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シャーベットジュースの作り方としてはいたってシンプル、お手軽2ステップ。
1.凍らす。
2.混ぜて自然解凍。
たったこれで完成。

冷やした林檎やオレンジのだけを水流操作で種を皮の内側に退けて、粗くミキサー状にかき混ぜ<付与術師エンチャントレス>の付与魔法で氷付けにした果汁が溶ける速度を遅らせる。
費用も掛からず一度に大量生産できるという、捨てる時も木製ストロー刺したままゴミ箱へ回収。エコにもなる。

大ぶりな果実に含まれる多量の"水分"を 種族スキルを使い、人ひとり充分に喉が潤せる水筒一つ分と同じ内容量・飲む果汁を増やした。

音を立てないよう、細く長い氷る滝を噛んで味わい、ゆっくりとした流れのまま喉を降りていき口の中にはさわやかな柑橘の余韻がかすかに残る。かなり沢山飲んだ筈なのにオレンジシャーベットが思っていた以上に、無くならないことにカーリィナは瞼をしばたかせて隣りに座るナマエへ振り向いて。

いつの間にか居た駄牛が主人に睨み利かせている暴挙を咄嗟に頭部へ手刀打ち入れ、咎める。宙吊りにされてたナマエが支えを失い、落下する前に腕の中に抱き留め。痛みに悶絶するアークと距離を開け 従者が主人に歯向かうなど、何をやっているの。きつく問い質す

美人が怒ったら更に迫力が増す。怒鳴り声は雑踏にまぎれて、何と言ったかまでは分からなかったがアークが尻に敷かれているその様子を遠目から目の当たりにした商人らは脳裏に「かかあ天下」と自分たちもよーく身に染みてる単語が浮かんで、旦那とは美味い酒が飲めそう!と一気に親近感覚えた。

思いがけない不意打ち喰らい、脳が若干揺れ 骨に響く重い手刀受け、膝を折り屈んでアークは。この僅かな間に妹が感情を露わにしてきたことに怒りよりも先に驚きを感じる──大将は計算してを外に連れ出したのか。妹の腕に抱き留められている女児の姿したナマエを見遣り
カーリィナがぷりぷり可愛らしく怒っている様を感無量な面持ちで涙ぐんで輝いてる──イヤ、そこまで頭回してねェな。

上の空に居るアークに不快を禁じ得ず、カーリィナは頭を下げるよう言葉を続けようとして真下から見上げてくる視線に我に返り。不敬にも主人を抱きかかえたままであった、幼くあどけないかんばせで上目遣いする愛くるしさに胸がはち切れそう早鐘打つ。

体が水で出来ていてもやはり女性はやわらかいよ。口に出したらドン引きされるの確実なので黙秘しておき。
ひとまず気を静めたカーリィナの腕の中から地面に下ろしてもらい。アークの娘として装い(はよクエスト行ってらー。)全力笑顔で送り出す。

苦虫を噛み潰したよう主人を軽くあしらい、立ち去る兄の広い背中を茫然と眺め──胸中でカーリィナは 主従が実際に離れて行動している光景に釈然としない、ひっかかる何かを感じる。
兄が都市へ働きに出かけてるのは聞き流し程度に把握していたけれど、創造主の傍に居なくとも兄は平気なの──?

腹底に重石が圧し掛かるいやな違和感

「カーリィナ?」

はっと息を呑み意識を取り戻して。差し出すオレンジをいつ迄も受け取らない自身を心配して小首を傾けるナマエに返礼し、残りの果汁を飲み 程良い冷たさと甘味でそっと落ち着かせる。

「リ・ロベルに着いたら寄りたい場所があるんだけど、先に寄ってもいいかな」
「ええ‥、お任せします‥‥」
「あ 外ではエリーって呼んでねっ」

──アレクも冒険者してる時は偽名でアークって言うんだよ。

<念話テレパス>で偽名聞かされるも耳に入らず、略称したあだ名の愛らしさに身悶えてシャーベットを噴いた。愛称で呼べる嬉しさに顔が紅潮するのを実感。

──カーリィナはそのまま変えずに呼ぶよ‥‥かわいい娘の名だもの、ホント似合うと思うしいつわったらイヤだしね

胸が一杯です───!
自身の<念話テレパス>は完全に閉じてるも高まる感情が露呈していないか、かろうじて(恐縮です‥‥)の返事をし、緩む表情筋を力の限り引き締める。

真顔を保ち、ほんのわずか険しい顔つきで考えこむカーリィナに内心動転してナマエは、気分を害する言葉なんか言っちゃった!?まだ荒ぶる娘の心中を理解していない。

「じゃぁ‥人がごった返すし手つないでいよっか」

迷子防止もかねて。カーリィナと初めて街中を歩き回れる楽しみで浮足立つ。
美人さんなカーリィナとデートできるはしゃぐ気持ちが今になって躍り出す心が抑えられない、えウチの娘可愛すぎ!

楽しんでもらえるようガンバろう──!
手をつなぎ、しっかり握り合うナマエの掌から優しさが体温として感じ取れる 視界覆う暗闇は去り何処へでも連いて往ける。この瞬間が永く続けばいいのに。


うれいを帯びた悲しげな雰囲気、目尻がすっと細長く線を引き知的かつ冷たい印象を受ける無表情であるもどこか気品ある色香を感じてしまう、襟が付く上等な黒いメイド服に身を包む端正な美女が幼児を連れている──

リ・ロベル都市の城壁門を行き来する誰もが女性の美貌に立ち止り、釘付けになる。
反してカーリィナは烏合の衆から好奇の目を向けられることはまず無いだろうと自分の容姿に関して余り気に掛けておらず、主人の方は平然として変わらず人波を縫い目的地まで真っ直ぐ進む。
本通りを外れた日当たり悪い細道を行くナマエたちに興味をそそられた何人かの集団が歩行する向き変え、後を追う。

薄暗い路地裏を奥へ奥へとカーリィナと手をつないだまま案内して進み──目当ての店看板を見つけたところで最初に商談しに参上した時より客足が少し伸びているのを見受け、胸を撫で下ろす。

今日和こんにちわーっ景気はどうですか!」

豪快に店に押し入るエリーに嵐の予感がしてならない道具屋店主は頬をひくつかせ、露骨に嫌な顔をした。店の外が騒々しいと窓を見れば、男衆が外窓にべったり張り付いて全員がエリーの隣りに佇む女の方を食い入るように注視している。
また面倒な事になる──。多くの戦場を渡り歩いて来た歴戦の勘がけたたましく警鐘鳴り響く。

のちに西海の小悪魔と名を馳せる




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