013


皮膚をざわつかせる痺れるような感触
首筋を撫でるつめたい感覚
体と心が引き締まって力込める四肢と牙
呼び起される熱き血潮の衝動

忘れられる筈はない

戦いが 何者か
命散らし散っていく闘争のにおい



粗方 消し炭と化していく栽培場を見届け、自分たちも合流地点の屋敷へ向かおうと転移魔法を発動する寸前

──ナマエ様
(ん?カーリィナ、どーした)

拠点防衛に留守番している娘からの念話で魔法発動を止める。


拠点の周囲警備に就いている魚人マーマンシンとセイスが静止の声掛ける

「止まれ!外は危険だ!!」
「屋敷に戻れっ!」

立ちはだかる魚人マーマンらへ真正面から急接近して互いに衝突の寸で一気に上空へ跳躍。西の森へと凄まじい速度をもって姿消すフェリシアを、屋敷の窓から監視し続けていたカーリィナが念話を続ける



──仰ってた通り。娘がそちらへ向かい始めました
(そうか、やはり獣の勘は伊達ではないな。シンとセイスを振り切ったか)

カーリィナに事前に言い渡しておいた。仮にも獣人のハーフだ、もし闘争の気配を察知してエストルグ村へ行くとなったら自由にさせておけ。と

(どれくらいでこっちに到着すると思う)
──容易たやすく。馬より数倍の迅さです
(了解した。セトラさんが心配するだろうし、目が覚めてから直ぐこちらへ転移してくれ。シンとセイスはそのまま待機)
──畏まりました。どうぞ御心のままにナマエ様

念話を終了し。ふて腐れているだろう息子の元へ転移魔法を発動する


さぁ運命が大口開けて待ち構えているぞ


屋敷砦の執務室、西方の栽培場から焔の灯りが、屋敷をぐるりと周りから階下からも絶え間ない断末魔と肉と骨が砕かれる音が段々と近づいてくる。

「ッなな何だというのだ一体!!何が起きてる!?反逆か亜人の奴らか!麻薬の栽培場を失えば八本指の連中が何をしてくるかッわ私は、私を守れ!!ヨーデルフ!!」

威厳すら微塵も感じさせず、額に油汗をにじませ歯の根をうまく噛み合わせられないまま戦慄に身震いするファクシムは保身のみ思考をまわす。

ドア越しから警護兵士勇んで突進していく怒声が鼓膜を震わすも、金属音と肉潰れる小さな呻き声で静寂が訪れる。

痛いほど静けさが耳鳴りを起こし。執務室内にはファクシム領主と抜刀構える武官ヨーデルフ、そして部屋の隅で縮こまって丸まっている侍女がそれぞれおののいている

存外 気を抜かすドアのノック音が三度。
喉ひきつって声出せないファクシムを無視して開かれる扉

今晩和こんばんわ。こちらに村娘さんはいらっしゃるかな?」

扉から美女の部類に入る女性の背後に全身を余すところなく朱塗れになっている大男と、魚人マーマン一匹にそして兵士の装いで一番後ろに控えている村の男性。
自分が呼ばれたのであろうか縮こまっていた侍女が顔を上げると、光りを瞳に宿し立ち上がる

「お父さん!!」
「ああっ良かった‥!迎えに来たよ」

侍女が駆け寄ってくる道をあけ、父と娘を再会を果たし。側付きをしていてくれてるクアトロに二人を外まで案内するよう念話で指示する。

「ここは危ないから。部下についてって外へ皆と合流しなさい」

男性は会釈し、娘の肩を抱き支えながらクアトロの後ろへ付いて去っていく。

しかし馬鹿だなコイツら。人質取っておけばちょっとぐらい時間を稼げたろうド素人が

ナマエは室内をかるく見渡して机上で乱雑に置かれている書類に 転げたカップから零れ散る紅茶を目にし人差し指を向け

「おッのれ虚仮こけにしおっぅぶう!?」

常時発動型特殊技術パッシブスキルの一つである<水流操作>で机と書類に零れている紅茶の滴を宙に水玉として浮かし、喚き声を黙らせて声帯の辺りで紅茶を停滞させる。

「生憎 腐れ外道と会話しよう言語は持ち合わせてないんだ」

魔法詠唱者マジック・キャスター──!!ヨーデルフは更なる魔法を繰り出される前に、床を強力に踏み抜いて一気に距離詰める

「<剛腕>!<斬撃>!!」

抜刀左腰から筋力増強する武技を加えた一閃がナマエを胴体ごと斬り落とす

「ん?なんかしようとしたかコイツ」
「鈍すぎて分からんかった、ただの掛け声なんじゃない?」

昨夜 遭遇した死霊レイスの剣筋の方がもっと鋭かった。

ヨーデルフは愕然と眼前の脅威に打ち震える。一閃奮った筈の己の剣が、鍔元から僅か刀身を残しへし折られている──剣先が大男の手に平然と持たれて、なにも、見えなかった、確かに女を斬り落としたと己の経験から幻を錯覚したのだ

「ばッ!化け物‥!!」
「怖気づきやがった──あーあ。手前ェがここで一番強そうだったてェのに、とんだ期待外れだぜ」

アレクサンドルはへし折った刀身を放り捨て、拳をかるく握った状態で腰引いて震えている武官の額へ中指だけで弾く。瞬間 衝撃破が生じるとともに壁にぶち当たり絶命

その間も呼吸ままならず喘ぐだけの豚を無視して、ナマエは机から書類を一枚拾って栽培場で受け取ったメモとを照らし合わせる。

(筆跡が合わない‥‥なにかの指示か、暗号か──他にも獣人ビーストマンを捕虜にしようなんて馬鹿な考えをやらかした奴がいるな)

用済みの存在に辿るべき道は一つ。

「おいおい折角淹れてくれた紅茶だろう 残さず飲めよ」

気道を塞がれ、青白く顔を涙と鼻汁とよだれで汚している。水玉を解除して、嘔吐し這いつくばってるそれに対しただ無情に見下ろす


最早人とすら認識しない




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