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快晴。次の日は快晴だった。もうすぐ梅雨が来るというのに、空には雲ひとつない。昨日の雨が嘘のように晴れわたっている。
今日は傘を返さなければならない。とはいえ、貸した本人の情報は二年生ということと顔しかない。多少ではあるが骨が折れる。
せめて名前を聞いておくべきだった。もしくはクラスでも聞いておけば、手間が省けていたかもしれない。これから二年生の教室を探し回らなければならないと思うと少し憂鬱だった。ずっと教室にいるとは限らないし、他学年の教室を動き回るのは気が引ける。しかし、いつまでも手元に借りた物を置いておくわけにもいかない。傘を持って重い腰を上げ、二年生の教室へ迎えば、遠くに印象的なサンバイザーが見えた。
「キョウヘイ!」
名前を呼べばすぐにこちらに駆けてくるのがわかった。まるで犬のようである。特徴の髪を揺らしながらまっしぐらに向かってくる様がいかにもといった感じだ。
「トウヤさん!どうしたんですか?」
「ちょっと聞きたいことがあって」
「?」
目の前に傘を出せばキョウヘイの頭にクエスチョンマークが浮かぶ。
「この傘の持ち主わかんない?」
「うーん、どこかで見たような気がするんですけどね」
どこだったかなー、と首を傾げたかと思うと、次の瞬間には体が教室に向いている。いつものように表情をころころと変えながらキョウヘイは教室に向かって声を張り上げた。
「メーイ!」
「どうかした?あ、トウヤさんこんにちは」
「こんにちは。メイはこの傘の持ち主わからない?借りたんだけど、名前もクラスも聞き忘れちゃって」
メイに傘を見せる。そうすれば自分のことのように考えてくれる。キョウヘイもメイも二人とも俺の自慢の後輩だ。
「んー、あ!もしかしてすごく肌が白い子だったりしませんか?」
「うん、そう。名前わかる?」
「多分クコだと思います。うちのクラスですよ」
「本当?ありがとう。助かった」
「あ、でも」
数少ない手がかりしかないにも関わらず見つけられたことに安堵すると同時に、二人に感謝する。俺ひとりであったとしたらこの倍以上の時間と手間がかかっていたにちがいない。そのことを素直に伝えると、メイが言葉をつまらせた。
「今日はクコいませんよ。休みです」
「そうなの?」
「はい、というかクコに会うなら雨の日じゃないと多分無理ですよ?」
「?」
「あの子、雨か曇りの日以外ほとんど来ませんから」
ひどく不思議な、例えようのない感情が込み上げる。ひとつだけ確実に言えることは、俺が彼女に興味を抱いたということだ。

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