番外編
03
パートナーにアシハラを誘え?
無理言うなよ!


父上から来た手紙をテーブルに叩きつけてベッドに寝転ぶ。
四年生以上のホグワーツ生のほとんどが参加するクリスマスパーティーだぞ!?
だいたいアシハラのそばにはいつでもグレンジャーかポッターかウィーズリーがいるじゃないか!
誘う機会すらない!


いらいら過ごしている間にパンジーからダンスパーティーの誘いがきた。
パンジーの父親、ミスター・パーキンソンは父上と懇意にしている魔法省の高官だ。
彼の手前、パンジーの誘いを断れなかったことにすれば父上も納得するだろうと、僕は手紙をしたためた。
しかし、手紙を持ってふくろう小屋に向かった僕に機会が訪れる。
アシハラだ。
連れはいない。
ぐるぐる巻きのマフラーに顔をすっぽり埋めて歩くアシハラを呼び止めると、アシハラはきょとんとした。
自分の左右を確認している。
馬鹿め。
お前に話しかけてるんだ。


「む、無理!」


半泣きでこけそうになりながらもアシハラは僕の腕の下をすり抜けて駆けていく。
あいつ、足速いな…。
じゃない。
無理ってなんだよ!
恥を忍んで申し込んだのに断られたのには腹が立つ。
そこまで考えて僕は頭を振った。
断られてよかったじゃないか。
あいつをパートナーにクリスマスパーティーに参加?
そんな事態はスリザリン生の笑いの的だ。
僕は一応ベストを尽くしたんだ。



*



クリスマスパーティーの夜、アシハラはウィーズリーの双子兄弟のどちらかに伴われて大広間に現われた。
普段と違う服装に、低身長を底上げするピンヒール。
ウィーズリーとなにやら楽しそうに語り合っていて、にこにこ笑っている。
まあ、あいつはだいたいにこにこしている能天気そうな奴だが。


ウィーズリーの双子兄弟が連れ立って駆け足でフロアを横切っていくのを見た。
どういうことだ?
エスコートもまともに出来ないのか?
そう思ってよくよく考えると、今アシハラは一人でいるはずだ。
パンジーに適当に言って彼女の世話をクラッブに任せ、僕はウィーズリーたちがやってきたほうに向かう。
アシハラはやはり一人で佇んでいた。
周りに見咎められないようにアシハラの腕を引っつかみ、早足で大広間から出る。
この好機を逃す手はない。
ただでさえ、グリフィンドール生のアシハラと一対一で話す機会はほとんどないと言っていいのだ。
アシハラは半泣きだ。
少しは憐れにもなる。


「母もわたしと同じだよ…?祖父は日本人のマグルだったの」


その一言に目を見開く。
聞かされていないのか?
本当の祖父のことを?
そんなわけない。
この時代、とても重要な情報のはずだ。


「いいか、よく聞け――」


背後をちらちら窺い逃げようとしているらしいアシハラの顔をひっつかんで真正面から目を合わせる。
そのとき、不意に視界に人影がよぎり、僕は焦った。
スネイプ教授だ。


クリスマスの夜、ムード溢れるバラの生垣、僕らの体勢――。
これ僕がアシハラをどうにかしようとしてると誤解されるんじゃないか!?


アシハラを突き飛ばして面食らって声を上げようとするアシハラの口を手のひらでふさぐ。
僕たちをスネイプ教授とカルカロフ校長が発見せずに去ったことにほっと息を吐いたとき、わき腹を強烈な痛みが襲った。

次の瞬間仰向けに寝転がった僕が見たのは、城のほうへ駆け足で去っていくアシハラの後姿だった。



*



わき腹に紫のあざが出来た。
間違いなくアシハラの仕業だ。


魔法薬の授業中、アシハラが僕らのテーブルにやってきた。
ゴイルはいつになくそわそわしている。
馬鹿め。
目を合わせずに過ごした授業の終わりがけ、カルカロフ校長が地下牢教室に入ってきたことで僕は完璧にクリスマスの夜の出来事を思い出した。
苦言を呈すとアシハラはおろおろしたあと、素直に謝罪を口にした。
屁理屈をこねるようなことはしないようだ。
育ちはなかなかいいらしい。




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