※「私を醜くさせないで」のトウヤサイド

突然だが、俺には好きな人がいる。幼少の頃からずっと好きで、隣にいて落ち着く、まるで家族のように大切な人。薄っぺらなように聞こえるかもしれないが、一緒にいて違和感なく自然体でいられる人だ。彼女の醸し出す雰囲気が好きでたまらない。ずっと彼女しか目に入らなかった。どんなに美人でも、どんなに可愛くても、彼女の独特な雰囲気には勝てなかった。そんなことは当の本人は全く気づいていないのだけど。
正直、彼女以外のことはあまり興味はなかった。いま思えば俺は彼女を中心に回っているのかもしれない。好きという言葉じゃ収まらないのだろう。彼女がいれば楽しくて、彼女がいれば幸せだ。彼女がいなければ世界はどこか澱んで見える。例えるなら彼女は俺にとっての色だ。それほどまでに特別。彼女だったら俺のどんなに汚いところだって見せられる。どんなに汚いところだって受け止めてくれる。
高校へ入学する時、俺と彼女しか自分の通っていた中学から同じ高校へ進学する人がいないと知って俺は自分の汚いところを隠すことに決めた。汚いところや醜いところ、美しくないところはすべて隠した。これは誰のためでもない、自分のためだ。そんなものは彼女さえ知っていればいい。彼女だけに知っていてほしかったんだ。
自己満足に浸っている。そんな俺と一緒にいてくれる彼女。そんな彼女の優しさを利用して今日も俺はこの生ぬるい関係を続ける。進みもしない、退きもしない、そんな関係に溺れているんだ。
「アズサ、帰ろう」
そう笑えば、彼女は納得のいかないとでも言いたげな不自然な笑顔を返すのだ。


醜さを受け止めて


彼女だけが知っててくれればそれでいいんだ。

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -