016


拠点屋敷の構造。地上三階立て、高さ十五メートル、床面積八百平方メートル。
一階に中央ホール、周りに応接室、会議室、医務室、大浴場、食堂にキッチン、ナマエと臣下たちの自室があり。二階に図書室と主に一般客室七十数部屋が占めている。三階が屋上バルコニーで拠点を一望できる。

そして地下二階構造。地下一階層目に食糧備蓄庫、避難シェルター、武器庫。もし敵軍勢がここまで侵入して来た際 地下に降りてくるまで数多のトラップ仕様で、もはや要塞といって過言ではない、拠点生命線となる最終防衛ライン。
最後に地下二階層目にはナマエが通行を許した者でしか出入りできない魔法の扉で閉ざされており、地上へとつながる避難経路が続き地中張り巡らしてある。
しかしそれは単なる僅かな時間稼ぎでしかなくナマエが命落とせば総て敵の手に渡るということ。

村人たちを自らの拠点へ住人として迎え入れ。カーン・ベイディクド率いる獣人ビーストマン総勢二十四匹を味方に、我が子たち臣下を、フェリシアとセトラさん家族を守るというのは命を預かるのと同じである。

(復活アイテムなんて超レアアイテム──そんなにもってないし、そもそもこの世界で有効なのかもわからん)

心許ない。微課金してアイテム増やしてなかった過去の自分を悔やむ。ナマエは一人屋敷の地下へと階段を下りていく間に。これまで得られた情報を頭の片隅で整理

元エストルグ村から回収したのは情報収集の為の資料書類だけではない。
住民から税として徴収していた金銭も奪還に成功している。だがそれをナマエは自らの軍資金とはしなかった。住民自らが骨身をすり減らし汗水垂らし、切り盛りしてやっと貯めていった財産である。そんな大事な金銭を自分のお財布には入れたくない、奪還できた全額 村長はじめ住民家族に返納するのに凄まじい押し引き合い。最終的に共有財産としてそのままに住民たちと私たちとでとっておこう という話し合いの結果となった。
まぁ!使う気は毛頭ありませんけど!

ポケットに入れていた貨幣は魔法で複製した偽メダルである。時間経過で消滅するそれを握り締め、最下層まで降りナマエは目的の扉前まで到着した。

重厚で強硬な楢ノ木オーク製の鋼鉄で縁取られている扉。地下二階層の一つにある住居兼工房──その玄関扉をノック三回。

先生ドックーみんなぁーいるー?」

ドアノブの鋼鉄輪をひしゃげて壊さないよう引いて、広大に拓けた地下洞窟内で金槌を打ち続ける幾つもの鉄打つ音が鳴り響く、工房奥へと進む。

「ほっほいらっしゃいナマエ様」
「やぁドック。あ皆そのままでいいよ」

作業場には黙々と武器、鎧、装飾品とそれぞれ夢中で道具製作に取り掛かっている丘小人ヒルドワーフたち、全員で七名。
平均身長百二十センチ。壮年の歳を重ねても身長変わらず背丈低くとも力強く屈強で、多くの髭を蓄えているアイテム製作鍛冶師の玄人集団。
丘小人ヒルドワーフ七人衆はナマエが作成したNPCではなく。ユグドラシルゲーム内でいくつかの条件が重なってたまたまクエスト依頼人として出現したレアキャラクターである。彼らの占拠された地下資源坑道をボスモンスターから取り戻すイベント報酬として、強制的にナマエの下についてきた七人。
名前はリーダーである「先生ドック」に続いてお察しのごとく、和訳しちゃいろいろとおそろしいので何人か略称「ドピー」、「スニー」、「ハッピー」、「グランピー」、「スリーピー」、「バッシュ」。
ホワイトでスノーなどなたが脳裏でちらちら見え隠れするんだが、こちとら元引きこもりゲーマー現領主じゃ!今そんなファンシーおしとやかやってられんわ!

「今日はどうしたんだい?」
「んんっ、いや皆の様子を見に来たのと色々相談したくて」

手に持ってたこの世界の貨幣──銅メダルの一枚を見えるよう腰をおとし、目線をあわせる

「これどう思う?」
「ふむ──?」

ドックがそれを受け取り。かけている眼鏡をあげて視点を定める

「これ
「なんじゃア!こんな粗悪品どこで拾ってきたァ!?」

グランピーがいきなりドックの手から銅貨をかっさらって怒鳴り散らす。うんそだねー私もそう思うー

「この世界のお金なんだけどね、やっぱ技術力もそう高くないかぁ」

精巧なんてとても言えたものではない。自分たちの職人技術の方が遥かに優秀だと憤慨してるグランピーを宥め。突っ返された銅貨を握り締めて、複製魔法を解除してデータの塵にする。

