しましたが、大筋は変えてない、つもり…。
クィディッチ選手なら優勝杯ホルダーの双子のこともハリーのことも好きじゃないでしょうしね・ω・;




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