もしもシリーズ
夢主が親世代時間軸にいたら
※日本贔屓の日本語ペラペラのアストレイアが日本人マグルと幸せな結婚を果たし、日本人マグルの父そっくりの夢主が誕生しています


***
(リーマス視点)


「リーマス、大丈夫…?」


満月の翌日だった。
怖々、という風なのを隠さずに言う同級生のユーリ・アシハラに、リーマス・ルーピンは曖昧に笑うしかない。


(気づいてるなあ…)


自分が人狼であることはおいそれと告白できないし、向こうも確信を持ちながら聞けないのだろう。
いや、聞かないでいてくれると言ったほうが正しいかもしれない。
彼女は優しい女の子だ。


「うん、大丈――」
「おいちびっこ!」


ユーリと僕の間にさっと割って入った人物が一人。
シリウス・ブラック。
僕の親友だ。


「あっち行ってろ!」
「小さいって言わないで。わたしのほうがシリウスより精神的に大人だもん!」


ユーリはむすっとして、それでも全てを察しているかのように駆けていく。
シリウスは僕が人狼だということをユーリに悟らせたくなくて、満月の翌日の傷だらけの僕から彼女を遠ざけようとした。
ユーリは母親が癒者らしく、癒術に興味を持っているようだ。
その彼女が、僕の傷の秘密に気づくことを危惧しての発言で、シリウスが僕を思って行動してくれているのはなんとなくわかるが、言い方がまずい。
駆けていくユーリを見送って、シリウスは半笑いで僕を見た。


「どこがだ?」
「ユーリをあんまりいじめるんじゃないよ」


はあとため息をつき、僕らは男子寮に引き上げた。


*


「ユーリは気づいてるな。リーマスの秘密」


ジェームズはそう言って、黒の癖っ毛をくしゃくしゃにした。


「はあ?んなわけねえよ、あいつ馬鹿だし」
「馬鹿じゃないよ」


ピーターが反論すると、シリウスが目を見開く。


「馬鹿っぽい喋り方じゃねえか」
「それはユーリが日本人だからでしょ。母国語じゃない言葉を喋ってるんだよ」
「一回魔法薬のレポートのことで彼女と討論したけど、かなりできる子だよ。マクゴナガルにスペルミスのことをくどくど言われてるのを見たことがあるから、凡ミスで失点してる可能性が高いな」
「ほら、やっぱ馬鹿じゃん」


シリウスはそう言って意地悪に笑った。
ピーターとジェームズのユーリ擁護はまるっと無視する気らしい。
少しいらっとくる態度だ。


「ユーリ・アシハラを過大評価し過ぎだぜ。だいたい、リーマスのこと勘付いてるならなんで言わないんだよ?ユーリの話おしまい」
「ユーリの話再開。聡い子だから、言わないでいてくれてるんだよ。僕にとって楽しい話題じゃないって、優しい子だから気づいてる。彼女は医務室の常連だ。すぐ風邪を引くだろう?僕は医務室で何度もユーリと鉢合わせになった」


僕の言葉でシリウスは渋い顔をしたが、顔の前で大げさに手を振って少し笑う。


「…まあ、言わねえならほっといたっていいだろ?ところでさ、今週末は学期最初のホグズミード休暇だ!」


シリウスは夏休み、彼の母親と盛大にやりあったらしくホグズミード行きの許可書にサインをもらえなかったみたいだ。
まあ、大した問題じゃない。
僕らはホグズミードへの抜け道を知ってるし、ジェームズの透明マントがある。
それに、彼は最近アニメーガスで犬に変身できるようになった。
抜け道を通ってやってきたシリウスは犬に変身して僕らと合流すればいい。
彼は自分が変身する犬の姿を気に入っているようなので、透明人間になるよりはそちらがいいのだろう。


*


「わあ!」


なにが起きたのか、よくわからない。
ホグズミードだ。
シリウスが犬の姿で合流した。
と思ったら駆け出していった。
パッドフットは、あろうことか、ユーリ・アシハラにタックルをかました!


「シ――パッドフッド!」


焦ったピーターが声をあげる。
どういうことだ?
シリウスは、ユーリのことを心の底から気に入らなかったんだろうか?


