「ふうん」
トウヤが呟く。その声を聞いても感情はよくわからなかった。単に面白がっているのか、興味を失っているのか、はたまた私に同情しているのか。どれだって別に構いはしないのだけど。
「それってさ、ただキリが許したくないだけなんじゃないの?」
「え、」
「許したくなくて、同じ様なことをするかもしれない人を恐がっている」
違う?とトウヤは首を傾けた。
そうなのかもしれない。私がアサミを許せばアサミは楽になれるし、私だって人を信じられる様になるかもしれない。私だってトウヤに言われなくてもわかってるんだ。
「…そんなこと、わかってるよ。でも、そんな簡単に許せない」
トウヤが紅茶に口をつけた。
「別にそれでいいんじゃない?」
「はぁ?」
「許したくないならそれでいいと思うよ。許したくないなら許さなくていいし、信じたくないなら信じなくていい」
でも、とトウヤが呟くのが聞こえた。
「…でも、何?」
「やっぱなんでもない」
意味がわからない。まぁいいや、と自己完結をして頭の隅に追いやる。自分には関係ない、聞くだけ無駄だと自分に言い聞かせる。今までそうやって生きてきたんだ。だからこれでいい。思い込めば全ていつも通りに変わる。トウヤに話したことだってきっと何かの気の迷いで、誰かの傍にいながら誰の傍にもいない私が普通なんだ。
「トウヤ、今の話は忘れて」
トウヤがこの話を忘れれば、全て日常に戻る。この胸につのる苛立ちだって一時的なもので、明日になれば消えてなくなっているはず。


いつものこと


いつもいつもいつでも、私は目を逸らす。





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