「…ん」

…なんだか腰とお尻が痛い。というか私たしか地面の上で倒れた気がするんだけど…ソファーだよねこれ。それに、鎧はどうしてしまったんだろう。薄い格好になってる。寝起きだからか頭が働かない。
それにしてもよく寝たなと大きい欠伸とともに体を伸ばす。状況整理しようとそのまま屋根を見つめて、頭を回転させようとしていると「起きたか」と声をかけられる。
誰か居たのか、と思うよりも先に視界に入ってきたのは化け物。

「ッ魔神族…!?」

咄嗟に背中に手を伸ばすけど空気を掴んだ。そうだ、鎧がなくて、剣もなくて。
魔神族の世界だったか、と歯を食いしばるとその魔神族の後ろから「ふっ」と乾いた笑いが聞こえた。「脳無」と言われるとその魔神族は横へずれる。姿を現したのは体中に手首がくっ付いてる異形な人間だった。

「…貴方は?ここへ連れてきたのは貴方ですか?私の鎧や剣はどこへ?…この魔神族を手懐けてるんですか?」

「あー…」と言いながらその人は首を掻き、一言「質問が多い」と述べた。たしかに。
こほんと咳払いをして指を2本立てる。

「…失敬。なら貴方達のこと、この世界のこと。二つでいいので教えてほしい」

「いいよ。代わりに一つ答えたら君も一つ答えるんだ」

「わかりました」

そう答えてから、このバーらしき場所には横の魔神族(今一度見てみると、地下で見たあの魔神族よりも小柄なことに気付いた)と目の前の異形の人間、そしてその向こうでグラスを磨く黒い靄がいることに気付いた。

どんな魔力の持ち主だ?
いや、それとも、最早"魔力"という概念や力が通じる世界ではないのかもしれない。
もうあの、ブリタニアの青い空を見れることは、ないのかもしれない。

弓形になった目がギョロリとこちらを見るその瞳にゾクリと体が震えた。


「俺は死柄木弔。なぁー…君は"何だ"?」


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