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▽カーリィナは恋愛小説を手に入れた!
異世界文字で書かれたそれらをスムーズに読めるよう、簡単に複製魔法で作った翻訳機能付き片眼鏡モノクルのスペアを日ごろの感謝を伝えるとともに贈る。

すごく満足そう頬を緩ませる娘には申し訳ないが。年齢制限が付くムフフな内容が載っていないか、親心としてはごっつ冷や汗モノである──
その内「赤ん坊はどこから来るの?」なんて聞かれたらどうしよう!!大きくなったフェリシアからもこれ聞かれる可能性高いぞ!?

世の親御さんホント凄いわ!心の底から尊敬の念を抱きつつ。プレゼントチョイスしてくれたリュヤド店主の奥方を信じるしかない・・!!

笑ったときに、目尻や口元にできる笑いじわが可愛い印象を受ける奥方が爽やかなサムズアップを決めてるイメージが脳内浮かぶ──人目を避けてカーリィナが空間の窓にしまう本の束に興味惹かれ、読み終わったら貸してくれないかな?という思いが湧く前にはっと我に返り、かぶりを振り気を引き締め直す。


外周部を城壁で囲まれているリ・ロベルは産業都市として成り立っており、外壁部各所に設けてある城門がそのまま街の中心部へ続く街道と繋がっている。
陸に面した城門が東側を占め、大海と隔絶していた水門壁が西側と。おおよそ半々に都市全体が二分して分かれる。
物資運搬に商店と人々が賑わう街道を少し外れ、入り組む路地を進めばリュヤド一家が営むこじんまりした店や住居が並び、更に袋小路へ足を踏み入れるとスラム街に当たる裏通りに至る。

反して──都市の最奥に、自らの力を誇示するように建つ品のない古城とそこな当主の顔を思い出し。悄然しょうぜんとして俯いた顔を上げれなかった。
残念な当主に追従し古城の周りに富裕層の王国民が集合して住む高級住宅街が並び、ありありと格差を目の当たりにした
 
元の現実世界でも変わりなかった。人間の欲というものをひしひしと感じ入り、知らず腹立たしく遺憾にえない。

ちょっと頭痛を起こしかけ、人通りが多い流れに沿いなんとはなしに大通りを歩き、運河の橋を渡ろうとしたところで不意にカーリィナが歩を止め、つなげてる手を引かれるかたちで自分も立ち止まる

なにか気になるものでもあった?首傾げハテナ浮かべるナマエは橋の下──河を静かに見詰めるカーリィナの視線の先──長いことゴンドラを放置したせいで、こびりついた苔の洗浄に悪戦苦闘している船乗りが何名かいる。
初めて都市を訪れ内情観察した三日前には、人や荷物を運ぶ物流手段用としての船着き場は全く機能していなかった。

昨日 陽が昇らぬ内に、都市内部を流れる汚れた水を八つの水門を起点とし、効果範囲を広めた浄化魔法を掛け、拠点の図書室から持ち出した本を触媒に召喚・使役できる低レベルモンスター<衛生粘体>サニタリースライムを一般家庭区や貧民街を中心に、河の深水あちこちに常駐させ恒常こうじょう的に清浄な水を維持、下水処理を整備しておいた。
──あまりに酷かった、ヘドロがぶよぶよ浮いていた運河が今では隅々すみずみまで河の水が透き通って見えるように。リ・ロベルに住む人たちが最低限生活が営めるよう、ウチから持ってきた本とユグドラシル金貨、消費した甲斐があった──

握り返してくるカーリィナの手の握力が強まり、自分でも気づいていないのだろう。そわそわ体を揺らしてクールビューティーな顔が目力増して圧が強い!!ッえええそんな表情もするのお!!?

<念話テレパス>を使わずとも娘がなにをしたいのか、言外にそれを理解したナマエは素早く衆目に気付かれない速さでアイテムボックスから取り出す──デッキブラシを無言でカーリィナに差し出し、力いっぱい頷いて了承した。

好きにやって良い。という主人の許可が下りた──本来メイドとして、片付けたい衝動が抑え切れず。スイッチ入ったカーリィナが生き生きとしてデッキブラシを手にする。

まともな掃除用具も持ち合わせていない若い船頭たちが、自らの商売道具である小舟を覆う汚泥と苔と格闘するも、いくら磨いても綺麗にならない。無為な時間だけが過ぎ──もう駄目かと 諦めかけたその時。

「もし。───御手伝いします」

こっちを射殺さんばかりの殺気こもった眼で話しかけるメイド。と何度も頭を下げ平謝りする女の子の、謎のコンビがどこからか現れた──はい。か、分かりました。の二択しか返事を許さないといった全身が氷漬けになる冷たく刺さる視線に、あんぐり口を開けたまま硬直して返答出来なかった。

(っ娘がすみませええんんん!!)

趣味が仕事になってるド真面目な我が娘に涙を禁じ得ず 人様とのコミュニケーション力も少しずつ矯正していこう───そう深く心に刻み込むナマエであった。



都市を離れ、大型モンスターを討伐しに僻地を走り抜けるアレクサンドルは人がごちゃごちゃするみやこはどうしても息が詰まり窮屈と感じた──野を駆け、気の赴くまま暴れ回る方が性に合う。煩わしい人混みから解放され、風を切って未開の地を切り開く。今この時は何ものも縛られない自由を愉しむ。

ほんの僅かに気がかりな──イイ面構えしていた勝ち気そう金髪の女は無事に逃げきれたか。──薬剤に関する書物と、スライムの長子が何故かぼんやり思考の片隅で重なる。



「今ならなんとお試し価格!どんな汚れもごっそり洗い落せるこちらの万能固形石鹸が2個ついてきて超お買い得っ!」
「木目に沿ってブラシをかけるんです!床面が傷んでしまいます、角のところは丁寧に!布巾で最後磨き上げる!」
「はッはいぃいいい!!」

ここぞとばかり商売の狙い目と嗅ぎ付けナマエは、屋敷倉庫に大量に有り余っている掃除用洗剤や水桶に布巾等を叩き売り出し。
本職メイド長としての指揮力と清掃スキルをフル発揮するカーリィナが見物に集まってきた住民たちもまとめて引き入れ手本を見せ、先導し。またたく間に頑固な汚れが落ち まるで新品に戻ったよう光沢を帯びて綺麗になっていくゴンドラの数々──

得意な分野になると意気揚々と熱中、周囲の人を巻き込む──この親にしてこの子ありという言葉がピッタリだ!


女子力ガールズ・パワー!!!(物理)




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