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「添い寝をしても良いですか」

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ファ?

.Now lording...
脳内処理が追いつかないフリーズしながらもナマエは不意を衝くデミウルゴスからの突然の申し出、彼が言いたいことの真意を推し量ってみる。

今自分たちがいるアイテム工房。拠点最下層に設けた趣味のプライベート空間に日曜大工好きなデミウルゴスをこの部屋へ招待してからしばらく経つ。
ちょっとお高めなビジネスホテルをイメージして快適に泊まれる設備もありますけど?お客さん招くようには創ってないよ?贅を凝らしたナザリックと比べたら物置小屋より以下のウチに?なんだって??一体全体どうしたデミウルゴス

今日も家具にして使えるアイテムのデザイン等を和気あいあい話合っていた──

(そういえば‥‥‥?)

なんとなくデミウルゴスの様子がいつもと違ってた──?
冒頭の変な"ファ?"を浮かべてから。高速思考によって僅か1秒にも満たないゼロコンマ数秒の瞬間内で相手が発した言外の意味を汲み取り。導き出した答えは

いいよ
(デミウルゴスはきっと疲れている)

※注:お互い付き合っていません。
ついでに言うとナマエは天才の部類に入る。のだが。自分にその自覚がない上に誇らしげにひけらかすこともない為、周囲からは「訳分からんヤツ」悪口言われる始末。だた一握りの洞察力に優れた者には関心寄せられる。

他者を観察するのに秀でるデミウルゴスもその後者の一人であり。多くを語らずとも1を投げかければ瞬時に意を汲むナマエの察しの良さを把握していた。
主人アインズとナザリックの為 任務に従事して(疲労というモノはこんな風なのか)と身体が倦怠する感覚を抱いた時にふと思い出す。常日頃ナマエが言っていた「休息には寝るのが一番」──

清純な彼女が知り合って間も無い、似た趣味嗜好を持つ異性に同衾の誘いを受けて どんな反応を示すか見てみたい──

断られても別段 支障は無かった。邪な思いも何も‥‥無いとは言い切れない一種賭けのような問いを試みて。まさか了承を得るとは

祝福の鐘が鳴り響きデミウルゴスの思考は固まった。

Yesの返答をし。行動の一切が停止したデミウルゴスに(疲れ溜まってたんだぁ)今度モモンガさんに守護者たちの有休休暇の使いどころ、相談してみよう。
工房の真隣りにある休憩スペースへと疲労して虚無ってるデミウルゴスを引きずって、先にお風呂入るようシャワーブースに案内する。

「じゃ。着替えはあとで置いとくね」

自分は屋敷の方の大浴場で体の汗をかるく流してからお泊り用グッズを持って再び地下に戻る。

その間デミウルゴスはというと。
幸福が飽和状態で(何故 此処に居るんだったか?)考えが追い付いていない不眠不休の任務に就いていた彼は本当に疲れてた。

程好い温度のシャワーを浴びて火照った身体にうつらうつら微睡んで睡魔が襲ってくる。浴室を出て用意してあった男性用ローブに袖を通し。慣れない素足のまま光量を落とした寝所に足を運ぶと、毛布にくるまり寝息を立てるナマエが就眠しているではないか。

(早過ぎでは──!)漸く思考が追い付き崩れ落ちる。童心忘れないでいるナマエの寝付きの良さは知り得ていたが、この短時間の内に深い眠りに入れるどういうメカニズムなんだ。

膝から崩れベットに乗り上げたデミウルゴスが揺らす振動で、うっすら起きたナマエは寝ぼけまなこで毛布をめくり上げる。

「‥‥は?」

呆然とするデミウルゴスの米神に指先を伸ばし、分厚いレンズの丸眼鏡を外してサイドテーブル卓上に丁寧に置く。ひとり分余裕をあけた隣りをかるく叩き入るよう促す。

誘われるよう寝転んで 舟をこぐナマエにより毛布を肩まで被された、ぽんぽんと毛布の上から一定の間隔で叩いて緩々寝入る彼女の温もり。心音。吐息を触れる距離にしてデミウルゴスはこれまで感じたことのない胸の温かさ、じんわりと体温が上昇して力が抜けてくる感覚に抗えず身体を毛布のなか沈め、重い瞼を閉じようとする前にナマエを抱き寄せて夢路を辿る。


