新しい学年になってから数ヶ月が経った。静まり返っていた教室にもゆっくりと少しずつグループが出来はじめ、教室は話し声があふれかえっている。となってくると、自然にある言葉が浮上する。
席替え。クラス内のほとんどがその言葉に賛同する。私もそれに賛同する。私がしたいかしたくないかは関係ない。それが大多数の意見だからだ。
本当はそんなことはどうでもいい。隣の席が誰だろうとうまくやれるし、誰と席が近くたって支障はない。どこのグループにも属さず、適度なところで溶け込む。それが私の生き方だ。
誰かに言われたことはないが、性格が悪いだとか猫被りだとか腹黒だとかそんなことは自覚している。これが悪いことだとは思わない。だって私のライフスタイルだし、不満をそのままぶちまけるよりはよっぽどいいじゃない。お互いに気を悪くしなくてすむのだからいいじゃないかと思う。罪悪感が無いわけではないが、やめるつもりはない。嫌だと感じるなら私に近寄らなければいい。
話が少し逸れたが、私は生きやすければそれでいいのだ。だから席替えの結果なんてどうでもよかった。

学級委員が手早くあみだを書いてクラス内に回す。それぞれがわいわい騒ぎながら名前を書いていく。
やがて空白が少なくなってきたあみだが私のもとに回ってきて、隣の席の子と離れたくないねなんて言いながら名前を書いていくが、やはり心の中の自分としてはやっぱりその子と離れようがどうでもよかった。
次々と黒板に名前が書かれていき、その中で自分の名前を探す。窓側の前から4番目のその場所にある自分の名前と隣や前後の人の名前を確認する。
前後の席はトウコちゃんとコーンくんだ。トウコちゃんは鈍感だし、コーンくんは意外なところで天然丸出しだから私にとっては都合がいい。
隣の席を確認しようと黒板に目を向けようとしたとき、近くから声が聞こえた。
「隣はキリさんなんだ」
「トウヤくんが隣かー。よろしくね」
トウヤくんに向けてもう慣れてしまった笑顔を作る。トウヤくんとは1対1で話した記憶があまりない。別に避けているとかではなく、私自身が2人という状況にあまりさせないだけなのだが。
トウヤくん自体は爽やかに爽やかを重ねたくらい爽やか少年だ。ここまで人は爽やかになれるかというくらい爽やかで、いつもクラスの中心にいる。こんな私からしたら眩しいことこの上ない。つまりは仲良くしておいたら何かと都合がよくなるということ。
「面倒だろうからトウヤでいいよ?」
「本当?私もキリでいーよ」
「じゃあキリこれからしばらく隣よろしく」
向こうもそれなりに仲良くしようとしてくれているようだから、それに乗る。中心にいる人と仲がいいと自分も中心にいられるから便利だ。言い方は悪いが、トウヤを十分に利用させてもらう。
いい意味でも悪い意味でもという意味を潜めて、再びよろしくと私は笑う。


はろーはろー


仲良くしてね、ふたつの意味で。





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