※智緑は同クラス、赤は別
※茂は別中学
※緑と智が仲良し

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 あ、と、思わず間抜けな声が漏れた。昨日しっかり予定通りに入れたはずの鞄の中には、何故か今日使わないはずの数学の教科書とノートが入っている。あーあ、やっちゃったな。かといって学校に教科書を置いていくのも嫌だし、今日一日のことだからと引き出しに仕舞った。次の休み時間にでも明日の予習をするのに使えばいいか。
「グリーン、次の授業なんだっけ?」
 隣の席のサトシが鞄をごそごそしながら訊いてくるので、国語だよと応えた。サトシがげっそりした溜め息を吐くのはいつものことだ。というかこいつは体育以外の授業はほとんどげっそりしている。そんなんでよく進学校の中高一貫学級に進学したな、お前。
 あのなあサトシと、げっそりしている友人を慰めようとしたとき、ばんっと音を立てて教室のドアが開いた。待て、うちの学校のドアはぜんぶ引き戸だぞ。なにをどうすればそんな豪快な音が立つんだ。しかしそんなことをやってのけそうな人物に心当たりがないこともないから嫌になる。案の定ドアを壊さんばかりの勢いで開け放ったそいつは開口一番に叫びやがった。
「グリーン助けて!」
 それは俺の幼馴染のレッドだった。半泣きの顔をしている。ああこいつ、またなんか忘れ物したのか。そう直感できてしまうくらいにこいつの忘れ物はひどい。毎回俺がフォローできているからいいけど、そのうちフォローできなくなったらどうするつもりなんだろうか。そんなことを考えながらちょいちょいと手招きしてやればレッドはとことこ近づいてきた。
「どうしようグリーン、」
「今度はなに忘れたんだよ。ほら、怒らないから言ってみ?」
「数TAの教科書と、ノート……」
「――お前んとこの数学担当、ねちっこいもんな」
 こくん、と、レッドは頷く。ちくしょうたまにすっげぇ可愛いなおい。
引き出しに仕舞ったばかりの数学一式を取り出して、数学の恐怖にぷるぷるしているレッドの手に渡してやった。
「言っとくけど、今日持ってたのはたまたまだからな。俺ばっかり当てにするなよ」
「うん、ありがとうグリーン」
「おー。予習間違ってたらごめんな」
「僕が数学できないのはいつものことだから大丈夫」
「そんなことで胸張るなって……」
「数学とは仲良くなれる気がしない」
 ひどい捨て台詞を残し、さっと右手を挙げて台風は自分の教室に帰っていった。あいつと話しているだけで、余裕があったはずの昼休みがあと僅かしか残らないんだから不思議だ。楽しいとかそういうんじゃなくて、ただ時間が経つのが早いから尚更不思議だ。
「ふたりとも、仲良いのなー……」
「は?」
 ぼんやりしていたら、どこか感心するような声でサトシが言った。
「そんなことないだろ。幼馴染だし、普通だ、普通」
「普通じゃないって。オレもちっちゃい頃から知ってるやついるけどさ、あんなに仲良くねえもん!」
 ぶうぶう唸る馬鹿はもしかして羨ましいのだろうか、と思った。ガキの頃から一緒のやつとあんまり仲良くなかったら、ちょっと寂しいかもしれない。俺はなったことがないからわからないが、そういうものなのかもしれないなと思う。そういえば、まさかレッドまで私立中学に進学するとは考えもしなくて、小学校で付き合いが切れるものだと思っていたこともあった。今じゃあストレートに進学すればそのまま高校まで一緒のコースだからあまり実感はない、けど。もしそうなっていたら、俺も今のサトシのように不満を漏らしていたのかな。あまり考えたくないことである。
「つまり仲良しの親友がいなくて寂しいわけだ、サートシ君は」
 辛気臭いのが嫌いな俺はわざとにやけながらサトシの名前をふざけて呼んだ。サトシはびくりと肩を跳ねあげて、その呼び方するなと過剰に反応する。少し楽しいかもしれない。
「心配しなくても俺様が親友なってやんよ、サートシ君!」
「だからそれ嫌だって言ってるだろー!」
 昼休み終了のチャイムに気づかずわめいていたサトシは、授業を始めようと教室に入ってきた国語担当にしこたま怒られた。俺はもちろん他人のふりをして逃げたけどな。





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