これは私の個性が出たばかりの頃の話。

当時4歳だった私は、そりゃもう個性を使いたくて仕方がなかった。これは個性が出現した人みんなに当てはまると思う。
まぁ、お家が神社と言えども、幼稚園児がそんな数百年も大切にされてる物の近くに寄らせては貰えなかった。なので中々個性を発揮することは出来ず、専ら神社にある狛犬の付喪神だけが私の個性の練習台だった。いや、練習に付き合ってくれていた、というのが正しい。神とは偉大なモノなのだ。

そして、異変に気付いたのは小学校5年生のとき。

異変というのはまぁ、頭に浮かぶアレのこと。
覚えのない名前、姿。完全に興味本意だった。もしかしたら付喪神かもしれない、と。どんな付喪神なのだろう、と。
その姿を思い浮かべ、名を口にしてしまった。

『来たれ、えーと…いわ、とおし』

手を前に翳してそう言うと、手の先が眩しい程の光を放つ。
そして現れたのは、当時の私の2人分はあるであろうほどの大柄な神様だった。その時点でも少々小心者のきらいがある私からすれば恐ろしかったというのに、果ては、付喪神と言えども神の内であるそれを、ただの人間風情が降ろしてしまったことに対する神様の怒りを買ってしまったのだ。

『ああ…主と似たものを感じる。が、貴様、審神者の者ではないな?ハッ、ただの人間が俺を降ろすなど笑止千万。なんと愚かな奇行ぞ。小童を甚振る趣味は無いからなぁ。殺しはしないが、この様な神に対する愚行、二度の堪忍はないと思え』

私の数センチ隣にはその付喪神の本体であろう大きな刃幅の薙刀が畳に突き刺さっていた。
恐ろしさにより直後は泣くこともできなかった。

齢10歳にして初めて、死への恐怖を身を以て知ったのである。

そして思い出したかのように泣き出した途端、個性が切れてその付喪神は消えるように居なくなった。
消える直前まで私を睨みつけていたあの侮蔑や憤りの混じった目を、私は5年近く経った今でも忘れることはできない。


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