完全なる狂騒


\(^о^オワタ)/

人生終了の境地に立ち。
パンドラズ・アクターは上記↑の台詞をご丁寧に顔文字付きで心のなか悲鳴絶叫

事故現場はナザリック地下大墳墓 最下層 宝物殿に秘蔵されし、超最高峰レアアイテムが数多と鎮座する聖域。
整理整頓行き届いてきちんと並べられてある魔法道具マジックアイテム倉庫のうちの一部屋、居住地としてあてがわれ(創造主であるモモンガによって厳重にひた隠しにしている)他の守護者たちからも鬼門とする宝物殿になんと。最近になって入り浸るようになるまさかの人物。
地雷でしかないパンドラズ・アクターと同じアイテム作成が趣味のナマエ・エリクシールは、その感情もまともに読めやしないハニワ顔のNPCがモモンガの息子だとは知らされておらず。海よりでっかい慈しみの心でウザいオーバーアクション,突然の敬礼,謎のドイツ語を呆れもせずに、個性と信じて疑わず普通に接する。

パンドラズ・アクターにとって自我が生まれてから初めての感動であった。ナマエ以外の者が軒並み「うわぁ」とか目を勢いよく逸らすか死んだ魚のよう生気を失った瞳で見詰めるかの反応が返ってくるだけ誰も関心示してくれなかった。うれしいという感情を芽生えさせてくれたナマエを女神と崇めた。本気で。時折アイテムに関して嬉々とし語り合うパンドラズ・アクターは幸せであると、出逢いの機会を授けて下さった父なるモモンガに対して咽び泣き これ以上ないパフォーマンスで感謝感激謝辞を伝え

モモンガもといアインズは絶望した。
コイツだけはナマエに遭わせたくなかった。ナマエの自慢の息子として紹介してくれたアレクサンドルを前にアインズは自分の創造したNPCがどんだけ恥ずかしいか羞恥の地獄に見舞われた。だから自分には子はいないと言って秘密にしておいたのに──!!
運のチートみたいなっていうかもう存在自体がチートのナマエがいつどの時パンドラズ・アクターと親しくなっていたのかその事実を。現実を受け入れられず目の前が真っ暗になった。目は無いんだが生きる黒歴史以外の何ものでもないソイツを。他の守護者同様、一個人として尊重して接している有り得ないナマエの優しさがアインズの心に大騒動を巻き起こす。羞恥やら衝撃ビックリやらアンタ天使か神の御使いか女神かそうか分かった俺と立場交代して下さいお願いしますやら色々たっくさん思考がぶっ飛んでパンクした。

そんな魂抜ける程に茫然自失となってる主君の骨折り無駄な奮闘など露知らず。冒頭に戻って現在進行形でその件の女神が大変な事態に陥っている

前からアイテム倉庫を片付けようと約束しており。ユグドラシルで既存のアイテムを基に新しく作成した道具類が床に散乱してしまっていたそれらを手分けして整理しようと、

パーティーグッズのクラッカーとまるっきり同じ、少しだけ大きいそれを。床地面に落ちているのを拾おうとして

「あっ。」
「ん?」

クラッカーの紐部分をパンドラが。
胴体部分をナマエが持ち、矛先が彼女に向かっている状態で互いに引っ張ってしまい今に至る。

破裂音と閃光が同時に発生──
あたりに散る色彩豊富な紙吹雪とテープカットのリボンに被さるナマエが大きく何度もまばたきし かるく小首をかしげ

「ど‥‥‥‥‥どなた?」
「ッアァアアア──ッツ!」

今度は喉笛が壊れん程叫び上げる。

「どうしたパンドラズ・アクターっ!」
「ちッ父上ええエエエ!!?」

見付けるのが早過ぎる。
丁度取って来て欲しかった魔法道具マジックアイテムがあったから。あとなにか途轍もなくイヤな予感が骨の身を襲いパンドラズ・アクターの顔が何故か脳裏に浮かんだ。
アインズはナマエに危険が迫ると、必ず最悪なタイミングでその場へ居合わせるなんなのだナマエセンサーでも搭載しているのかと疑いたくなる高性能を誇る。

