番外編
アズカバンの囚人
-嘆きの春*04 >>フレッド視点
週末、明けて月曜と丸三日、ユーリの姿を見なかった。
絶交したとはいえ、談話室にあの姿がないのは気にかかる。
猫が苦手だというユーリは、寝室に居座るハーマイオニーが飼い始めた猫にビビって大半の時間を談話室で過ごしていたはずだ。
最近はご友人のハーマイオニーと競うように談話室の机にかじりついて、本をめくりながら黙々と羽ペンを動かしていた。


「…ユーリは?」


年明けスキャバーズのことで仲違いしていたロンとハーマイオニーはいつの間にか仲直りしたらしい。
ロンたちと一緒にいるハーマイオニーにぶっきらぼうに尋ねると、ハーマイオニーはかすかに眉をつった。


「ユーリは今落ち込んでるの…。そっとしておいてあげて」
「おいおい、随分な言い草だな。居所聞いただけでそこまで言うか?」


また風邪でもひいたのかと、ちょっと思っただけだ。
それが、なんだ?
俺たちがあいつのことをいじり倒すとでも思ってるのか?


「なんで?」


ジョージの方は神妙な顔で尋ね、三年生三人は肩を落とした。


「バックビーク、ユーリが可愛がってたヒッポグリフが裁判で敗れたんだ。マルフォイに怪我させたって件で。ユーリは弁護のために週末ロンドンに行ってた」


ハリーが言った。


「マルフォイの父親が汚い手を使ったのよ。そうじゃなきゃ――。ユーリは年明けからずっと、ほとんど寝ずに裁判の資料作りをしてたの。マルフォイと同じように怪我してた。それなのに――」


ハーマイオニーが悔しそうに唇を噛むと、ロンが慰めるようにその背を撫でた。
ガリ勉に成り下がったと思っていたユーリは、最近裁判の資料作りに勤しんでいたらしい。


「それで、どこにいるんだ?ロンドン?」


ジョージが心配そのものの顔つきで問うと、ハーマイオニーは緩く首を振った。


「土曜の夜更けにはホグワーツに戻ってきたの。それからずっと寝室に籠ってる。ここ二日なにも食べてないのよ?オレンジジュースもサンドイッチもいらないって、口を付けないし…。泣きながらベッドに篭って、出てこないの…」


俺たちは思わず顔を見合わせ、ロンたちから離れた。



*



「どうする?」
「なにが?」


ジョージに問われて無愛想に返事した。
どうするって、どうするよ。
俺たちユーリとは絶交中だぞ。


「ユーリだよ。ここ二日なにも食ってないって」


ジョージは心配顔だ。
こういうとき、鏡合わせの双子と称される俺たちの違いが見える。
ジョージは俺よりほんの少し優しい。


まあ、確かにかなり深刻だ。
裁判で敗れたというなら、ヒッポグリフは処分されるのかもしれない。
生き物好きのユーリが立ち直れなくなる重大なダメージを負った可能性は高い。
土曜が裁判だったなら、金曜の夜くらいから緊張やらなんやらでろくに食事をとってないんじゃないか?
そうだとしたら、もう丸三日絶食中ということになる。


「…図書館に行ってから厨房だ」
「図書館?」


俺の言葉をジョージが聞き返した。


「日本の、アジアのマグルの病人食でも調べて行こうぜ。絶食明けに異国の料理はきついだろ」


無愛想に言う俺に、ジョージが意気込んで頷いた。



*



「アンジェリーナ」
「ん?」


厨房から談話室に帰ってきて、目についたアンジェリーナを呼びとめた。
俺たちゃ男だから、女子寮には入れない。


「これ、三年の寝室に持って行ってくれないか?」
「ユーリのベッドサイドにでも置いて来てくれよ」


日本人は『オカユ』ってやつを消化にいいとありがたがって食うらしい。
それが入ったバスケットを突き出すと、アンジェリーナは目に見えて嫌そうな顔をした。


「なに?嫌がらせに加担するのは嫌よ」


なんだよその反応は!


「嫌がらせじゃねーよ!日本の病人食だ」


半ギレで言った俺に、アンジェリーナは首を傾げながらもバスケットを受け取った。


「それならいいけど…、あんたたちユーリを怒らせて絶交されてるんじゃなかったの?」


怒らせたのは向こうの方だし、絶交したのも俺らの方だ!
パブリックイメージの差からか、同級生でチームメイトのアンジェリーナさえユーリの味方らしかった。
まあとりあえず今はそんなのどうでもいい。


「だから、こっそり置いてこい」
「見つかっても俺たちからなんて絶対言うなよ」


俺の後にジョージが続くと、アンジェリーナは困って笑って、それでも頷いた。


「頼み方に問題あるけど、まあいいわ。任せて」


***


たまには双子のいいとこも書いてあげなきゃですね・ω・*




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