まずいと思った。
このままでは、まずい。

飯田くんから注意されたことに正直とても凹んでいた。それに加え帰り道の時に薬研から、
「正直に言うとよ、俺っちは場慣れしているし、あの餓鬼んちょ達が個性を使わねぇってんなら勝てるだろうよ。でも爆破やら超怪力やら、俺っちじゃ恐らく勝てねぇ。練度不足ってのもあるが、それ以上に俺っちは短刀で得意分野は夜戦や偵察だ。悔しいがな。…すげぇ悔しいが、言い切る。この先あの餓鬼んちょ達より強くなる為には、俺っちだけじゃ無理だ」
と、言われてしまった。
明日からは普通の授業に加えて、ヒーロー科特別授業基いヒーロー基礎学が始まる。レスキューの基礎から戦いの基礎まで、文字通り叩き込まれるんだろう。
このままではまずいんだ。

まず体力を上げるべきか。
薬研曰く、本来の審神者というものは基本的に霊力が高いんだそう。霊力とかどんな死神漫画だと言いたい。
でも私は個性として"審神者の能力"を受け継いでるわけであって、霊力云々というのは関係ないみたい。その霊力に変わって、私が必要とされるものは精神力。意の強さ、メンタル、体力。様々だ。正直私もよく分かってない。が、薬研は「なまえの魂は綺麗で好ましい。だけどちょっと弱いっつーか、薄い」と言っていた。魂が薄いって何事?まぁとにかく、それらを鍛えなければいけない、とのこと。私が初めて呼び出したあの神様は薙刀と言って、未熟な私が呼び出すには不相応だったようで。薬研にあのトラウマを話したところ「そりゃあそうなる」と笑われてしまったし。私からすれば笑い事じゃないってのに。

薬研は短刀で、未熟な私でも応えてくれる。そういうと少し短刀が安く聞こえてしまうかもしれないけど、薬研に関しては薬研自身が兄貴肌で優しいからこうして私にも応えてくれてる。ありがたいよね。

私もトラウマだとはいえ、何も他の神様を呼び出さなかったわけじゃない。短刀しか呼び出したことないけど。
刀派というものがあり、まぁ言わば家族関係のようなもの。薬研は藤四郎派という刀派らしく、そのお仲間を呼び出したことがあった。だがやはりと言うべきか、いい顔はされず、終始睨まれっぱなしだったのを覚えてる。見た目は子供だけど怖かったなぁ。たしか、五虎退と厚と乱と秋田。一気に呼び出したわけじゃない。2人ずつ降ろさせてもらった。当時13歳の私の精神力じゃ薬研を含めた短刀3人までが許容容量で。五虎退は泣き出すしそれを秋田はまるで私のせいだと言わんばかりに睨んでくるし、厚と乱に至ってはずーっとむっすりしてたけど。無視されてたしね。はーあ。

過去を思い出して傷心していると通り掛かった薬研から「魂薄いぞー」と言われた。だから魂薄いってなんなの。

ああそうだ、私自身の家族のことも考えなければいけない。降ろした神様が憤って私に手を下すならまだしも、最悪お母さん達に被害が及ぶ可能性もあるし。本来の審神者に呼び出された神様達は契約によって審神者自体を殺すことができないみたいだけど、私は別だしね。気をつけないといけない。
因みに薬研はよくお母さんの料理の手伝いやお父さんの神社の手伝い、他にも腰が悪いおばあちゃんのお手伝いをしてる。私はほら、勉学がね、忙しいから。ウンウン。薬研もジェネレーションギャップを楽しんでるのか、料理やテレビなどの現代文化(?)が面白いみたいだし。

話がだいぶ逸れてしまったけど、とりあえず今の私は体力作りをメインに、打刀以上の刀を呼び出すべきだと思ったんだ。

「ねぇ薬研」

「んー?なんだ?」

「…新しい神様を、降ろそうか思うんだ」




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