「(っは!ヤバイ!何でこんな所にナマエさんいるの!?)違う!(父上呼びするなって言っといただろ!)」
「あわわわ違うんですッあれはこれ、っそそそんな決してやましいとかじゃなく偶然起きてしまって、どどどう回避も出来なかったというか‥‥!!」

いつものパンドラズ・アクターじゃない 直ぐに異変に気付き、ここの倉庫ドアを開る前に破裂音と閃光が洩れていた──イヤな予感が的中するのも常である。

「え──えええエリクシール‥‥?」
「?あ‥‥‥アイ?──思い出せない、」
「「ッああああああ!!!」」

誤って発動してしまった魔法道具マジックアイテム──
『完全なる狂騒』ユグドラシルではアンデッドなどが持つ<ステータス異常無効>のスキルは精神攻撃が効かなくなるという特性がある。そんなスキルを無効化してしまうアイテム、それこそが完全なる狂騒

これまで何度もナザリックを混乱の渦に陥れてきた。けどパンドラズ・アクターが今手に持ってるそれは そのどれとも違う!まず色!どキツイ装飾に出てくる人形が人魚って

「ッ何を考えているんだこの馬鹿ア!!狙ってる狙って作ってたんだろ正直に話せエエ!!」
「オオオ待ち下さいンアインズ様っ!!希望を捨ててはいけませぇん!今ちょっとだけ御名前を呼ぼうとしておりましたよ負けないで父う
「黙ってろお前はも〜〜〜ッツツ!!」

話せとか黙れとかせわしない。
<ステータス異常無効>のスキルを打ち消してしまう効果に加えて。このパンドラズ・アクターは試作で訳分からん抑圧された感情を表に出す、その上 変な設定を付け足すとして完全なる狂騒・改を作ってしまっている。それが何でよりにもよってナマエさんに使っちゃうんだよおおお記憶喪失ううぅうううッ!!?
ペロロンチーノさんが言いそう「エロゲー界ではご褒美です(サムズアップ)」──ッてやかましいわ!!

あ。沈静化起きた
荒ぶる感情が平坦に戻り、<清潔クリーン>の魔法で散らかってしまった倉庫内をあらかた清掃した意外と冷静?なナマエの傍へ

「じ 自分が誰なのか、覚えているか?」
「はいアインズ様 御心配かけました」

変わらずの癒されるナマエの笑顔に拳を突き上げる!よかったあああほんっと!よかったあああー心臓に悪すぎイ

「ただ‥‥」
「ただ!?」
「アインズ様の元のお名前が思い出せなくって‥‥まだ全快とは、時間経過で治るようです」

先程の会話でアインズと言った、そうだっこの御仁はそういう名だったと。申し訳なさそう謝罪に深々と頭を下げるナマエの見てない一瞬で。アインズは息子を張っ倒す
<伝言>メッセージで交わす親子の会話。
(お前後で闘技場裏に来い──いいな?)
(しょっ‥承知しました(ガクブルMAX))

頭を上げるナマエと対面する位置に戻ってアインズは。蹲ってビビり泣いているパンドラを視界に入れないよう壁になりながら一緒に転移する。


ひとまず避難して執務室に連れ出したものの不安はまだ残っている。

「あ‥‥‥モモ
「おうッちょおっとこの場では拙い!」

アインズの執務室には
警護の八肢刀の暗殺蟲エイトエッジ・アサシンが複数控えており当番メイドもいちゃってる。

「あのいえ‥‥こう、喉まで出かかってるんですけど‥‥‥?例えると、書きたい漢字がどんな風だったかあやふやな感覚で、まだ思い出せておらず」

いつものナマエであれば二人っきりの時にしかその名を呼ばない、守護者が居る手前 完璧に使い分けてこなしているのに本当に記憶が抜け落ちている

「申し訳ありません、パン、ド‥‥?彼はどういった意図であのアイテムを作ってたんでしょう?」
「‥‥‥‥‥‥少し待て。」

アインズは自身が持てる最大限紳士な振る舞いでナマエをエスコートして、ソファーに待機させ。
今一度 アイテム倉庫に転移して戻る

「パーンードぉおラああああッ!!」
「ひイイイイイ!!!」

ムフフな展開思い浮かべた己を断罪したい。ごめんナマエさんごめん建御雷さん俺はどうしようもないクズな上司です部下の変態性癖も見抜けなかった駄目なギルマスです許してくれませんよねえええそりゃあナマエさんが記憶なくしてナザリックにいてくれたらどんなに俺が助かるかあああそんな事したらナマエさんの国の奴等が謀反起こして戦争になるんだよ考え付かなかったかアホぉぉおおおおバカもうほんっと馬鹿!!何でこんな馬鹿息子に育ったかなあそもそもの原因ってか元凶俺なんですけどおおおオオオオ

