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体を水で形成しているカーリィナやメイドたち<水精霊ウンディーネ>は、食事する際に 主食を水分で済ませる。
固形物を消化分解する器官の働きがあまり活発でない為。又 歯で噛むという習性くせが定着しておらず、食べようと思えば 食べられる物といえば、木の実や豆といった極々小さ目なつぶ類に当たる一つまみ食べ物を口に運ぶ。

食べるの大好きナマエからしてみれば
(由々しき事態──ッツ!!)椅子を派手に鳴らし勢いよく立ち上がった。

水って君たち‥‥ッ!粒ってェ‥!!確かにウチで湧き出てる水!飲用可能ですけどッでもそれだけじゃ食事楽しくないでしょぉうよ──!!

ファンタジーか!ファンタジーが地をいく‥‥!!
かけがいのない娘たちが充分な栄養摂れていない自責の念に駆られ、残像が見えるくらい震えてたずねるナマエに対して。カーリィナと部下メイド衆は一様に落ち着き払い、取り乱す主人をよしよしと宥め 柔らかく訂正を諭す

曰く、魔素を豊富に含む湧き水が筆舌に表現しがたい感動的な味であり いくら飲んでも飽きがこない。農耕で育む作物もどれも舌鼓を打ち、力も蓄えられていますのでナマエ様が気に病む必要は御座いません。とな

包み隠さず素直な気持ちを打ち明けてくれたのは、母親と上司の身としてもうれしい、しかし。マソってなんぞ?おいしいのん?
水飲むのに味の違いなんてわからない。納得がいかなかったナマエは食事する楽しさをもっと皆に知ってもらいたい──味変・食感の研究しはじめて試行を重ね 果物を自身の能力でシャーベット飲料にした試作品を娘に贈る。

(水精霊ウンディーネ姉妹が誘い入れた魚人マーマンたちも加わり、時どき忍んで 庭のそこらじゅうに転がってる分裂小マシュロをひょいパクして胃袋に収めていることは。ナマエは知らない。)


規模が家庭内に、と限定し。小さくも 有りそうで無かった使い勝手の良い日用品を開発するのに長けるナマエはこういう他者が喜びそうなモノを作り、商品化へとかこつける──今日もすでにアークが委託販売で卸す品に、お馴染みスライム飲料水と一緒に新たな目玉商品として、惜しむことなく大量に冷温保存施した果物シャーベットも木製ストローとセットで仕込んでおいた。
資金調達に関してチャンスとは、己の手で掴むもの。この大魔神 抜かりない

別行動をりナマエとカーリィナより僅かに遅れて露天商通りに到着したアレクサンドルことアークは、恒例化した行商人集団からの熱意満ちる圧に もみくちゃにされて顔の表情筋を引き攣らせながらも食料品を均等にさばく──過去に大将があきないで成功収めたやり方を思い出して、それを真似。金銭的利益は直ぐに受け取らず、行商人たちそれぞれの家計が収入安定してからでも良いと伝えて、何か知らんが いたく感激され。適当に世間話交わし合う、口数が増えてきたと思う

儲けが右肩上がりに、着実に景気潤う露天商チーム一員に加えられ、お眼鏡に適ったのは良い事なのだが。
人間の考えを理解していない魔獣であるアークは気に入られた理由が今ひとつ分からず、共感に欠け、内心首を傾げる。
店全部に食料品を委託しを終えて 街道進みクエスト斡旋所へ向かおうしたところで突然、意外な場面に出くわして片足が宙に浮いた体勢で<石化>を喰らったようビシィっ!と動きが静止

のん気に手振りしてくる大将の横で。
いつもの仏頂面で無く、ほがらかに表情綻ばせる妹に面食らい、歩を中途半端で停めたまま暫く茫然と開いた口が塞がらなかった。

新作シャーベットジュースに夢中でいるカーリィナの無垢なる可愛さに悶えナマエは得意然と、息子に向けてかるくウィンク飛ばす。──カッチーン!

