番外編
夏休みの友*
「今日は暑いねえ…」


ギラギラ光る太陽を見上げて、悠莉は額の汗を拭った。
布団は干した。
いつ何時郵便配達人や悠莉のマグルの友人が家を訪れるかわからないので、庭での家事にリーマスの魔法は使えない。


「これだけ暑いとおやつの『かき氷』は物凄く美味しいだろうね」


手持ちがぼろぼろのローブだけなので、リーマスは今日も亡くなった悠莉の祖父の浴衣を身に纏っている。
リーマスは甘いものに目がないらしく、家庭用かき氷機でガリガリやって作るかき氷を大層気に入っているらしい。
縁側に腰掛けると、夏らしい入道雲が空に浮かんでいる。
その入道雲を眺め、風鈴の音を聞きながら悠莉はリーマスと一緒にかき氷を頬張った。


「リーマス、美味しい?」
「ああ、とても。この黒い甘いの、なにかな?緑のシロップが『マッチャ』なのはわかる」


リーマスは自分の器を目線まで持ち上げて、かき氷を不思議そうにまじまじ見た。


「餡子だよ。宇治金時っていうかき氷なの。気に入ってくれたならよかった。餡子を使ったお汁粉も美味しいんだよ。冬に母が毎年作るから、リーマス、冬にまたおいでよ」


リーマスは柔らかく笑って頷いた。
夏休みは、リーマスと一緒にいるからか、穏やかに過ぎていく。
リーマスは母親とそう変わらない年頃の男性だが、偉ぶったりしないのでとても親しみやすい人だ。


「ユーリ、学校で困ったこととかない?」
「英語を読むのも書くのも随分慣れたし、友だちはみんないい人だよ。ときどき嫌味な人もいるけど、そういうのはあんまり気にならない。あ、でも…」
「ん?」


悠莉はロンドンへ向かうホグワーツ特急内でのやりとりを思い出した。


「よく小さい小さいって言われるの」
「うん、ユーリは小さいよね」


リーマスが微笑みまじりでそう言ったので、悠莉はリーマスを見て口をぱくぱくさせた。


「ひどい!」
「ええ!?」


いきなり声を荒げた悠莉を見て、リーマスは本気で驚いたようだった。


「小さい子扱いされるの、やなの!」
「そ、そうだったのかい?すまないねユーリ…」
「日本にいるときは小さいなんて言われないんだよ?むしろ、イギリスのみんなが大きいくらいなのに…」


悠莉はしょげかえった。


「ユーリは今、年はいくつ?」
「十三歳…」
「そのぐらいの年のとき、私もユーリとたいして変わらない身長だった」
「本当?」


悠莉は驚いてリーマスを見る。
リーマスは背が高い男性で、悠莉より頭二つ分は大きい。


「ああ。それから随分背が伸びたんだ。ユーリもこれからだろう?」
「そうだね…?」


母親は背が高い人だし、父親もそうだったらしい。
伸びしろはまだまだありそうだと、悠莉は自分でも思う。


(ちっちゃかったリーマスもこんなに背が高いんだし…)


希望を見出して、悠莉は笑顔になってかき氷を口で運んだ。


「ねえユーリ」
「なに?」


リーマスはためらいがちに悠莉に声をかけてきた。
悠莉が首を傾げると、はにかんで笑う。


「そのイチゴシロップのほうも少しもらっていい?」
「リーマス、甘いものほんとに好きなんだね」


悠莉は自分のかき氷をスプーンですくって、リーマスに食べさせた。
リーマスは本当ににこにこ笑って、自分の宇治金時も同じように悠莉に食べさせる。
悠莉はもぐもぐしながらリーマスを見た。


(パパがもし生きてたら)


こんな感じだったかもしれない。


(ずっとうちにいてほしいな)


入道雲を眺めながらにこにこして口を動かすリーマスの横顔を見て、悠莉も思わず笑った。



*
ゆったりほのぼの.
まあパパというよりボーイフレンドまがいなんですけど…・ω・笑
余談ですが炎ゴブ編で夢主が履いたピンヒールのダンスシューズ,発案リーマス出資シリウスの二人からのプレゼントです.




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