思い付く限り全部の死霊魔法をぶっ放して、何度も沈静化が起きても止まらなかった──虫の息になったパンドラ置き去りに。絶望のオーラを背負ったまま荒みきったズタボロの心を潤してくれる。ナマエの元へ転移して戻る

「アインズ様」
「今戻った──(え?)何をしてる、」

机上へ書類を並べているナマエを見付け やるせない憤りで張りつめる肩の力が抜けるとともに。まるで秘書然として仕事してる?目の前の光景にどもってしまう

「不在中に報告書を提出しに来てくれた嫉妬の魔将イビルロード・エンヴィー、次にナーベラルとハムスケ、最後にマーレの守護者たちから書類を預かりまして、重要な順からお目を通せるよう‥‥あ、もしかして余計でした‥?出しゃばった真似をしてとんだご無礼を
「待て ちょっ、と待て(※小声で→)記憶は?まだ完全に治っていないんじゃ‥」
「なんとか乗り切りました」

そういうところがああああああ今はその優しさが痛い!罪悪感に耐えられない心に棘グサグサ刺さるーやめて!SAN値が物凄い勢いでゼロになる!

それとなく。メイドが口に出す訪問者の名で事なきを得た。
今日のアインズ当番であるシクススも、いつもと何ら変わらない様子で通常の仕事に励んでいる。
至高なる御身と同格の地位におわすナマエと同じ空間にいられて、業務を共に出来るなんて天にも昇る幸福であると、足が地に着かない。

大変な目に遭って軽度の記憶喪失になってるのに守護者の誰にも気付かれてない上 快く応対するなんて、どれだけの胆力があればそんな神業!?

「あっ、‥‥‥‥‥有難う」
「よかった、ハムスケからの報告書ですがほんの少し文字が崩れちゃっているのでこちらで修正しておきます」

今日はアルベドはじめ、女性の階層守護者たちは休暇になっている。本来ならばアルベドがこなすべき仕事をナマエは指示させていないのにも関わらず即対応して主君を補佐する。

呆気。あいた口が塞がらない心境のアインズだが現実世界で骨身にまで刷り込まれた社畜精神が業務をこなすという行動に体が突き動かされる。日付順と優先順位に手元に揃えられた報告書に目を通して、判を押す。積まれていく済んだ書類をいつの間にかナマエは最古図書館アッシュールバニパルの資料保管室に収めたり、次の閲覧すべき守護者に手渡しに行く。

「─────ぅう‥ッ!
「アインズ様!!?」

修正加えた報告書を添付してから渡し。かろうじでナザリック内の構造は覚えてた、すれ違う挨拶声かける守護者たちの名前思い出そうとしたが喉に引っかかって言い表せなかった、けど持ち前の元気ハツラツ笑顔で又も乗り切った。出払って再び執務室へ戻り肝を冷やす

モモ──?やアインズ様が泣いてる!!
何か失礼しちゃった!!?

仕事が凄いやりやすい!!

感涙にアインズは無い筈の涙腺から涙が止まらない衝動に机に突っ伏して泣くわ泣くわ。
通常時ならアルベドがずーっと熱視線送ってくるわ他の守護者(特にシャルティア)の業務妨害邪魔して仕事進まないわデミウルゴスが深読みスキルで俺の知らないところで話しがどんどん進んでいって支配者ロールが日に日に無い胃がギリギリと頭痛も酷くなる一方で難しくなるわ

「エリクシール!」
「は!」
「ずっとナザリックにい

執務室の廊下外からのノック音で遮られ
シクススに呼ばれ机ひっくり返したい!

