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北東に王国首都リ・エスティーゼ。
南下すると切り立った山塊が別称で死出の山路──急峻な岩峰越えた先に亜人国アベリオン丘陵。
海岸に沿って南西に巨大な砦を国境線としたローブル聖王国。

その中央に位置する王国西側・海辺都市
リ・ロベル都市

王国領土として四番目に広い領地でかつては六大貴族にも迫る権威持つ海産業大都市であったが。モンスターの異常大量出現により、海から土地からと生活圏域を奪われ やむなく商業,他国との交易も衰退を辿る──

リ・ロベルは海に面して天候変わりやすい。低気圧、大潮、海原からの吹く暑い湿潤風によって高潮が発生し被害を免れる為 街には運河が道路に張り巡らされている。さながら水に浮かぶ都である。
主要な交通移動手段はゴンドラ小舟による人や物資の運搬になる。建物は古めかしい厳格な印象とするレンガ造りを外壁に、防水に強い石材を基礎土台にした五階立てが基本。家々がつながって壁を連立築いて満潮大波を防ぐ構造と成っている。

迷路のように狭くて曲がりくねっている道路路地。水路の運河を架け渡す橋を上りアレクサンドルは心労が後を絶たない 己の未来を不安が押し寄せ

何でこうなった

足元すら覚束ない。気力だけでふらつく歩をなんとか前に──先導歩く、女児の姿にまた化けてリ・ロベルを機嫌良く跳ねて闊歩するナマエのちっこい背中を未練たらしく睨み付けながら後を追う。

都市に足を踏み入れる前からチラチラ、擦れ違う立ち止ってる老若男女問わず人間共が好奇の目で見てくる。刺さる熱視線を受けて、落ち着けと云う方が無理だ苛々さえしてきやがる

巨漢のアレクサンドルはなにかと目立つ──成人男性に化けていても、だ。歴戦の覇者が意図せずして醸し出す圧し迫る存在感は。一般人にとって目を引くのは当然といえよう。
連れ立ってリ・ロベル領地に再び舞い戻る前に。拠点屋敷の自室でナマエは息子プロデュースとは口に出さず胸にしまい 一手間加えた。


「ちょっと英雄になってこい」

ぽんっとかるい調子で。
手合せしてどっちか勝った方の言うことなんでも一つ聞く、承諾した数時間前の己を呪う。後悔先に立たず──反論なんか親にとっちゃ只のごねてるとしか思ってねエ聞いちゃいねエ。

「人間がいる前では<人化>を解くな」

そう云われて眼鏡──魔法道具マジックアイテムをご丁寧に顏に掛けられた。

「眼鏡萌え」
「あん?」
「んんっ、やぁ〜眼鏡萌え」
「咳払いして二回も云うなや。」

丘小人ヒルドワーフたちと共同製作した魔法道具マジックアイテム。アレクサンドルの異形種としての真紅の虹彩、縦に割れた瞳孔を人間の黒目に見えるよう幻影魔法が施してあり。異世界の文字を自動解読できるよう翻訳機能も搭載。周りを威圧する気配も幾分か抑え、存在感を稀薄に出来るかは実際 市街に往ってみないとわからんか。

「英雄とは何だと思うね?」
「はァ──?‥‥‥一番強エ奴の事、」
「違う。最強は目指さなくていい」
「はっきり云えよ!俺に何させようってェンだ、人間救えって?隠密心掛けるンじゃなかったのか」
「今からお前はアークと偽名で名乗れ。私もエリーと、事前に決めた娘として徹底して接しよ。冒険者稼業で荒稼ぎするそこで英雄とはなんたるか自分で学べ」

<下位道具創造>クリエイト・レッサー・アイテム

眼鏡掛けた人に化けて。
修行僧を彷彿する──高級綿麻の布を素材、濃紺色の詰め襟で長袖・丈の長い上着。肩から胸板に斜めに釦掛けがスリット入っている、真白色の足首括るゆったりした幅余裕ある下穿き。靴も新調し素足のまま履けるヒールがなく、爪先が丸い しっかり大地を踏みしめて柔軟に動作対応する造り。

「50のクエスト依頼を成功する度に手合せしよう。私はその間 クエスト中は口出ししないし助けもなしだ」

好機と取るか、悪巧みしてやがるか

「お前ならばすぐにクエストこなすだろう、学んで成長した強さで私を負かしてみろ。その先でなにを得るのか──楽しく往こうじゃないか息子よ」

絶ッ対エ 後者だ!

