番外編
ホッグズ・ヘッドで
01
※夢主はいません


「えー」


ハーマイオニーは緊張でいつもより声が上ずっていた。


「それでは――えっと――みなさん、どうしてここに集まったかはわかっているでしょうが、ハリーの考えでは…」


そのときハリーが素早くハーマイオニーを睨んだので、ハーマイオニーは言葉を切ってまた口を開く。


「…『わたし』の考えでは――いい考えだと思うんだけど、アンブリッジの教えるクズのような『闇の魔術に対する防衛術』ではなく、本物の防衛術をハリーに習いながら自主的にやってはどうかと提案します。なぜなら、」


ハーマイオニーはそこで大きく息を吸い込んで一呼吸した。


「…なぜなら、ヴォルデモート卿が戻ってきたからです」


ヴォルデモートの名を聞いて、集まったほとんど全員がびくりと身をよじる。


「とにかく、そういう計画の話し合いのためみなさんに集まってもらいました。どうやってやるかを決めるため――」
「セドリックはどうして殺されたんだ?『あの人』からポッターを庇ったのか?」


ハーマイオニーの言葉を遮って声を上げたのがザカリアス・スミスだった。
ロンは眉根を寄せてザカリアスを見ている。


「お前誰だよ?」
「ザカリアス・スミス。俺はそれが一番知りたい。セドリックは優秀だったんだ」


ザカリアスのセリフの言外の『ポッターなんかより』を、ハリーは正確に読み取った。


「学年末にダンブルドアが話したはずだ。それで納得してないならなにを言っても無駄だし、僕は誰かに信用してもらうために午後一杯を無駄にするつもりはない」


ザカリアスはハリーの言葉に眉根を寄せる。


「ダンブルドアが話したのはセドリックが『例のあの人』に殺されたことと、ポッターがホグワーツにセドリックの亡骸を運んできたことだけだ。詳しいことは話さなかった。知りたいことはなにも話してもらってない――」
「ヴォルデモートがどんな風に人を殺すのかをはっきり聞きたくてここに来たなら生憎だったな」


ハリーはきっぱり言った。


「僕はセドリック・ディゴリーのことを話したくない――わかったか!そのために来たならすぐ出て行ってくれ」


半ば怒鳴り散らしたハリーの言葉を受けても席を立つものはいなかった。
ザカリアスでさえハリーをじっと見つめたまま黙っている。


「えっと、話を戻してもいい?」
「待って。あなたが守護霊を創り出せるって本当?」


ハーマイオニーの言葉にそう反応してハリーに問いかけたのがスーザン・ボーンズだった。
スーザンは魔法省の高官の叔母から夏の懲戒尋問の話を聞いたのだという。
ハリーがそれを肯定すると、一同から賞賛の声が上がった。


「校長室にある剣でスリザリンの怪物『バジリスク』を倒したのがきみとユーリ・アシハラだって話は本当か?先学期校長室に行ったとき、肖像画の一つが僕にそう言ったんだ…」


レイブンクローのテリー・ブートが尋ねると、ハリーは少しだけ言い淀んだ。


「――まあ、そうだね。間違ってない」


先ほどよりも大きな賞賛の声が上がったのは無理もないことだった。
あの年、『秘密の部屋』事件が解決しなければ学校は閉鎖に追い込まれる局面だった。


そこから、ネビルとチョウがハリーの偉業を挙げ連ねた。


「ちょっと待って、聞いてくれ」


ハリーが言うと、みんなたちまち静かになる。


「僕――なにも謙遜とか、そういうわけじゃないんだけど――僕は随分助けてもらってそういういろんなことをした…」
「ドラゴンのときは違う。助けはなかった。あれは本当にかっこいい飛びっぷりだったよ」
「うん、それは、まあね――」
「夏休みにディメンターを撃退したときも、誰もあなたを助けたりしなかったでしょう?」
「まあ、助けなしにやったことも少しはあるよ。でも僕が言いたいのは――」
「のらりくらり言ってさ、そういう技を俺たちに見せる気はないってこと?」


ザカリアスが厳しく割り込むと、ロンが大声を出した。


「いいこと教えてやろう――減らず口叩くな!」
「はあ?」


ロンはザカリアスの『のらりくらり』に苛立ったようだが、ザカリアスは怯まない。


「俺たちはポッターに防衛術を教えてもらうために集まったんだぜ?でも、そのポッター自身が実力じゃないって言ってんじゃん」
「んなこと言ってねえだろ」


フレッドが唸るように反論した。
ザカリアスは唇を尖らせていたが、ジョージがゾンコの紙袋からなにやら危険そうな金属の道具を取り出して脅すので不貞腐れた顔で黙った。




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