家に着くともう時間は6時を過ぎていた。
キッチンからリビングの窓の外を眺めてもう外が暗がり始めているのを見ると、もう冬がすぐそこまで来ていることを知らされる。
買い物袋をガザガサさせながら合挽きミンチや人参を取り出す。


「名前!お腹が空いた」

「はいはい、ちょっと待って」



今までは一人だったから買う食材の量もそんなに多くなかったのに今はおよそ二倍。いつも料理を作るときに自分以外に食べてくれる人なんていなかったのに、今はいる。それだけで、夕食を作るのが楽しくなる。


「名前、何か手伝うことはないか?」

「そうだなぁ、じゃあ私が人参、玉ねぎを切ったらミンチと混ぜてくれる?」

「ああ、俺にまかせろ!」


手早く人参、玉ねぎをみじん切りにして、ミンチと一緒にボウルに入れる。
そしてそれを白竜くんにこねてもらう間に私はサラダとコンソメスープを作る。


「名前、これぐらいでいいか?」

「あ、うん。じゃあ形整えようか。」

「俺にまかせろ!」

「うまいうまい!そんな感じ!」


白竜くんは意外と料理が上手い。
私なんかいつか抜かれそうだ。それにしても男の子で料理できるって素敵だなぁ。家庭科の実習とかやったら白竜くん女の子にモテるだろうなぁ…。中学男子で料理上手で顔もかっこいい…なんてモテる要素しかない。


「ふう…、これで完成!」

「うまそうだな」

「白竜くんが手伝ってくれたからいつもより美味しくできたかも」

「フッ、当然だ」

「じゃ、食べようか!」

「あぁ!」


「本当においしい…」

誰かと一緒に食べるだけで、ご飯ってこんなに美味しくなるものなんだ。


「私ね、ここに来てから家では一人でご飯食べてたの。だから、白竜くんが一緒に食べてくれてとても幸せに思うよ」

「俺も誰かが作ってくれる夕飯を食べるのは久しぶりなんだ。やっぱり手作りはうまいな。なんせ俺が前いたところではこんな手作り料理なんてなかったからな」

「お母さんの味とか覚えてないの?」

「それがよく思い出せないんだ…」

「そうなんだ…」

「まぁでも、これからは名前の作る料理の味が俺にとっての母さんの味みたいになるだろうな」

「そ、そうなの?…じゃあ、自慢してもらえるような美味しく料理作れるようにならなきゃね」

「まあ、頑張ってくれ」

「何その上から目線。まあ、いいや」



それから白竜くんとお互いのことなどについて語った。白竜くんはフィフスセクターとかいう施設で厳しいサッカーの訓練をしていた…とか回りは男ばかりだったとか、島に住む不思議な男の子のこととか話してくれた。


「それから、この稲妻町にある雷門中に俺の最高のライバルがいるんだ」


あいつはサッカー上手くて、島にいたときの奴の性格はナイフのように鋭かったのにこの間試合してみたら雷門イレブンとなかよしこよしで…、でもあいつとの久々のサッカーはおもしろかったんだ…!とかつらつらその雷門のライバルとのエピソードを語る白竜くん。


「白竜くん、本当に彼とのサッカーが好きなんだね!」

「ああ、あいつは特別なライバルだからな」

「ならさ、白竜くん雷門に転入してみる?」

「は…?」

「そしたらもっとたくさんそのライバル君とサッカーできるじゃん。それに島からここに来たとはいえ、学校はいかなきゃ。まだ中学生なんだから」

「でもそんなことができるのか?…親だって近くにいないしな…」

「大丈夫、なんとかなるよ!だってこの近くのアパートにも親元離れて雷門に通ってる男の子いるんだし。私が学校側には話してあげるから」

「本当か…!」

「うん」

「そうか、すまない。……ありがとう」



お父さん、お母さん
私にちょっと素直じゃないところもあるけど可愛い家族ができました。



#胸が温まる