米神に青筋立つのが有り有り感じられた 妹を気に掛けてるのは手前ェだけじゃァねエぞ‥!!悪態吐いて己を慕わない妹でも末子は守らなくちゃいけねぇぇだろぉぉおが!

(おォ?喧嘩売ってンのかゴルァ‥!)
いけしゃあしゃあと鼻歌歌い出すナマエを目線同じに抱き上げ、至近距離で以心伝心睨み付けるアークの。端から見れば家族団らん良い父親している物凄く珍しい姿を目撃した行商人が総じて息を呑む

傍らにいるすこぶる容姿が整った美女は誰なのか──!?仲間内で多くの議論が勃発することとなる。



かつて無い焦りにベイは平静保てず、図書室に集合していた同胞を人数分けをし各所警護に当たるよう号令を出す。

張り詰める空気を察して、神経を尖らすゴルドを同伴し 屋敷に残る魚人マーマントレスに声を掛け警備態勢は今どういう状況か。
実際にこの眼で視させてくれと、真剣に頼み入り。

了承を得て領内草原の地よりかなり離れた、鬱蒼とした森へ踏み入れ 鏡に似た透ける魔法壁が球体状となって上空、地中を含め領内に外敵が侵入して来ないよう防壁が張り巡らしてある、と教授され──生まれ故郷や周辺諸国をも凌ぐ遥か高度な技術力を生で視て驚嘆するも。
指揮官が居なければ危ういのではないか?かなめは今不在にしている侍女だろ──口を衝いて荒い物言いで問いを投げ、脅すつもり毛頭無く襲いくる焦燥感に自分でも分からず何故こんなにも不安渦巻くのか

「いざと言う時に備えておくことも勿論大事ですが、ずっと長く気を張り続けるのは無理でしょう?」

俯くベイを見上げトレスが場に満ちる沈んだ空気を、澄んだ微笑で打ち消す

「御自身を責めないで‥‥私とて騎士の端くれ──1人で悩まず、近しい誰かに頼ってもいいんですよ」

感極まり膝が訳も無く震えるこの感覚に既視感を覚えたベイは、矮躯な魚人マーマンになにが守れるのか──?意識下で低く評価していた己に気付き、情けなく思う。すぐ横で涙ぐむゴルドに対しても、同胞に真の意味で心開いていなかった

同時にこの場にいないナマエへ
自分の意志を確と部下に継がせている、敵わなくて当然であった──

良い仲間に恵まれている。勝ちや負けの世界ではない自分もナマエのように強くなれるだろうか


屋敷に戻り 主戦力であるナマエと、その実子二名が欠けている領内で警戒を怠ってはいけない──人数分けした配置はそのままにベイはメイド長に叩き込まれた知識を自分なりに考え、行動を起こすことにした。非戦闘員に属する住民には不安がらせないよう、普段通りをよそおい同胞全員に通達を出す。

これで大丈夫と言えないがやれることは全部やっておこう──

窓辺から外の様子を見張るベイが、ふいに裾を引っ張られ見下ろすと。期待に満ちた楽しみなことが起きると思ってる瞳で見詰めてくるフェリシアにぎくりと狼狽してしまう

「ど、‥‥どうかした、か‥?」
「さくぶん!教えてくださいっ!」

児童書を抱えて一生懸命教えを乞うネコ耳幼児にハテナが浮かびまくる。
子守りに連れ添う母セトラから、読書感想文なる宿題が課せられていることを聞き及び──学に乏しい自分に務まるか、しかし無下に断る訳にもいかない

困惑していると母子からは見えない立ち位置にゴルドが身振りしてきて、行ってこいの合図を送る──幼児にかかりきりで十分休みがとれていない疲労の影が窺えるセトラも気がかりで。脳天をかきむしり盛大な溜息を吐いて渋々応諾する。
こんないい気なモンで平気なのだろうか

心安らぐ日もなくては




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