005


ネコ耳娘が切に望む母親とともに救出する緊急クエストを是として承り。相手側の人数を見渡し

何だこれ?

到底 兵士とは思えぬ士気と練度の低さが窺える。ナマエと対峙して最前列に並んでいるのは使い古され錆付くシャベルや鎌、鍬など農具を握りしめているどう見ても村人。やつれ疲労が蓄積してる形相で怖れひきつっている。
腰引けてる村人の男性八人を前進させて、後方にばらけ控えているのが貧相な装備で統一している兵士ども。
最初にドロップキックで蹴り飛ばして遥か後方で伸びている兵士を頭数に入れてもカーリィナが報せてくれた人数と一致しない。

小煩こうるさわめいている兵士をスルーして足元に転がっている剣を拾う。フェリシアとセトラの命を刈り取らんとしたそれを掴んで、柄が歪に折れ曲がる

(えっ?軽く持っただけで?)
「聞いてるのか女ァ!」
「おぉーい大将、まーた先行って従者置いてくなってぇーの」

ぬっと暗闇から不意に現れる巨躯のアレクサンドルにナマエ以外全員が息を呑む

「盛り上って‥‥なさそうだな」
「ああ。完っ全に外れだ」

使いものにならない剣を放り、落胆してわざとらしく肩を竦めて溜め息吐くナマエとアレクサンドルにリーダー各の兵士が業を煮やし、激怒に体を震わせて鞘に収まる剣を握る

「ッ貴様ら、」
「どういう事だ。部下が一人やられているではないか」

兵士たちの後方から馬に騎乗し、近衛を引き連れて遅れて合流する

「ハドリュー隊長っ!」
「女子供相手に何をもたついてる」

兵士どもが緊張してる様子の中に、嬉々とした表情を垣間見せるのに対し村人たちの怖れが更に色濃く宿す。
カーリィナの言ってた人数と合ったしなるほど屑だな

「まさか──そこの、大男貴様がやったのか?」
「冗談だろ」

失笑を禁じ得ないアレクサンドルが興味失せ一瞥して、次いで敬意の眼差しをナマエに向ける。
怪訝そうにハドリューの眼に映る見目麗しい女の細腕に、どこにそんな力があるのかと疑問を投げかける

「何者だ」
「(手前ェが先ず名乗れや‥!)」

礼儀も糞もないハドリューに青筋立てる息子を察して、ぽんぽんとかるく叩き宥める

「か弱き民を守らんとするただの通りすがりだ」
「答えになっていない。そこのハーフと女は大罪人だ、大人しくこちらに引き渡せ。さもなくば」
「先刻聞いたよ阿呆め」

下らない前口上を遮り、どよめく周囲を無視して。沸々と腸が煮えくり返る激情とは逆に冷静に心を鎮めナマエは自分を客観視できる程に論理思考を回転させる

「まったく──生きてきた世界は違えど 権力者が弱者を苦しめ搾取しようとするどこも変わらないな」
「何だ?何を言っている‥」
「この人たちは私がナマエ・エリクシールの名に誓って救う親子だ。渡さんよ」

不敵な笑みすら浮かべるナマエにため息を吐き、ハドリューはいつも通り。思い上がった格下の底辺に位置する愚者に審判を下す

「莫迦か。め亜人に肩入れした時点で貴様諸共、殺しの許可は得てい

「村人たちよ聞け!」

突如として五臓六腑に響き渡る号令にアレクサンドル以外が度胆を抜く

「こんな頭の軽い男に命を預けて本当にいいのか!?部下どもで壁を築き、後ろで踏ん反り返ってる臆病者にひれ伏して何の得がある!」
「何だとッ!」
「村人たちよ!思い出せ君たちの手は本来命を実らせ愛する家族を守る手だということを!君たちが握っているのは武器じゃない!」

各々手に持つ長年時を共にしてきた農具を見て はたと今自分が立っている状況に疑い

「諸君らを前線に引きずり出し、望んでいない争いに巻き込もうとしているのは誰だ!」

一斉に後ろに振り返ってハドリューへ視線を注ぐ

「何をしているッ!敵は向こうだ!前を見ろ!あれ成るは貴様らが討ち取った暁には報酬が約束されている化け物だ!」
「だから頭が軽いんだ。私はこうも言った、か弱き民を守らんとする者とな!」

確かに言った、身分高き兵士隊長にも全く怯まず──ただの通りすがりだと。何者なんだこの女性は

「村人たちよ!私は宣言する!道具を捨て、膝を付き降伏の意を示すなら命までは奪わん!大事な家族 愛する人が待つ故郷へと帰れる最後の手段だ!それでも尚命惜しまず立ち向かって来るなら容赦はしない!」

農具握る手がゆるみ直ぐ持ち直す、後方にも絶望が待ち構えている故

「大ぼら吹きおって何が民を守るだ!?こちらとてもう容赦はせんぞ女ァ!総員構えッ!!」

部下の全員が剣を構え、指揮官たる役目を果たす準備は整えた。

「化け物を斃したいと言うなら──他にもいるぞ?」

<第1位階怪物召喚>サモン・モンスター・1st

ハドリューは内心勝利を確信し、鼻で笑うのを止められず口角を歪ませる

召喚に成功した女の後ろ横一列に左右三体ずつ、計六体の魚人マーマンが大層な槍を構えこれ見よがしに騎士として披露してるではないか。

身長六十センチ、大人の腰の高さにも満たない身長差。成人した魚人マーマンでも平均身長はその程度、魚と蜥蜴と人を掛け合わせたような生物で人間のように手足が発達し、二足歩行で腰からはバランスを取るため爬虫類にも似た長い尾を伸ばしている。薄汚れた蒼色を持つ鱗に覆われ、木材よりかは固い角質。手は人と同じ五本指で水掻き爪を持ち、足は水中と陸地との移動に特化している幅の広い健脚。
北東アゼルリシア山脈の手前──麓に広がるトブの大森林に棲息している屈強な蜥蜴人リザードマンよりも完全な下位互換!
第一位階魔法などほぼ一般人全てが使え、召喚の知識さえ収めれば誰とでも習得可能な程度の低い術を以て挑もうと

<全体付与魔法>マス・エンチャントマジック──<下位硬化>レッサー・ハードニング<下級俊敏力増大>レッサー・デクスタリティ<闇視>ダーク・ヴィジョン

「──は?」


実験に付き合ってくれてありがとう




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