こんなつもりはなかったのにと今更ながら思う。面倒事は避け続けて来たのに、あっさりとそれも不本意とはいえ自分の失敗から突っ込んでしまうとは、今日はほとほと運がない。そんな私の心情は知らず、トウヤは微笑む。
「嘘、」
「こっちが本当。爽やかで優しいトウヤくんじゃなくてごめんねぇ?」
トウヤの顔は笑っているが目はまったく笑っていない。私はこの目を知っている。正確に言うと知っているとは少し違うのだが。この目は何も信じていない目だ。それこそ私の目とそっくりだ。信じることを知らず、心を奥底に閉じ込めており、とても冷たい目。
トウヤはきっと私と同じだ。自分のみを信じ、自分を殺して生きている。
「…なんで…っ」
「別に?ただ外見だけでイメージを押し付けられるのに疲れたから、皆が望む通りの俺でいてあげているだけ」
悪い?と首を傾けるトウヤに私は黙って俯いておく。私に言えることは何もない。共感はするが、同情はしない。同情をしたところでそこに何があるだろうか。
「まぁなんでもいいけど。裏切られたとか言って喚かれるよりよっぽどね」
興味が失せたのかくるりとトウヤは踵を返す。
誰が裏切られたと喚けるだろうか。トウヤのこれが裏切りだというとしたら、私はそれを更に裏切っていることになる。だとしたらどうしてトウヤを裏切り者だと罵ることが出来るだろうか?
「一応これ内緒な?別に誰かに言っても誰も信じないだろうけど」
「…う、ん」
「それに俺が言わせないし?」
一度振り返り、笑みを浮かべる。その貼り付けたような笑顔を胸に焼き付ける。
「じゃあまた後で、キリ」
手を振って去っていくトウヤの姿を先程のトウヤと同じ目で眺める私がいた。


ないしょだよ


言うことに意味なんてないじゃないか。





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