「おっこれは!ハニーデュークスの新作チョコレート!やっふ!美味しそう!」
「あーいいなあナマエのプレゼント」
「リーマスはなんだったの?」
「ん?ああ、羽ペンと羊皮紙だったよ」
「おお!実用的!」
「でもやっぱりチョコがよかったなあ」
「まあまあ」
クリスマスと言えばやはりプレゼントだろうということで、わいわいと楽しい寮のパーティの最後にプレゼント交換をすることになった。皆のプレゼントを音楽に乗せて手から手へと回し、音楽が止まったときに持っていたプレゼントが貰えるというやつ。
中には嬉しいプレゼントもあれば、そうでもないのまで様々。ちなみに私はシリウスの写真を入れて置いた。勿論盗撮だ。へっへへへ。
「うげっ!なんだこれ!」
「おっ!シリウスは何が当たったんだい?」
「誰だよ!俺の写真なんかプレゼントにした奴!」
「……………」
「わー!すごいやこれ!君の腹チラじゃないか!ははっ」
「あっ…!それ、ナマエが「誰だろうね!まったくけしからん!!」……あれ、ナマエじゃなかった?」
「は?いやいやそそそんな何をいいい言っているんだいピピピーター君は!あ、向こうに行っておいでよ!なんかやってるよ!なんか!」
「……あ…うん…」
「HAHAHAHA!」
やべえ!なんでよりによってシリウスの盗撮写真がシリウスに行くんだよお!それよりピーターはなぜ知っているんだ!?
オロオロ噛みまくる私を不思議に思ったのかシリウスは私に何か言おうとしたけれど、「あ、いつものことか」と呟いて写真に視線を戻した。そんなに噛んだ覚えないんだけど。
「これ貰っても嬉しくねえな。あ、レギュラスに送ろう。あいつ俺のこと大好きだから。ブラコンだから」
「はっは。まじでうけるよシリウスきも。はっは」
「リーマス…」
「レギュラスくん災難だね!」
「ところでジェームズは何をもらったの?」
「ふ、ふふふふふふ…!!」
「なんだその笑い方。大丈夫か?」
「まあ、ジェームズがおかしいのは今に始まったことじゃないけどね」
「じゃじゃーんっ!リリーからの手作りクッキー!!」
「なんでリリーからってわかったの?」
「だってリリーのプレゼントが僕のところで止まるように仕組んだからね…」
「ずるっ!それずるじゃん!」
「ふはははっ!なんとでも言いたまえ!負け組共め!」
「ど、どうしたんだ?ジェームズ?頭大丈夫か?」
興奮気味に言うジェームズの眼鏡は曇って怪しい光りを放っていた。なにか危ないものを感じて、二、三歩ジェームズから距離を取った。
「…ポッター?そ、それは…?」
「はうっ!リ、リリー!見てくれ!君のプレゼントを僕が貰ったんだよ!僕たちきっと運命の赤い糸で繋がっているんだよ!さっき一枚食べたんだ。すごく優しい味がしたよ…」
「えぇ!?食べたの?!ああ!ごめんなさいスネイプ!」
「「「「「え?」」」」」
リリーが突然その可憐な顔を自らの手で覆い隠してしまった。緑の目にはうっすらと水の膜が張られ、フリフリと頭を振るたび赤い綺麗な髪が左右に揺れた。私たちはその様子をぽけっと眺めていた。
なんだかリリーってクリスマスそのものみたい。赤と緑。綺麗だな、とか考えた。
「ど、どういうこと?なんでここでスネイプなの!?」
ジェームズが勢いよく尋ねると、リリーは顔を上げて、ジェームズの手にあるクッキーを指差して言った。
「…っそれ、スネイプから私へのクリスマスプレゼントだったの…っ!間違えて回してしまったのよ!ああ!スネイプになんて言えばいいの?ごめんなさいっ!」
たまらず泣き出してしまったリリーを慰めるようにリーマスが優しく背中を叩いた。ジェームズは気絶し倒れ、シリウスがジェームズをなんとか受け止めた。ピーターはオロオロとしながら「医務室に知らせてくるっ!」と駆けて行った。私はそんな風景を写真に撮っておいた。
Happy Christmas!
後日、レギュラスからシリウスへの手紙が届いた。
シリウスは「レギュラスから“ありがとう兄さん!嬉しいよ。大好き!”って手紙来た!」と自慢されたけれど明らか呪いの手紙だった。どういう解釈をしたのか、イケメンの思考回路はまったく分からない。