そも、この幼馴染が何かに興味を示したときはロクなことにならないのだ――と、長年の付き合いであるチェレンは思う。大抵のことは難なくこなす幼馴染は、同時に何か一つに入れ込むことを自ら避けているようでもある。避けていると言うか、入れ込む理由が見つからないなら手を出さないのだ。そこそこ広い交友関係を持てる程の顔見知りはいるだろうに、邪険にならないようにその関係を切り上げ、大切なものは自分で選ぶとばかりに自然発生的に生まれていく関係すら淘汰するその生き方は、まさに「自分が後悔しないための自分のための生き方」であり、ある意味横暴極まりないそんな生き方を16歳にして許されているのは一重に、彼の性格と能力故なのだと思う。
そして彼の、有り難くないことにその数少なく狭いテリトリーの中に己とベルが含まれていることも重々承知しているチェレンは、何度も言うようだが彼とは長年の付き合いなのだ。
「――……トウヤ、今の話ちゃんと聞いてた?」
 どこぞの聖戦帰りのような格好をした、プラズマ団とかいう胡散臭い奴らの話が終わった途端、うぅんと背伸びをして欠伸をした幼馴染を、チェレンはたっぷりとした非難の目で見つめた。対してトウヤはハシバミ色の目を甘く細め、半分は聞いていましたよとのたまってみせる。口元に描かれた柔らかな笑みすら、奴らとは別の意味で胡散臭い。
「あいつらの言うこともわかりますけど、それをどう取るかは僕ら受け手の自由でしょう。今更ああいう手合いにぶらされるほど甘い気持ちで旅に出たわけじゃないしね、まあ、好きにすればいいんじゃないかな? 僕に関わらない範囲でして欲しいですが」
「だからって立ったまま寝るなよ。確かに、面倒そうだなとは思ったけど」
「眠たかったんですよ。朝、早かったし」
 チェレンも寝ればよかったのになんて笑うトウヤだが、あの状況で眠れるほど生憎とチェレンはふてぶてしくなかった。眠るくらいなら聞かなければいいのに、というのは、波風を立てない程度に好き勝手生きているトウヤには到底理解されない正論だ。
 下手に奴らに対して感想を抱かなかっただけマシか、とチェレンは安堵の息を吐く。うっかり街中で語りかけられても徹底的に無視をしかねないトウヤの嫌い方は胃に悪い。
「――ああ、でも」
 こてん、と首を傾げたその動作はひどく繊細だというのに、背筋に冷たいものが走った。
「あの真ん中の勘違い系中年はちょっと、嫌いかな?」
 できればそのままの感情を持ったまま、奴らのことを忘れてほしい。チェレンは切実にそう願った。主に、自分の胃の為に。
「ベルとトウコと一緒に行けばよかった、」
 よりにもよって、どうしてトウヤと一緒に後発組になってしまったのだろう。







(被害者であり被保護者である少年の切実な心境)




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