リ・ロべル冒険者組合斡旋所に到着するなり早々に別行動となった──!調べモノあるからだァ!?手ェ貸さねエって、マジ俺一人でクエスト受けろってか!!

事態がまるっきり把握出来ない!
アレクサンドルにとって超未知の経験である。例えるなら。ようやっと二足立ちが出来るようになった、よちよち歩きの赤子が突然外に放られると同じ。獅子が子数匹を、崖へと突き落とし這い上がって生還出来た子だけ真の雄と認めるそんな野生じみたスパルタ教育

こんな事有りはしなかった!咆哮が頭のなか ぐわんぐわん木霊するユグドラシルでは常に創造主ナマエの側を離れず命令聞いていればとんとん拍子でクエストバトルや戦争にだって、知らず知らず勝利が降ってきた誰が其の勝鬨かちどきもたらした!?他の何者でもねエナマエの鬼才によって

その大将が居ない──!事実を、
現実を受け止めなくては

────どうやって?

首に冒険初心者の証・銅のプレートを掲げて依頼内容の張り紙が乱雑に掲示しているボードを目前に立ち尽くしてしまう

(一人!?俺一人!!何が出来るってンだ俺は従者だ──ッツ、!?)

昨日の大将との諍いがフラッシュバック

私の背で世界を閉ざすな

誰かの後に付いて行けば 道は楽だろう
だがそれは自分の人生とはいえない

自分の道を歩んでいくのなら

自分自身の足で 前に進んでいくしか


(────ああ)

馬鹿は己だ

一度も 大将は"従者"と云ってなかった



──流れこんでくる 息子の心が

アレクサンドル専用に製作した眼鏡に。<念話テレパス>の魔法封じ込めた上級水晶をレンズに加工して、大体感じていることを。遠く離れる距離でも察せるようにした

細々と営む本屋と小規模過ぎる図書館を練り歩きながらナマエは片眼鏡モノクルを掛けて異世界の文字を完全に習い終えた。
執念としか言いようのない学習速度で先を往く

(アレク‥‥‥従わなくっていいんだ、)

私はお前たち我が子を"臣下"と呼んだ。

臣下とは。君主に仕える者──私が望むは臣民をより豊かな暮らしに導くこと、その手助けを力を貸してくれる家族をそう呼んでいた。

従者と卑下して自分を見失うな、お前は生きている 仲間を誇れ


お前は一人じゃない


息を吸う、視界がはっきりと明確に鮮明化したかのよう目が覚めた感覚が研ぎ澄ます──

「──アークさん?アークさん、」

うしろからかるく叩かれ、知らない女?知らねエ名前

「俺」
「アークさんでいらっしゃいますよね」
「あ──ああ、そうだ‥‥」
「っ良かった!冒険者組合を代表して私共からも多頭水蛇ヒュドラを退治してくださって深くッ深く感謝申し上げます!!貴方は英雄です!ロベス卿が是非貴方様と娘さんに御逢いしたいと召喚状を預かっています」

記憶を辿れば目の前の侍女は確かクエスト斡旋の受付嬢だった、矢継ぎ早に云ってくる会話の内容が頭に入ってこねエ誰よ?召喚??手紙???

──引き受けろ。息子よ

頭のなかで大将の声が響いて飛び上がる
凄エ明瞭に聞こえたモンだからこれがマジモンの<念話テレパス>か!眼鏡に仕込んでやがった盗聴もかよッ!?

──ビジネスチャンスだ、逃す手はない
(本丸に正面突破ァ?って考えあンのか)


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