「ユグドラシルの金貨はここでどのくらいの価値があるか村長さんたちもわからないって言ってたし──またお金稼がないと」

地面について座り込み。過去の傭兵時代──初期レベルの頃はあれはたまったもんじゃなかった婦人会ならぬ鬼婦人同盟という名のギルドのメンバー全員が既婚者の奥さん方でネトゲ廃人になってる夫たちをPKしてきてっていう依頼で羽振りがよかったから引き受けたもののあとから知ったもんだから上位ランカーの夫さんとお友だち皆さんの反感買っちゃってPK仕返ししまくられた目先の欲先走った所為でえらい目に遭った依頼人の奥さん方の素性もよく知らずに気付いたときにはギルド解散してた報酬はきっちりもらえたけど女性っておそろしいよこわいよあのあと夫さんたちとどうなったか考えると寒気が最速トップスピード

「ナマエ様っ!ナマエ様!?」
「ッは!」

トラウマが呼び起されて意識飛んでた!
自分の周りに心配そうに覗き込んでくる丘小人ヒルドワーフたちに無事帰ってきたと元気アピール

「大丈夫っ大丈夫!ちょっと昔の泥沼修羅場に巻き込まれたのを思い出してて、いやぁお金稼ぐってのも楽じゃないなぁ!はっはっは‥‥‥ハァーっ」

真っ黒い影を背負って重く溜息つくナマエに(あ。ダメだこれぁ)丘小人ヒルドワーフ全員がフォローやめた。

「そうだっ皆にいくつか作ってもらいたいアイテムがあってね!相談にきたんだよ」

とたんに瞳に輝きを増す丘小人ヒルドワーフたち、ナマエの子でもなく従者じゃなくとも手に職付ける鍛冶師にとって頼られるのは嬉しいもの。

「えっとー今考えてるのは二つで」

距離縮めて乗り出してくる皆に耳打ちするささやく音量で要望を伝える。

「──ほっほそれはまた面白いものを」
「そんなン朝飯前だァ!」
「う〜ん作れるかなぁ〜」
「ナマエさんの協力も必よっくしゅん」
「またこちらまでおいでください!」
「あ、あの‥!ぼくガンバります‥‥」
「スー‥カー‥‥んんっ」

七者七様の気持ちの良い返事に満足──いや一人寝てね!?完成に数日かかるだろうけど、今度は彼らの好物であるお酒でももって通うかフェリシアたちとも仲良くなってもらいたいし。

「そういえばこんなモノを地底湖で拾いまして」
「うん?」

この工房地下二階層は避難経路の他に、拠点中央の地下にある地底湖にも道がつながっている。地底湖近くにあるアイテム倉庫に点検確認しに行った際に、ドックが見つけて拾ったというそれを受け取る。

「水晶──?」
「魔封じの水晶が砕けてしまったのですが、少々おかしいと思いませんか」

魔法を予め込めることで、一度だけ使用できるマジックアイテム──これに<永続光>コンティニュアル・ライトを持続的に魔法掛けて地底湖地下全体を光り灯していた。通常であれば効果が切れると自然消滅する筈なのに、何故か掌サイズの大きさに収まってる。砕けて?分裂した?なんで??

「地底湖の地面一帯に群生してました」
「マジかぁあ!?」



新天地である農村。足元地下にも広大な敷居がひかれていることなどまったく夢にも思っておらず住人たちは、かつての活き活きとした土壌に実りある生命を育て、心通わすことをやり直せられた同郷の者たちと力を合わせて農業に勤しむ。あと若干の獣人たちとも腰引けながら協力して。
元領主に負わされた傷は深い。屋敷砦から戻ってきてくれた娘たちは新しい家から外へ出ることもままならない。でも少しずつだが安心して眠れる場所とあたたかな食事のお蔭で、会話も増え表情も徐々にほぐされていっている。荒んでいく日常が当たり前だと感情まで麻痺していく。それに気が付かせてくれたエリクシール様には感謝しきれない。

せめて自分たちができることで彼女に喜んでもらえるよう。住人たちはそれぞれの家族のもと精一杯の仕事で返そうと役目に励む。

遠くの屋敷の方から声がきこえる

「村長はいるかーっ!!」

件の──エリクシール様本人が超スピードで居住区まで走ってきた。村長呼びながら叫んで

「エ、エリクシール様‥村長ならあっちに」
「やぁありがとうねっ!それと様なんて付けなくっていいよ!今日もお疲れさまでっす!」

指差し示してくれた奥さんにお辞儀して猛ダッシュで村長の元へ急ぐ。

「村長ぉおうっ!!」
「はいいい!エリクシール様‥‥っ!!あのぅ私め、もう村長ではないと思うのですが‥」

家々の傍にも鶏たちの囲いを作っておいた。そこで餌やりしてる目当ての村長を見つけ

「なにをいう村長!貴方には皆の代表という立派な役目があるじゃないか!いよっ村長!村長インザ村長っ!!」

突然ほめて持ち上げて拍手すらし出すテンションがおかしい。
いやですから今の領主、貴女様

「っそれよりも村長!!」

向かい合わせで村長の両肩をもち(潰さないよう)周りにいる住人たち獣人ビーストマンもあわせて何だ何だ?注目が集まるなか

「デートしよう!」

衝撃発言にその場にいる全員が持ってた農具、撒き餌、洗濯篭を落としまくって愕然と顎外れる


クエスト行こうぜ!




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