「デミウルゴス様が面会を求められています」
(いッち番ッ気付かれちゃ拙い人物来ちゃったあああアア!!!デミウルゴス何で今来るの!?頭のキレるデミウルゴスのことだナマエさんの記憶喪失直ぐに感付いて大騒ぎに!取り返しがつかない惨事になるヤバイヤバイヤバイ!!)

パンドラズ・アクター詰まるとこ創造主の俺が監督不行きで失望される!それだけは何としてでも阻止しなければッ!!

(早くナマエさんをッていない!?)

執務室の更に奥にはアインズの寝室が設けてある。そこに素早くナマエの身を隠しておけば!と振り返り傍にいた筈のそのひとが忽然と消えて

牧場での羊皮紙の調達実績等、その他周辺諸国の動向を幾つか報告にデミウルゴスは約二週間ぶりにナザリックに帰還した。御身が在席していると、悦ばしい。故郷の地に帰ってきてから更に機嫌がよくなった

不意にメイドの顔が覗く、反対側の閉じられた扉が開き。分厚い眼鏡の奥に隠れる無数にカットされている宝石の瞳がこぼれ落ちるほど大きく見開く

「───で  デミウルゴス ? 」
「ナマエさ
「デミウルゴスっ!」

シクススは見逃した!惜しい、今この時ばかりは思った!持ち場を離れる訳にはいかないメイドの意地として。けれど一瞬だけ目撃して女の勘が冴えわたる

完全に予測外であった。予期すらしていなかったナマエとの再会。
まるで無垢な少女の如く警戒心無く眩しい笑みを浮かべて胸に飛び付いてきた、今の彼女は成人女性。遊び心でたまにスキルを使用して少女に姿を変えるが自分の前だと凛とした強い意志を持った御顔で接する、大人として。秘めたる関係となってからは色々な表情を魅せてくれるようになった褥で彼女は

はっとデミウルゴスは無意識下でも反射的にナマエを抱き留め、腕の中に閉じ込めていた手を降参のポーズで一歩後退離れる これ以上密着して居たらば拙かった特に下半身事情が。

「エリクシール‥!急に出て行くな、」
「アインズ様!私 大丈夫ですっ」

何が?とはこの場にいるアインズにだけのみピンと合点がいった、魔改造した完全なる狂騒の効果が切れたやっと!

(え?そんな早く??簡単に?)
「ウチに帰らなければ!長居してすみませんでした、デミウルゴスもアインズ様に御用があるのだろう?私はこれで失礼するから気兼ねな
「地上まで御送りします」

眼にも停まらぬ迅さで報告書類をアイテムボックスに投げ飛ばすデミウルゴス。一秒でも長く彼の女性と居たいが為、先刻の抱擁だけで満足するとでも?この機を逃して堪るものかとナマエの提案を遮ってでも進言する

今の今まで記憶に錠がかけられているような。靄が付いて回っていたが綺麗に拭き払われた、きっかけはなんだったか。ノック音のあとに耳打つその名に。起きているのに目を閉じて眠っていた、デミウルゴスとの久しぶりの再会にうれしくて気がついたらハグして見られたか?まずったー今度から注意して行動せねば

モモンガの名前も思い出せたのか、先程よりも元気を取り戻しているナマエにおおきく安堵のため息を胸を撫で下ろす

「(危なかったー!)そ そうだなぁデミウルゴス‥‥!外までエリクシールを連れてってくれるかあ?報告はその後でも構わにゃ‥、ないぞー」
「畏まりましたアインズ様」

ぱっと花は咲いたよう様子というか雰囲気が明るくなった、アインズは何か引っかかるモノを感じる

なぁにこの甘い空気?

長い長い廊下の向こうへ去っていく二人が会話弾んでて楽しそう──デミウルゴスが笑ってるあんな緩んだ表情見たことがなかった

(え────えぇ?)

引っかかるソレが何なのか検討付かず立ち尽くすアインズ、ドアを隔ててシクススは──心中でデミウルゴスとナマエへ祝福の拍手をひたすらに捧げる。



屍と化したパンドラズ・アクター
消し炭になりながらも この言葉を紡ぐ


「Lie‥‥‥ Liebe ist groβartig 」


どこからか鈴の音が鳴ると共に息絶える


ドイツ語で直訳すると。『 愛は偉大 』


そういやモモンガさん 父上って?




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