「うわあ!可愛い犬!」


僕の心配は杞憂だった。
シリウス、もといパッドフットは押し倒したユーリを大歓喜で舐めまわしている。
どん引きだ。


「…可愛い、かな?」
「いや、そんなわけない――シ――パッドフッドはめちゃくちゃ凶暴そうな顔つきの犬だし…」
「どうしちゃったんだよ!」


いち早く意識を取り戻したピーターが、走っていってユーリからシリウスを引き剥がしにかかっている。
僕とジェームズも焦って駆け寄った。


「駄目だってば、パッドフッド!」
「パッドフッドっていうの?」


ピーターをきらきらの笑顔で見上げるユーリは、本当に生き物が好きらしい。
よだれまみれになった顔を少しも気にしている様子がない。


「あなたたちの飼い犬?しつけが全然なってない!」


そばに立っていたリリー・エヴァンズは、ユーリとは違って眉をつっている。
ジェームズの目がハートマークになったのはこの際無視することにする。


「この辺にいる野良犬みたいなんだ…。僕ら好かれちゃったみたいで…」
「へええ!いいなあ!」


僕のリリーへの言い訳に、ユーリはきらきらの笑顔のままパッドフットを撫でくりまわした。


「わたし、生き物はなんでも好きだけど犬が特に好きなの!日本で飼ってたことがあるんだけどね――」


ホグワーツに犬はいないので、そういう事情も絡んでユーリはパッドフットを歓迎しているのだろう。
ただ、シリウスが正気に戻ったときのことを考えると、はしゃぎ合う一人と一匹は引き離すべきだろう。
きっと死にたくなるはずだ。


「ほら、パッドフッド、来い!」


パッドフットの尻尾を引っ張ってユーリの上から退けると、パッドフットは凶悪な顔つきで僕を見た。


(きみのためだってば…)


ジェームズが杖を振ってリードを出現させ、パッドフットにつけた。
ユーリが寂しそうな顔でパッドフットを見ている。


「みんなと一緒に行ったら、パッドフットともうちょっと一緒にいられるの?」
「え、ああ、うん。そういうことになるかな」
「ねえ、リリー?」


ユーリはリリーに向かって、思いっきり甘えた声を出した。


「今日はリーマスたちと一緒にホグズミードを回らない?」
「え…?」


リリーが迷惑そうに眉をひそめた。
ジェームズが密かに喜んでいる。


「リーマス、いい?」
「僕らは大歓迎だよ!パッドフッドも!」


ジェームズが声を張る。
ユーリは僕に言ったんだけど。


「ねえ、リリー…?」
「…仕方ないわね」
「パッドフット!おいで!」


大喜びのユーリがジェームズからリードを引き取る。
ジェームズが大喜びでリリーの隣をキープした。
リリーはかなり迷惑そうな顔をしている。
僕は苦笑いしてユーリの隣に立った。


*


「やあパッドフット?今日のあれはどういうことだい?」
「やめてくれ…」


一人遅れて男子寮に戻ってきたシリウスは、ジェームズのからかい口調に青白い顔でそう一言だけ言った。
ふらふらした足取りでベッドまで歩いていくと、ベッドにうつ伏せに倒れる。


(ほらね…)


観察していると、シリウスはベッドの上でごろんごろんしはじめる。
まさにこの表現がふさわしいだろう。
羞恥にのた打ち回っている。


「シリウス、ほんとにどうしたっていうの?」


ピーターが不思議そうに言っても、シリウスは無言だ。


「僕の推測が正しければ、ユーリには不思議な能力があるな。生き物がああいう状態になる。魔法生物飼育学のときも、脳みそが大きそうな生き物はだいたいユーリに大歓喜ですり寄っていくし」
「ネズミに変身するときはユーリに鉢合わせにならないように気をつけなくちゃ…」
「僕も気をつけよ!」


ジェームズはにやにやしたままシリウスを見ている。
シリウスはごろんごろんをやめ、絶望しきった顔で僕らを見た。


「最低だ…。変身した姿でユーリになんか、二度と会うもんか…」


シリウスの意に反した行動だったのだろう。
ちょっと可哀想だ。
だが、そのシリウスの決意ににやにや顔のままのジェームズが言った。


「おっと、それは出来ない相談だ!ユーリが次のホグズミードも僕らとくる。犬の姿のきみがいればユーリは一日僕らといることになるし、そうなれば僕の隣にリリー・エヴァンズがあらわれる!」
「親友を餌にするのか!?」


シリウスは物凄く凶悪な顔でジェームズを見た。
でも、ジェームズはまったく気にした様子がない。
シリウスに助け舟を出そうか考えて、結局僕は口を開かなかった。


(僕もその方がいいなあ…)


ユーリと回ったホグズミードは楽しかった。
ああいう時間は増えれば増えるだけいい。


ユーリがパッドフットの正体をシリウス・ブラックだと知り一騒動あるのは、また別の話。


***
親世代連載と同時期の話なのにこの幼さ!笑
シリウスは若いときだと、子世代夢主への対応が違いますね.
りらの趣味です!←
マルフォイくんとかぶってるんですけど.笑
親世代夢主とヴォルがいないと世界がこんなに平和…笑
夢主がみんなに妹ちびちゃん扱いされるのは拙い英語と容姿のせいなので,アストレイアには日本語ペラペラになってもらいました.
この夢主は猫苦手でもないし,母親の報復を恐れる必要もないので気丈に言い返します.笑



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