地下では日照りが射さず、太陽の傾きが視えず時間を測れないのだが三食しっかり食べる生活スタイルを保つナマエの精確な体内時計で、朝ご飯が出るまで余裕の早朝に目を覚ます。

目の前にイケメンが寝てました。

なにを言ってるのかわからんと思ったけど昨日デミウルゴスとぐっすり眠っちゃったんだっけ。輝くイケメンオーラに目玉潰れるかと。むっちゃ心臓に悪い。動悸がまだ収まらない。

毛布から慎重に抜け出してクローゼットを開き、脱衣場で脱いだ衣服を自動で洗浄・乾燥してプレス仕様にする魔法道具マジックアイテムでデミウルゴスの三つ揃えスーツも中に転送してハンガーかけてあるのを確認して。コーヒーポットを温めるのにスイッチ押す。

寝巻き服を着替え身支度整えて、ソファーに腰かけて起こすべきか思案する。
昨日いきなりの添い寝をお願いしてきたデミウルゴスに深く詮索しなかったけど。よっぽど疲れてたんだなぁ。睡眠の質が普段あまりよろしくない?誰かと寝るとひと肌で体温あったかくなってよく眠れるって本でも読んだのか。

デミウルゴスの住居兼仕事場を見に行った時を思い出し、デスクワークするところと寝る場所が一緒だと気が休まない、いくら悪魔種で丈夫でも休息は大事だよー。検討しておかないと。

アルベドみたいに第九階層で一室丸まる休める部屋を探してみよう。
今度の定期報告でモモンガに相談する内容を意識の底で整理し寝返りをうつデミウルゴスの無防備な寝顔に癒しを感じる。イケメンはずっと見ていて飽きない、今手元にカメラがないのが残念だ。自分で造ろ!髪下ろしたデミウルゴスって結構貴重なんじゃあ?

心のアルバムに保存しまくるナマエ。
モーニングコーヒーの用意をしようとポットまで歩もうとして、クローゼット前で立ち止まる。戸をそろっと開け先刻と変わらず三つ揃えスーツが一着ごと整って並んでる。

ストライプ柄入るスーツジャケットを手に取り、自分の腕と長さ比べたり 肩幅の広さを確かめ当たり前だがやはり男性の身体付きであると──深夜に意識がふと覚めて浅黒い肌、規則正しい寝息で首元の喉仏やら厚い胸板が密着していたのは夢ではなかった。力強くて太い腕に抱かれなんとも気持ちのいい目覚めであった──顔が熱くなるのを実感する。

急いでハンガーに戻そうと背後でベットのスプリングきしむ音に振り返ると。

眼鏡を掛けてるデミウルゴスと目が合う

「「‥‥‥‥‥‥‥‥。」」

静寂が包み。数秒、間の抜けた沈黙を破ったのはナマエの方で何事もなかったかのようにスーツジャケットをクローゼットにしまい、素知らぬ顔で朝の挨拶する

「モ──‥‥ニング コーヒーどゥふ‥っでも、どう飲むかな(無理ーッツ!)」←途中噛んだ。
「いっ‥頂きます‥‥!」

見た。彼シャツ状態のナマエを眼福収めたデミウルゴスは平然を装う彼女の威厳損なわせないよう緩む表情筋をなんとか堪えて返答する、内心歓喜に打ち震え感涙に咽ぶ。

楽園エデンは此処にあった‥!!

初添い寝を遂げたこの後も、寝所や食事の同伴願うデミウルゴスをナマエは承諾(甘やか)し。人間の感情を理解しない悪魔が真に恋心を抱くまで時間はかからなかった。

恋愛に関して超がいくつも付くにぶいナマエが、墓穴を掘ることになる。


この頃は初々しい両者!




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